似た意味を持つ「沽券」(読み方:こけん)と「世間体」(読み方:せけんてい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「沽券」と「世間体」という言葉は、どちらも「人の値打ち」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
沽券と世間体の違い
沽券と世間体の意味の違い
沽券と世間体の違いを分かりやすく言うと、沽券とは人に備わった価値や品位を表し、世間体とは世間からの評価を表すという違いです。
沽券と世間体の使い方の違い
一つ目の沽券を使った分かりやすい例としては、「これは沽券にかかわる問題だ」「すぐに泣いては男の沽券に関わる」「沽券を守るために全力を尽くす」「チームの沽券にかけて勝ち進もう」などがあります。
二つ目の世間体を使った分かりやすい例としては、「父は世間体を気にしてばかりいる」「世間体を気にする人が増えている」「世間体を考えると離婚に踏み切れません」「世間体が悪いのではないかと心配です」などがあります。
沽券と世間体の使い分け方
沽券と世間体という言葉は、どちらも人の値打ちや世間の人々に対する体面などを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
沽券とは、もともと土地や家屋などの売り渡しの証文を意味し、江戸時代には「売値」の意味で使用された言葉です。この意味が転じて、人の値打ちや価値あるいは品位を表すようになり、「沽券に関わる」などの言い回しで使われるようになっています。
世間体とは、世間の人々に対する体面や見えを意味し、世の中からどのように見られているかを表す言葉です。自分そのものの価値ではなく周囲の評価を基準とした表現であり、「世間体を気にする」「世間体が悪い」「世間体がいい」などの言い回しで使用されています。
つまり、沽券とは人に備わった価値や品位を表しますが、世間体とは世間の人々がどう評価しているかを表します。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使い分けるようにしましょう。
沽券と世間体の英語表記の違い
沽券を英語にすると「dignity」「credit」「self-worth」となり、例えば上記の「沽券にかかわる」を英語にすると「be beneath one’s dignity」となります。
一方、世間体を英語にすると「appearance」「decency」「respectability」となり、例えば上記の「世間体を気にする」を英語にすると「worry about keeping up appearances」となります。
沽券の意味
沽券とは
沽券とは、人の値うち、体面、品位を意味しています。
その他にも、「土地・山林・家屋などの売り渡しの証文、沽却状、沽券状」「売値」などがあります。
沽券の漢字表記
沽券は「估券」とも書きますが、一般的には「沽券」と表記されています。
沽券の読み方
沽券の読み方は「こけん」です。誤って「ふるけん」などと読まないようにしましょう。
沽券の使い方
「スキャンダルは大統領の沽券に関わる」「沽券に関わる一大事である」「沽券を守るために嘘をついた」「沽券にかけてプロジェクトを成功させます」などの文中で使われている沽券は、「人の値うち、体面、品位」の意味で使われています。
一方、「売主から買主に沽券状が渡された」「江戸時代、町役人が沽券図を作成していた」などの文中で使われている沽券は「土地や家屋などの売り渡しの証文」の意味で、「この家屋の沽券はいくらですか」などの文中で使われている沽券は「売値」の意味で使われています。
沽券とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ちますが、現代では「人の値うち、体面、品位」の意味で使用されることがほとんどです。沽券を用いた慣用句には、「沽券に関わる」「沽券を守る」「沽券が下がる」「沽券をかける」などがあります。
「沽券に関わる」の意味
「沽券に関わる」とは、品位や体面にさしつかえることを意味する慣用句です。品位や体面が保てない、あるいはプライドが傷つけられる場合に使用されます。
沽券の語源
沽券の語源は、江戸時代に使われていた言葉で、土地や家屋の売り渡し証文に由来します。この売買契約書は「沽券」と呼ばれ、土地の価値を証明するものでした。この沽券の意味が転じて、人の価値や品格を表すようになり、さまざまな慣用句が生まれました。
沽券の類語
沽券の類語・類義語としては、社会的に認められている人格的価値を意味する「名誉」、体面や面目を意味する「面子」(読み方:めんつ)、その人に感じられる気高さや上品さを意味する「品格」、物を売るときの値段を意味する「売価」などがあります。
世間体の意味
世間体とは
世間体とは、世間に対する体裁や見えを意味しています。
世間体の読み方
世間体の読み方は「せけんてい」です。誤って「せけんたい」「せかんてい」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「世間体が悪い」「世間体がいい」
「世間体が悪い」「世間体がいい」などが、世間体を使った一般的な言い回しです。
世間体の使い方
世間体を使った分かりやすい例としては、「世間体を気にして英語教師になりました」「世間体がいい職業は何ですか」「高卒だからと世間体が悪いとは思いません」「世間体を気にする人は幸せなのだろうか」などがあります。
その他にも、「世間体のために結婚するつもりだ」「外では立派な服装をして世間体をつくろう」「世間体を気にする親の特徴を教えましょう」「世間体を気にしない人になりたい」「世間体なんてくだらないと思いませんか」などがあります。
世間体の「世間」は、人が集まり生活している場や日常生活を送っている社会、「体」は見かけのようすを表します。世間体とは、世の中や周囲の人々に対する見栄や体面を意味する言葉です。
「世間体を気にする」の意味
上記の例文にある「世間体を気にする」とは、世間の人々からどのように見られているか、どのように評価されているかを気にすることを意味します。似たような表現には「体裁を気にする」「評判を気にする」「外聞にこだわる」などがあります。
世間体の対義語
世間体の対義語・反対語としては、実際に事物に備わっている性質を意味する「実質」、物事の内容や実質を意味する「中身」などがあります。
世間体の類語
世間体の類語・類義語としては、人が世間に対してもっている誇りや面目を意味する「体面」、世間での評判や世間に対する体裁を意味する「外聞」、世間での評判や名声を意味する「名聞」、名誉ある評判や誉を意味する「名声」などがあります。
沽券の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人の品位や面目を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、沽券の慣用的な言い回しには「沽券を守る」「沽券に関わる」「沽券が下がる」「沽券にかける」などがあります。「沽券が下がる」とは、品位が下がることを意味します。「沽券にかける」は、プライドにかけて何かを成功させたい場合などに用いられています。
世間体の例文
この言葉がよく使われる場面としては、世間の人々に対する体面や見栄を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、世間体の慣用的な言い回しには「世間体を気にする」「世間体が悪い」「世間体がいい」などがあります。「世間体が悪い」とは世間の人々からの評価が悪いことを意味します。
沽券と世間体という言葉は、どちらも「人の値打ち」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、人が持っている価値や品位を表現したい時は「沽券」を、世間の人々がどうみているかを表現したい時は「世間体」を使うようにしましょう。