似た意味を持つ「遅延」(読み方:ちえん)と「遅滞」(読み方:ちたい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「遅延」と「遅滞」という言葉は、どちらも「おくれること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
遅延と遅滞の違い
遅延と遅滞の意味の違い
遅延と遅滞の違いを分かりやすく言うと、遅延とは時間や期日におくれることの意味合いが強く、遅滞とは物事がはかどらないことの意味合いが強いという違いです。
遅延と遅滞の使い方の違い
一つ目の遅延を使った分かりやすい例としては、「電車の遅延が発生したために遅刻しました」「近鉄の遅延証明書をオンラインで入手する」「3分遅れでも遅延証明書はもらえますか」「遅延損害金の利率には上限があります」などがあります。
二つ目の遅滞を使った分かりやすい例としては、「業務が遅滞なく遂行される」「本人の求めに応じて遅滞なく回答する」「遅滞なく報告を行う必要があります」「損害賠償である遅延利息の支払いが遅滞している」などがあります。
遅延と遅滞の使い分け方
遅延と遅滞という言葉は、どちらも予定していた期日などにおくれることを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
遅延とは、定められた期日や基準とした時間におくれることを意味し、予定がおくれることにフォーカスした言葉です。上記例文にある「遅延証明書」とは、鉄道事業者やバス事業者が自社の運行する列車やバスの遅延を公式に証明する目的で発行する証明書のことです。
遅滞とは、物事がおくれてはかどらなかったり、期日におくれることを意味します。物事の進行がはかどらないことのニュアンスが強い言葉であり、「遅滞なく」「遅滞する」「遅滞が生じる」などの言い回しで使用されています。
つまり、遅延とは時間や期日におくれることに重点をおく言葉ですが、遅滞は物事がはかどらないことの意味合いが強い言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使い分けるようにしましょう。
遅延と遅滞の英語表記の違い
遅延も遅滞も英語にすると「delay」「retardation」となり、例えば上記の「遅延が発生した」を英語にすると「A delay occurred」となります。
遅延の意味
遅延とは
遅延とは、予定された期日や時間におくれることを意味しています。
遅延の読み方
遅延の読み方は「ちえん」です。同じ読み方をする熟語に「地縁」や「知縁」がありますが、意味が異なるため書き間違いに注意しましょう。
遅延の使い方
遅延を使った分かりやすい例としては、「JRの遅延証明書のもらい方を教えてください」「名鉄は遅延証明書のネット発行サービスを開始しました」「バスの遅延証明書はどこでもらえますか」などがあります。
その他にも、「大阪メトロの遅延情報をリアルタイムでチェックする」「遅延損害金の計算方法について説明します」「遅延損害金の勘定科目は何ですか」「テンプレートを使って遅延理由書を作成しました」などがあります。
遅延の「遅」は訓読みで「おくれる」と読み、 進み具合がぐずぐずしていることや予定の時間を過ぎてしまうことを表します。「延」は「のびる」と読み、時間が予定より長びくことを表す漢字です。遅延とは、定刻よりおそくなること、定められた期限が延びることを意味します。
「遅延賠償」の意味
遅延を用いた日本語には「遅延賠償」(読み方:ちえんばいしょう)があります。遅延賠償とは、債務の履行が遅れることによって生じる損害の賠償を意味します。本来の給付に加えて請求するものです。
遅延の対義語
遅延の対義語・反対語としては、予定の時期を繰り上げて実施することを意味する「前倒し」、とどこおりなく捗ることを意味する「順調」などがあります。
遅延の類語
遅延の類語・類義語としては、決められた時刻に遅れることを意味する「遅刻」、手当てや処置すべき時機をのがすことを意味する「手後れ」、予定の時刻や期日より遅れて着くことを意味する「延着」、順繰りに期日を延ばしていくことを意味する「順延」などがあります。
遅滞の意味
遅滞とは
遅滞とは、物事の進行がとどこおること、予定どおりに進まないで期日などにおくれることを意味しています。
その他にも、「債務者が債務の履行期になっても履行せず(履行遅滞)、また、債権者が弁済を受領しなければならないのに受領しないこと(受領遅滞)」の意味も持っています。
遅滞の読み方
遅滞の読み方は「ちたい」です。誤って「おくたい」「おそたい」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「遅滞する」「遅滞が生じる」
「遅滞する」「遅滞が生じる」などが、遅滞を使った一般的な言い回しです。
遅滞の使い方
「遅滞なく届出を提出してください」「顧客からの依頼を遅滞なく処理する」「遅滞戦術を取りつつ反転攻勢を狙う」「日本軍は米軍をとどめようと遅滞戦闘を行いました」などの文中で使われている遅滞は、「物事の進行がとどこおること」の意味で使われています。
一方、「債務者が履行を遅滞した」「不法行為によって損害賠償債務が遅滞に陥る」「債務について遅滞の責任を負っている」などの文中で使われている遅滞は、「履行遅滞、受領遅滞」の意味で使われています。
遅滞とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で用いられているので、文脈により意味を捉える必要があります。遅滞の「遅」は進み具合がおそいことや予定の時間を過ぎてしまうこと、「滞」は物事が一所にとどまって進まないことを表す漢字です。
「遅滞なく」の言い回しは多い
遅滞は、「遅滞なく」(読み方:ちたいなく)の言い回しで使用されることが多い言葉です。「遅滞なく」とは遅れないことを意味し、「直ちに」「速やかに」と並んで即時性を表す法律用語にもなっています。何日以内という明確な日数を示すものではありませんが、急いで履行することを表します。
遅滞の対義語
遅滞の対義語・反対語としては、期日や時間などを予定より早めることを意味する「繰り上げ」、物事が滞らずすらすら運ぶことを意味する「スムーズ」などがあります。
遅滞の類語
遅滞の類語・類義語としては、物事が順調に進まないことを意味する「停滞」、のびのびになることを意味する「遷延」、期日や期限を延ばすことを意味する「延期」、納入や支払いがとどこおることを意味する「延滞」などがあります。
遅延の例文
この言葉がよく使われる場面としては、期日や時刻におくれて物事が予定よりのびること、長引くことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、遅延という言葉は、電車などの公共交通機関に遅れが発生した際に使用されることが多くあります。
遅滞の例文
この言葉がよく使われる場面としては、期日に遅れること、物事の運びが悪くてはかどらないこと、債務者が債務の履行期になっても履行しないことを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「履行遅滞」とは、債務者が正当な理由なしに契約で取り決めた期日までに債務を行なわないことを意味します。
遅延と遅滞という言葉は、どちらも「予定していた期日におくれること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、期日や時間におくれることを表現したい時は「遅延」を、物事がはかどらないことを表現したい時は「遅滞」を使うようにしましょう。