同じ「わく」という読み方、似た意味を持つ「湧く」と「沸く」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「湧く」と「沸く」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。
湧くと沸くの違い
湧くと沸くの意味の違い
湧くと沸くの違いを分かりやすく言うと、自然に染み出てきたり感情の底からにじみ出てくる状態か、熱せられて高ぶっている状態かの違いです。
湧くは水などが地中から染み出てくる様子
「湧く」というのは、水などが地中から染み出てくる様子を表している言葉です。「湧き水」(読み方:わきみず)などの言葉を思い起こすとわかりやすいでしょう。温泉や石油が染み出す様子などを「温泉が湧く」「石油が湧く」というように表現します。
また、水と同じように感情が心の底から染み出てくる様子を「湧く」と表現します。「悔し涙が湧く」「希望が湧く」「勇気が湧く」などのように使い、感情が底からにじみ出てくるような表現になります。
その他にも、ある考えが浮かぶ様子を表す際にもこの漢字を使います。例えば「疑問が湧く」「興味が湧く」などと使われることがあります。
このように、自然に染み出てきたり、静かににじみ出てくるような場合に「湧く」という字を使うのだと覚えておくようにしましょう。「虫が湧く」や「雲が湧く」なども自然に発生するものなので「湧く」という字を使います。
湧くという字は「涌く」とも書かれることがありますが、これは表外字という字で、一般的に使われる漢字ではありません。文学的な理由などで、どうしても「涌く」という字を使いたい場合以外は「湧く」という字で表記するようにしましょう。
沸くは水などが熱せられていく様子
一方、「沸く」という字は、水などが熱せられていく様子を表す言葉です。沸騰する(読み方:ふっとうする)の「沸」という字であると覚えておくとわかりやすいでしょう。「お湯が沸く」「お風呂が沸く」などの表現がこれにあたります。
その他にも、水と同じように感情が熱せられているような場合にも「沸く」という漢字を使います。感情が高ぶって、興奮する様子などがこれに当てはまります。
「接戦の様子に会場が沸く」「勝利に沸く」などと表現する場合にはこの字を使います。気持ちが高ぶったり、興奮したりしている様子、騒ぎ立てる様子などを示す際には「沸く」という字を使うのだと覚えておくようにしましょう。
「拍手が湧く」と「観衆が沸く」は間違いやすい
また、これらを踏まえた上で、間違いやすいのが「拍手が湧く」と「観衆が沸く」という表現の違いです。
拍手が起こる場合には「湧く」という字で表記しますが、観衆が盛り上がっている様子を表現する際には観衆が「沸く」という風に表現します。
これは、観衆の間から自然と行動が起こっている場合には「湧」という字を使い、観衆が盛り上がっている、熱を発している場合には「沸」という字を使うという違いです。
行動(この場合は拍手)の部分に注目をしているのか、感情の部分に注目しているのかで「湧く」と「沸く」を使い分けるようにしましょう。
アイドルオタク用語の湧くと沸く
他にも、「ファンが自担にわいた」や「にわかファンがわいてきた」等、ツイッターなどのSNSで使われる「わいた」にも漢字の使い分けが必要となります。
オタクの感情が高ぶり興奮しテンションが上がっている場合には沸く、にわかファンがどんどん出てくる場合も沸くとなります。
湧くの意味
湧くとは
湧くとは、水などが地中から染み出てくる様子や、それと同じように感情が染み出てくる様子を意味しています。「湧き水」という言葉の「湧」という字であると覚えておくとわかりやすいでしょう。
この漢字を使う際には、激しい動作や感情ではなく、静かにしみじみと込み上げてくる状態を表します。または、自然発生的であったり、自然の流れに反していないような状態を表す際などにも使われます。
また、湧くという字は「涌く」と書かれることもあります。しかし、この漢字は一般的に使われる字ではありません。なんらかの理由により、どうしても「涌く」という字を使いたい場合以外は「湧く」という字で表記するようにしましょう。
