似た意味を持つ「来社」(読み方:らいしゃ)と「来訪」(読み方:らいほう)と「訪問」(読み方:ほうもん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「来社」と「来訪」と「訪問」という言葉は、訪ねるという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
来社と来訪と訪問の違い
来社と来訪と訪問の意味の違い
来社と来訪と訪問の違いを分かりやすく言うと、来社は会社を訪ねて来られる時に使い、来訪は会社以外でも訪ねて来られる時に使い、訪問は訪ねる時に使うという違いです。
来社と来訪と訪問の使い方の違い
来社という言葉は、「来社時間の確認をする」「ご来社頂くとしたらいつ頃でしょうか」などの使い方で、会社を訪ねてくることを意味します。
来訪という言葉は、「ご来訪頂く際にご覧ください」「宇宙からの来訪者と出会えるのをロマンとする人もいる」などの使い方で、人が訪ねてくることを意味します。
訪問という言葉は、「後日訪問させていただきます」「訪問着を選んで出掛けたい」などの使い方で、人が訪ねることを意味します。
来社と来訪と訪問の使い分け方
来社と来訪は、どちらも自分ではなく相手が訪ねることを意味しますが、来社は会社に訪れることのみを指します。
また、訪問は相手ではなく自分が行動する側であるため、動作主が相手ではなくなります。これらが、来社、来訪、訪問の明確な違いです。
来社の意味
来社とは
来社とは、よその人が会社を訪ねてくることを意味しています。
表現方法は「ご来社くださり」「来社お待ちしております」「来社される」
来社を使った表現として、「ご来社くださり」「来社お待ちしております」「ご来社頂きありがとうございました」「来社される」「来社がありました」などがあります。
来社の使い方
基本的にはビジネス間などで敬語表現と共に使われることがほとんどです。
来社の社は会社を表す言葉であるため、日常生活の中の会話では使われるとしたら、自身が会社に赴く場合しかありません。
相手の訪れる先が話し手の会社ではなく、別の場所であれば来訪や訪問を使うことで場所が限定されなくなります。
来社のように相手の訪れる先が限定される言葉はいくつかあり、類語にて紹介していますが、その場合でも来社と同じような使い方がされます。
来社の類語
来社の類語・類義語としては、人が催し物などを行う場所に来ることを意味する「来場」、美術館や映画館などに来ることを意味する「来館」、学校を訪ねてくることを意味する「来校」、動物園や遊園地などに来ることを意味する「来園」があります。
来訪の意味
来訪とは
来訪とは、人が訪ねてくることを意味しています。
表現方法は「来訪される」「ご来訪いただく」「訪問者が訪れる」
「来訪される」「ご来訪いただく」「訪問者が訪れる」などが、来訪を使った一般的な言い回しです。
来訪の使い方
来訪を使った分かりやすい例としては、「来訪されるお客様のため、当館では入り口でパンフレットをお配りしております」「ご来訪頂く皆様にはQRコードによる入場をお願い致しております」「この場所は多くの訪問者が訪れる観光地です」などがあります。
来訪を使った言葉として、「来訪者」「来訪神」があります。
「来訪者」の意味
一つ目の「来訪者」とは、訪ねてきた人を意味しますが、場合によっては遠方から訪ねてきた人も意味することがあります。
また、来訪者という言葉は文学作品のタイトルにも使われることが多く、阿刀田高の短編ミステリー小説や、『濹東綺譚』(読み方:ぼくとうきたん)で有名な永井荷風の小説の一つにも使われています。
「来訪神」の意味
二つ目の「来訪神」(読み方:らいほうしん)とは、年に一回の決まった時期に人間の世界に来訪するとされる神を指す言葉です。2018年に来訪神にまつわる行事の10件がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
多くの場合は、仮面に仮装した異形の姿で人間の前に現れ、豊穣や幸福をもたらすとされていますが、行事ではその地域の住民らが神に扮します。秋田県男鹿のナマハゲは「泣く子は居ねが」という言葉を発することから教育的手段としても理解されています。
来訪の対義語
来訪の対義語・反対語としては、こちらから人を訪ねていくことを意味する「往訪」があります。
