似た意味を持つ「叙述」(読み方:じょじゅつ)と「記述」(読み方:きじゅつ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「叙述」と「記述」という言葉は、どちらも「書き記すこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
叙述と記述の違い
叙述と記述の意味の違い
叙述と記述の意味の違い
叙述と記述の違いを分かりやすく言うと、叙述とは筋道を立てて書き記すことを表し、記述とは単に文章にして書き記すことを表すという違いです。
叙述と記述の使い方の違い
一つ目の叙述を使った分かりやすい例としては、「出来事をありのままに叙述する」「再会のシーンの叙述が実に美しい」「おすすめの叙述トリック短編集はありますか」「英語の先生に叙述用法について質問する」などがあります。
二つ目の記述を使った分かりやすい例としては、「共通テストで記述式問題が導入される」「記述問題の勉強法がわかりません」「脚注をページの下部に記述する」「レポートの記述内容を確認する」などがあります。
叙述と記述の使い分け方
叙述と記述という言葉は、どちらも物事の事情や考えなどを書き述べることを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
叙述とは、物事のありさまや意見などを、順序どおりに述べることを意味します。ある事柄についての事実を順を追って述べることであり、話の筋道が通っていないような文章は叙述とは言いません。
記述とは、何らかの事柄について文章で書き記すことを意味します。上記例文にある「記述式」とは、「選択式」「マーク式」に対する言葉であり、問いに対し文章を記述して答えるものを意味します。
つまり、叙述という言葉には物事について筋道を立てて書き表すというニュアンスがありますが、記述にはそのようなニュアンスがなく単に文章にすることを意味します。二つの言葉は似ていますが、意味が異なるので区別して使い分けるようにしましょう。
叙述と記述の英語表記の違い
叙述も記述も英語にすると「description」となり、例えば上記の「ありのままに叙述する」を英語にすると「describe something as it is」となります。
叙述の意味
叙述とは
叙述とは、物事について順を追って述べること、その述べたものを意味しています。
叙述の読み方
叙述の読み方は「じょじゅつ」です。誤って「しょじゅつ」「よじゅつ」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「歴史叙述」「叙述用法」「叙述的表現」
「歴史叙述」「叙述用法」「叙述的表現」などが、叙述を使った一般的な言い回しです。
叙述の使い方
叙述を使った分かりやすい例としては、「叙述トリックを使った推理小説が面白い」「叙述的表現の英語の文章を読み解く」「限定用法と叙述用法のについて解説します」「会議の議事録は叙述文で記載します」などがあります。
その他にも、「英語の叙述用法は文章中で補語の働きをする」「この著書は革新的な叙述である」「歴史叙述とは客観的事実を追求するものではありません」「だいたい1歳ごろから叙述の指さしが始まります」などがあります。
叙述の「叙」は訓読みで「のべる」と読み、順序立てて述べることや順序をつけることを表します。考えをのべることを表す「述」と結びつき、叙述とは、物事のありさまや自分の考えなどを秩序立てて述べることを意味します。
「叙述の指さし」の意味
上記の例文にある「叙述の指さし」とは、子供の発達用語であり、他者の注意をひいたり共感したいために行われる指さしのことです。「定位の指さし」「共感の指さし」などと呼ばれることもあります。
「叙述トリック」の意味
叙述を用いた日本語には「叙述トリック」があります。叙述トリックとは、推理小説の手法の一つであり、文章の記述上の仕掛けによって、読者をわざとミスリードに導くものです。例えば、加害者だと思っていた人物が被害者だったなど、読者の先入観を欺くものが多くあります。
叙述の類語
叙述の類語・類義語としては、心に感じたことなどを言葉や絵画などによって写しあらわすことを意味する「描写」、物事のありさまや考えなどを絵画や文章にえがきだすことを意味する「描出」、事実や事件をありのままに述べ記すことを意味する「叙事」などがあります。
記述の意味
記述とは
記述とは、文章にして書き記すこと、書き記したものを意味しています。
その他にも、「事物の特質を、事実そのままに正確かつ組織的に記しのべること」の意味も持っています。
記述の読み方
記述の読み方は「記述」です。同じ読み方をする熟語に「既述」や「奇術」がありますが、意味が異なるので書き間違いに注意しましょう。
表現方法は「記述問題」「記述テスト」「記述する」
「記述問題」「記述テスト」「記述する」などが、記述を使った一般的な言い回しです。
記述の使い方
「選択問題と比べると記述式問題は厄介です」「 マーク式なので記述する必要はありません」「英語の記述問題に強くなる」「記述模試の日程を確認する」などの文中で使われている記述は、「文章にして書き記すこと」の意味で使われています。
一方、「金融庁は記述情報の開示に関する原則を公表した」「記述統計とは何かわかりやすく教えてください」「エクセルで記述統計量の計算を行う」「記述統計量を記載してください」などの文中で使われている記述は、「事物の特質を組織的に記しのべること」の意味で使われています。
記述とは、文章の形で書き記すことを意味します。また、事物の特質を言語で客観的、組織的に記しのべることを意味する言葉です。記述の「記」は、事柄を書き留めることや、事柄をしるした文書を表す漢字です。
「記述統計」の意味
記述を用いた日本語には「記述統計」があります。記述統計とは、統計の手法の一つであり、取得したデータのもつ情報を表現することを目的とします。データの情報を表現するためには、グラフで示す方法と数値的に情報を集約する方法とがあります。
記述の対義語
記述の対義語・反対語としては、口頭で述べることを意味する「口述」などがあります。
記述の類語
記述の類語・類義語としては、書類や書物などに書いて記すことを意味する「記載」、将来のために物事を書きしるしておくことを意味する「記録」、所定の用紙などに書き入れることを意味する「記入」、書き留めたものや覚え書きを意味する「メモ」などがあります。
叙述の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事の事情や考えなどを順を追って述べることを表現したい時などが挙げられます。
例文3の「叙述用法」とは、英語の文法の一種で、形容詞が直接名詞を修飾するのではなく、動詞のあとに置かれて補語となっているものを言います。例文4にある「叙述的な文章」とは、事象や状況を詳細に説明し描写することを指します。
記述の例文
この言葉がよく使われる場面としては、文章にして書き記すこと、事物の特質を言語で客観的または組織的にしるしのべることを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文3にある「記述問題」とは、問題の答えを記号や単語ではなく、文章で答えさせる問題形式を意味します。例文5の記述と記載の違いは、記述は文章にして書き連ねることを表すことに対し、記載は文章に限らず文字を書き記すことも表す点にあります。
叙述と記述という言葉は、どちらも「書き記すこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、順序立てて書き記すことを表現したい時は「叙述」を、単に文章にして書き記すことを表現したい時は「記述」を使うようにしましょう。