表現方法は「気持ちが湧く」「力が湧く」「心が湧く」
感情を表現する際には「気持ちが湧く」「力が湧く」「心が湧く」「希望が湧く」「勇気が湧く」「愛着が湧く」などのように使います。
その他にも、自然発生的な文章の例としては「入道雲が湧く」「虫が湧く」「イメージが湧く」などのように使います。
湧くの使い方
湧くを使った分かりやすい例としては、「人生がうまくいっている人に嫉妬する気持ちが湧く」「大切な人ができた時に人は生きる力が湧く」「アイドルヲタクの友人の担当を見かけた時の心が湧く様子が忘れられない」「何気ない一言で希望が湧くこともある」などがあります。
湧くの類語
湧くの類語・類義語としては、興奮して騒然とした様子を意味する「沸き立つ」、感情が湧き上がって胸がいっぱいになることを意味する「込み上げる」、話題に上がることを意味する「持ち上がる」などがあります。
「湧く」という言葉の「湧」という字を使った単語としては、地中から液体がわき出ることを意味している「湧出」、わき出ている泉などを意味する「湧泉」などがあります。
沸くの意味
沸くとは
沸くとは、水などが熱せられている様子や、それと同じように感情が熱せられて興奮している様子を意味しています。「沸騰する」の「沸」という字であると覚えておくとわかりやすいでしょう。
この漢字を使う際には、沸騰するという表現にあるように、興奮したり熱を発したりするような、熱烈な動作や感情を表しています。なにかのきっかけがあって、興奮をする状態になった時などに使われると覚えておくようにしましょう。
表現方法は「会場が沸く」「歓喜に沸く」
例えば「スポーツ観戦で会場が沸く」や「勝利の歓喜に沸く」などと使われることが多くあります。また「お湯を沸かす」や「風呂を沸かす」のように、文字通り、水などを熱する際にもこの漢字を使います。
その他にも、アイドルや俳優などを間近に見た時などに「興奮した」というような意味合いで「沸いた」と表現することもあります。
沸くの使い方
沸くを使った分かりやすい例としては、「1年ぶりにゴールを決めた選手に会場が沸いた」「好きなバンドの登場に会場が沸いた」「サッカーワールドカップの出場決定に日本中が歓喜に沸いた」などがあります。
沸くの類語
「沸く」という言葉の「沸」という字を使った単語としては、液体が沸騰しはじめるときの温度を意味する「沸点」、水などを火にかけて煮立たせることを意味する「煮沸」などがあります。
湧くの例文
この言葉がよく使われる場面としては、水などが自然に染み出している様子や、感情が自然とにじみ出るような状態を表す時などが挙げられます。
「湧く」という字は、「沸く」という字と違い、激しく変化をする意味を含みません。静かで淡々としているイメージで覚えておくとわかりやすいでしょう。また、自然発生的である場合に「湧く」という字を使うのだと考えることも出来ます。
例文2などの感情表現に使う際が、一番使い分けが難しいものです。涙や出てきたり、勇気や希望が出てきたりする場合、それは感情の底からにじみ出ているものであると考えます。
逆に「湧く」ではなく「沸く」という漢字を使って感情を表現する場合には、その感情が興奮であったり、熱されているものである必要があります。
興奮して騒ぎ立てるような様子や、歓喜に高ぶっている様子がない場合には「湧く」という字を使うようにしましょう。
沸くの例文
この言葉がよく使われる場面としては、水などが熱せられていく様子や、感情などが高ぶっていく様子を表現したい時などが挙げられます。
沸くという漢字を使う場合、感情が高ぶっている様子や興奮している様子を表します。湧くという字を使う場合と違って、大きな動作や大きな感情の動きがあるものであると覚えておくようにしましょう。
例文5のように、アイドルや俳優などを間近に見た時などに「興奮した」という意味で「沸いた」と表現することもよくあります。静のイメージよりも動のイメージが強い場合に「沸いた」と使うのだと考えるとわかりやすいでしょう。