来訪の類語
来訪の類語・類義語としては、他人を敬ってその人がある場所へ来てくれることを意味する「来臨」、人と会うことを意味する「面会」、よその人が自分の家に訪ねてくることを意味する「来宅」があります。
訪問の意味
訪問とは
訪問とは、人が訪ねることを意味しています。
表現方法は「訪問する」「訪問したい」「訪問を断る」
「訪問する」「訪問したい」「訪問を断る」などが、訪問を使った一般的な言い回しです。
訪問の使い方
訪問を使った分かりやすい例としては、「企業に訪問するのではなくテレワークによるインターンが流行っている」「絶対に訪問したい定番観光スポットを掲載しております」「営業の方が来ることになっていたが訪問を断ることにした」などがあります。
上記以外にも訪問を使った言葉として、「訪問着」「訪問販売」があります。
「訪問着」の意味
一つ目の「訪問着」とは、既婚であっても独身であっても、20代からの女性が着ることができる着物で、礼装である留袖の次に格式が高いです。とはいえ、親戚や友人の結婚式であったり、入学式や卒業式などに着ていくことができます。
また、訪問着と色留袖はよく似ていますが、前者は上半身にも柄があるのに対して、後者は上半身は色付きの無地で、裾に模様があります。さらに使われている色も、訪問着は淡い色が使われていますが、色留袖は華美な色使いがなされています。
「訪問販売」の意味
二つ目の「訪問販売」とは、消費者の自宅に訪問して商品や権利を売る方法ですが、特定商取引法では、路上で勧誘を行うキャッチセールスや、メールやSNS等で「当選おめでとうございます」などと消費者に送って契約に繋げるやり方も含まれています。
訪問販売は様々な規制が行われており、勧誘をする際には、売り込む人の名前、契約してもらう旨、販売する商品の種類を必ず伝えなければならず、さらに契約する意思がない相手に勧誘を続けることや再度勧誘することはできないとされています。
訪問の対義語
訪問の対義語・反対語としては、別れの挨拶をして立ち去ることを意味する「辞去」があります。
訪問の類語
訪問の類語・類義語としては、色々な土地や人を次々に訪ねることを意味する「歴訪」、現地や現場に行ってその実際の様子を見極めることを意味する「視察」、人を訪問することを意味する「叩扉」(読み方:こうひ)があります。
来社の例文
この言葉がよく使われる場面としては、よその人が会社を訪ねてくることを意味する時などが挙げられます。
来社の社は会社を意味するため、会社以外の訪問先の場合には使うことができません。
また、例文2の「来社時間」や例文3の「ご来社の皆様」を「訪問時間」や「ご訪問の皆様」に置き換えて使うことはできませんが、来訪時間やご来訪の皆様であれば可能です。
来訪の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人が訪ねてくることを意味する時などが挙げられます。
そのため、例文1の「来訪する」も同じように相手に来てもらうことを意味するので、「私たちはあの会社を来訪する」のように主語を自分側にすることはできません。この場合は「私たちはあの会社を訪問する」など来訪ではなく、違う言葉を使います。
例文2でも同じことが言えます。「本日はご来訪頂き、」というフレーズは来てくれたことに関する感謝の意を表す言葉です。ただし、こちらの場合は「いただく」という敬語語が使われているため、「ご訪問いただき」という言い方をすることもできます。
訪問の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人を訪ねることを意味する時などが挙げられます。
例文2の「訪問保育」とは、保護者の自宅でマンツーマンの保育をしてもらう方法で、保育園に入園できず待機児童となってしまった場合などに利用することが可能です。
例文3の「訪問盗」とは、点検に来た業者を装って複数人で自宅に上がり込み、犯人のうちの一人が被害者に応対してもらっている間に他の犯人が盗みをはたらくといった手口を指す言葉です。
来社と来訪と訪問どれを使うか迷った場合は、よその人が会社を訪れることを表す場合は「来社」を、人が訪れることを表す場合は「来訪」を、人が訪ねることを表す場合は「訪問」を使うと覚えておけば間違いありません。