似た意味を持つ「一身上の都合」(読み方:いっしんじょうのつごう)と「諸般の事情」(読み方:しょはんのじじょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「一身上の都合」と「諸般の事情」という言葉は、どちらも事情を簡潔に伝えることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「一身上の都合」と「諸般の事情」の違い
一身上の都合と諸般の事情の意味の違い
「一身上の都合」と「諸般の事情」の違いを分かりやすく言うと、「一身上の都合」は個人的な都合に対してのみ使える、「諸般の事情」は様々な事情に対して使えるという違いです。
一身上の都合と諸般の事情の使い方の違い
一つ目の「一身上の都合」を使った分かりやすい例としては、「この度は一身上の都合により退職させていただきます」「今回の内定を一身上の都合により辞退させていただきます」「一身上の都合により勝手ながら退職いたします」などがあります。
二つ目の「諸般の事情」を使った分かりやすい例としては、「諸般の事情により新製品の発売を延期することとなりました」「諸般の事情により出張先が台湾へ変更になりました」「明日のコンサートは諸般の事情により中止となりました」などがあります。
一身上の都合と諸般の事情の使い分け方
「一身上の都合」と「諸般の事情」はどちらも事情を簡潔に伝えることを意味する言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。
「一身上の都合」は転職、病気、怪我、介護、結婚、出産などの個人的な都合に対して使う言葉になります。そのため、会社の都合や災害などは個人的な都合ではないので使うことはできません。
一方、「諸般の事情」はいろいろな都合やもろもろの理由があることを意味しており、病気や怪我にももちろん使うことができますが、災害などの個人的な事情ではないもの対しても使うことができるというのが違いです。
一身上の都合と諸般の事情の英語表記の違い
「一身上の都合」も「諸般の事情」も英語にすると「various reasons」「for various reasons」となり、例えば上記の「明日のコンサートは諸般の事情により中止となりました」を英語にすると「tomorrow’s concert was canceled due to various reasons」となります。
「一身上の都合」の意味
一身上の都合とは
「一身上の都合」とは、自分の身の上に関する個人的な都合のことを意味しています。
表現方法は「一身上の都合により」「一身上の都合のため」
「一身上の都合により」「一身上の都合のため」などが、「一身上の都合」を使った一般的な言い回しになります。
一身上の都合の使い方
「一身上の都合」を使った分かりやすい例としては、「履歴書に退職理由を一身上の都合と記載する」「一身上の都合により今月いっぱいで引っ越しいたします」「店長に一身上の都合によりバイトを辞めることを伝えました」などがあります。
「一身上の都合」は自分の身の上に関する個人的な都合のことを意味しており、転職、病気、怪我、介護、結婚、出産などが当てはまります。
「一身上の都合」はビジネスシーンにおいてよく使われている言葉で、退職届、履歴書、内定辞退の理由などで使うのが一般的です。
一身上の都合の特徴
「一身上の都合」は倒産などの会社都合によって会社を辞めた場合や、災害などの個人的な都合ではない場合は使わないのが特徴です。
また、「一身上の都合」の理由を聞かれることもあると思いますが、特別答える義務はないと覚えておきましょう。もし、どうしても言わなければいけないのであれば、マイナスな理由でなく、当たり障りのないプラスな理由を伝えるのが適しています。
一身上の都合の類語
「一身上の都合」の類語・類義語としては、自分自身の事情によることを意味する「自己都合」、そうするよりほかに方法がない状態のことを意味する「やむをえない事情」などがあります。
「諸般の事情」の意味
諸般の事情とは
「諸般の事情」とは、いろいろな都合やもろもろの理由があることを意味しています。
諸般の事情の読み方
「諸般の事情」の読み方は「しょはんのじじょう」です。誤って「しょぱんのじじょう」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「諸般の事情により」「諸般の事情を鑑み」
「諸般の事情により」「諸般の事情を鑑み」などが、「諸般の事情」を使った一般的な言い回しになります。
諸般の事情の使い方
「諸般の事情」を使った分かりやすい例としては、「諸般の事情により予約の受付開始を延期させていただきます」「この度は諸般の事情により芸能界を引退することとなりました」「諸般の事情により回答に少しお時間をいただきます」などがあります。
「諸般の事情」は色々な事柄を意味する「諸般」に、物事がある状態に至るまでの理由や状態のことを意味する「事情」が合わさり、いろいろな都合やもろもろの理由があることの意味で使われている言葉です。
「諸般の事情」は相手に事情や理由を明かしたくない場合や、事情が複雑で説明が困難な時など、婉曲的に表現したい時に使う言葉になります。婉曲的とは、言いまわしが穏やかでかど立たないことを意味しています。
諸般の事情は目上の人に対しては適していない
「諸般の事情」はビジネスシーンにおいても使うことができる言葉ですが、目上の人に対して使うのはあまり適していないと覚えておきましょう。なぜなら、とても曖昧な表現で相手に対して事情を説明するのを省略しているため、失礼に当たる可能性があるからです。
もし、目上の人に対して使いたいのであれば、物事を推察することを意味する敬語の「ご賢察」を使用し、「諸般の事情をご賢察ください」などを使うようにしましょう。
諸般の事情の類語
「諸般の事情」の類語・類義語としては、いろいろなものが複雑に入り組んでいる状態のことを意味する「込み入った事情」、特別の理由のことを意味する「仔細」などがあります。
「一身上の都合」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分の身の上に関する個人的な都合のことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「一身上の都合」はビジネスシーンでも使うことができる言葉です。
「諸般の事情」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、いろいろな都合やもろもろの理由があることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「諸般の事情」は何かを辞退する場合や、中止する場合に使うことが多い言葉です。
「一身上の都合」と「諸般の事情」はどちらも事情を簡潔に伝えることを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、個人的な都合に対してのみ使えるのが「一身上の都合」、様々な事情に対して使えるのが「諸般の事情」と覚えておきましょう。