似た意味を持つ「感性」(読み方:かんせい)と「感覚」(読み方:かんかく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「感性」と「感覚」という言葉は、どちらも「物事から感じるもの」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
感性と感覚の違い
感性と感覚の意味の違い
感性と感覚の違いを分かりやすく言うと、感性とは主に心で感じるものを表し、感覚とは主に五感で感じるものを表すという違いです。
感性と感覚の使い方の違い
一つ目の感性を使った分かりやすい例としては、「感性豊かな人は自分の感情に素直です」「感性工学会のオンラインセミナーを受講する」「感性アナライザの仕組みを教えてください」「あなたの感性が発揮できる仕事があります」などがあります。
二つ目の感覚を使った分かりやすい例としては、「私は匂いの感覚が鋭いほうです」「感覚神経と運動神経が傷ついている」「しびれは感覚障害の一種です」「高齢者の感覚と知覚を研究しています」などがあります。
感性と感覚の使い分け方
感性と感覚という言葉は、物事から感じるものを表し、「感性が鋭い」「感覚が鋭い」など同じような表現をしますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
感性とは、物事を心に深く感じ取る働きを意味します。「感性が鋭い」とは、他の人には感じないようなところまで感じ取るなど感性が優れていることを表し、「感性豊か」とは、物事を深く感じる働きが十分ある様子です。
感覚とは、目・耳・鼻・舌などでとらえられた外部の刺激によって起こる意識を意味します。リンゴに対して、赤い、丸い、うまい、香りがよいといった様々な性質を感じますが、これを感覚と言います。「感覚が鋭い」とは、感覚が優れていて、外界からの刺激を鋭敏に感じとるさまを表します。
つまり、感性とは心を主体として感じとる能力であり、感覚とは五感や体から感じとる働きのことです。二つの言葉は類義語ですが、意味は異なるので区別して使い分けるようにしましょう。
感性と感覚の英語表記の違い
感性を英語にすると「sensitivity」「susceptibility」となり、例えば上記の「感性豊か」を英語にすると「full of sensitivity」となります。
一方、感覚を英語にすると「sense」「sensation」「feeling」となり、例えば上記の「感覚が鋭い」を英語にすると「have a keen sense」となります。
感性の意味
感性とは
感性とは、物事を心に深く感じ取る働き、感受性を意味しています。
その他にも、「外界からの刺激を受け止める感覚的能力」の意味も持っています。
感性の読み方
感性の読み方は「かんせい」です。同じ読み方をする熟語に「完成」や「慣性」がありますが、意味が異なるため書き間違いに注意しましょう。
表現方法は「人間の感性」「言葉の感性」「感性が豊か」
「人間の感性」「言葉の感性」「感性が豊か」「感性を磨く」「感性が乏しい」などが、感性を使った一般的な言い回しです。
感性の使い方
「英語の先生は感性が鋭いようだ」「感性を磨く方法はありますか」「大学では感性工学を専攻していました」「感性AIアナリティクスを活用し顧客ニーズを把握する」などの文中で使われている感性は、「物事を深く感じ取る働き」の意味で使われています。
一方、「感性を原理とする独創的な哲学があります」「西洋哲学では感性は理性より劣るとみなされていました」「感性哲学の歴史と現在を考察する」などの文中で使われている感性は、「刺激を受け止める感覚的能力」の意味で使われています。
感性とは、大別して、情動的感受性と認知的感受性の二つがあります。情動的感受性は、快楽や苦痛の感情を受けいれる能力あるいは状態のことであり、「感受性」とも言われます。認知的感受性は、感性知覚に基づいたもので色や形、音や香りなどについての感覚を豊かにするものです。
「感性工学」の意味
感性を用いた日本語には「感性工学」があります。感性工学とは、人間の感性という論理的に説明しにくい反応を、科学的手法によって価値を発見し活用することによって社会に資することを目的とした学問です。日本では1998年に日本感性工学会が発足し、研究が続けられています。
感性の対義語
感性の対義語・反対語としては、道理によって物事を判断する心の働きを意味する「理性」、物事を知り判断する能力を意味する「知性」などがあります。
感性の類語
感性の類語・類義語としては、 物事に感じそれに反応する心の働きを意味する「神経」、美しさを受容したり創造したりするときの心の働きを意味する「美意識」、なんとなく受ける感じを意味する「フィーリング」などがあります。
感覚の意味
感覚とは
感覚とは、外界からの光・音・におい・味・寒温・触などの刺激を感じる働きと、それによって起こる意識。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚や、温覚・冷覚・痛覚などを意味しています。
その他にも、「美醜やよしあし、相違などを感じとる心の働き。センス。感受性」「それを感じ取る心の働き、そういう心構えや雰囲気」の意味も持っています。
表現方法は「感覚を研ぎ澄ます」「感覚を掴む」「感覚を共有する」
「感覚を研ぎ澄ます」「感覚を掴む」「感覚を共有する」「感覚がない」などが、感覚を使った一般的な言い回しです。
感覚の使い方
「感覚をテーマにしたミュージアムです」「感覚過敏症の原因は何ですか」「作業療法士による感覚統合療法を行っています」「感覚的に英語を話す」「父は感覚性失語と診断された」「感覚鈍麻に悩まされています」などの文中で使われている感覚は、「刺激を感じる働き」の意味で使われています。
一方、「昭和の感覚を捨てるべきだ」「刺激に敏感で感覚が鋭い人だ」の文中で使われている感覚は「相違などを感じとる心の働き」の意味で、「祖母とは金銭感覚が違います」「いつまでもお客様感覚で困る」の文中で使われている感覚は「感じ取る心の働きや心構え」の意味で使われています。
感覚とは、感覚器官に加えられる外的および内的刺激によって引き起こされる意識現象を意味します。心理学では、感覚器官に加えられた刺激によって生じる意識を指し、刺激の加わる器官に応じて、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などに分類されます。
また、感覚という言葉は、物事の本質を感じ取る心の働きの意味もあり、「感覚が鋭い」「感覚が鈍い」などと表現します。
「平衡感覚」の意味
感覚を用いた日本語には「平衡感覚」があります。「平衡感覚」とは、身体の傾きや動きについて察知する感覚であり、その感覚器は頭部の内耳にあります。「バランス感覚」と言われることもあります。
感覚の対義語
感覚の対義語・反対語としては、確かな証拠をもって証明することを意味する「実証」などがあります。
感覚の類語
感覚の類語・類義語としては、 感覚器官を通して外界の事物や状態を知る働きを意味する「知覚」他からの刺激に感じる度合いを意味する「感度」、からだの状態によって生じる気持ちを意味する「気分」、物事の感じや味わいを微妙な点まで悟る働きを意味する「センス」などがあります。
感性の例文
この言葉がよく使われる場面としては、心に深く感じること、 哲学用語で知性や意志と区別された、感覚や情緒などに関わる心の能力を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、感性の慣用的な言い回しには「感性が豊か」「感性が乏しい」「感性的」などがあります。例文4の「感性的」とは、「理性的」の反対の意味で使用され、物事の考え方が感覚や知覚によって左右されやすい性質を表現しています。
感覚の例文
この言葉がよく使われる場面としては、刺激が感覚器官を介して中枢に伝えられたとき直接に生じる意識現象を表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「感覚的」とは、理性ではなく感覚によって行うさまを意味し、「直感的」と言い換えることが可能です。
感性と感覚という言葉は、どちらも「物事から感じるもの」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、心で感じるものを表現したい時は「感性」を、五感や体で感じるものを表現したい時は「感覚」を使うようにしましょう。