似た意味を持つ「責任」(読み方:せきにん)と「義務」(読み方:ぎむ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「責任」と「義務」という言葉は、どちらも「果たすべき務め」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
責任と義務の違い
責任と義務の意味の違い
責任と義務の違いを分かりやすく言うと、責任とは引き受けてしなければならない務めを表し、義務とは人として当然しなければならない務めを表すという違いです。
責任と義務の使い方の違い
一つ目の責任を使った分かりやすい例としては、「彼女はチームの責任者という立場にある」「責任感が強い人は周囲から信頼されます」「社外取締役について責任限定契約を締結する」「一切の責任を負いかねます」などがあります。
二つ目の義務を使った分かりやすい例としては、「義務感に駆られるまま就活している」「取引における義務を履行する」「毒親の扶養義務は拒否できるのだろうか」「合理的配慮の提供が義務化されました」などがあります。
責任と義務の使い分け方
責任と義務という言葉は、どちらも果たさなくてはならない務めを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
責任とは、なさなければならない任務、引き受けてしなければならない務めを意味します。「責任感」とは、自身の役割や任務を全うしようとする気持ちを意味し、責任感の強い人は仕事を途中で投げ出すことなく最後までやり遂げます。
義務とは、当然しなければならない務め、モラルとしてしなければならないこと、法令によって課せられる拘束を意味します。「義務感」とは、道徳的あるいは法律的に自分がそれを行わなくてはならないという気持ちを意味します。
つまり、義務感とは引き受けてしなければならないことを意味し、義務とは当たり前のようにしなければならないことを意味する言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
責任と義務の英語表記の違い
責任を英語にすると「responsibility」「charge」となり、例えば上記の「責任者」を英語にすると「a responsible person」となります。一方、義務を英語にすると「duty」「obligation」となり、例えば上記の「義務感」を英語にすると「a sense of duty」となります。
責任の意味
責任とは
責任とは、立場上当然負わなければならない任務や義務を意味しています。
その他にも、「自分のした事の結果について責めを負うこと、特に、失敗や損失による責めを負うこと」「法律上の不利益または制裁を負わされること、特に、違法な行為をした者が法律上の制裁を受ける負担」の意味も持っています。
表現方法は「責任を取る」「責任を感じる」
「責任を取る」「責任を感じる」などが、責任を使った一般的な言い回しです。
責任の使い方
「国民に対する説明責任が尽くされていない」「契約書に責任分界点を明記する」「英語教室の責任者に苦情を訴える」などの文中で使われている責任は、「立場上負わなければならない任務や義務」の意味で使われています。
一方、「責任の所在を明らかにする」「あなたのミスを責任転嫁しないでください」の文中で使われている責任は「自分のした事ついて責めを負うこと」の意味で、「AIに関する各国の民事責任規則を調査する」の文中で使われている責任は「法律上の制裁を負わされること」の意味で使われています。
責任とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で用いられているので、文脈により意味を判断する必要があります。責任の「責」は果たさなければ負い目となる事柄を表し、「任」は引き受けた役目を表す漢字です。
「責任分界点」の意味
責任を用いた日本語には、「責任分界点」があります。責任分界点とは、文字通り「責任を分けている点」を意味し、責任範囲を明確にする際に使われる言葉です。もともとは電力網やシステム開発や運用保守に使用されていましたが、現在ではビジネス一般にも広く用いられています。
責任の対義語
責任の対義語・反対語としては、自分の意のままに振る舞うことができることを意味する「自由」、責任を自覚しないことを意味する「無責任」などがあります。
責任の類語
責任の類語・類義語としては、負わされた任務を意味する「責め」、果たさなければならない務めを意味する「責務」、職務上の責任を意味する「職責」、重大な責任を意味する「重責」、文章についての責任を意味する「文責」、自分の述べた言葉に対する責任を意味する「言責」などがあります。
義務の意味
義務とは
義務とは、人がそれぞれの立場に応じて当然しなければならない務めを意味しています。
その他にも、「倫理学で、人が道徳上、普遍的または必然的になすべきこと」「法律によって人に課せられる拘束」の意味も持っています。
表現方法は「義務は絶対」「義務化」
「義務は絶対」「義務化」などが、義務を使った一般的な言い回しです。
義務の使い方
「母は義務感が強い人です」「英語教師としての義務を果たす」「立場によって義務の性質が異なります」などの文中で使われている義務は、「それぞれの立場に応じて当然すべき務め」の意味で使われています。
一方、「カントの義務論に感銘を受ける」の文中で使われている義務は「倫理学で、人が道徳上になすべきこと」の意味で、「義務教育の不登校は違法ではありません」「私は義務教育の敗北者です」の文中で使われている義務は、「法律によって人に課せられる拘束」の意味で使われています。
義務とは、上記の例文にあるように三つの意味があり、それぞれの意味で用いられているので、文脈により意味を捉える必要があります。義務の「義」は人のふみ行うべき正しい筋道、「務」は力を尽くして当たるべき仕事や役目を表します。
「義務教育学校」の意味
義務を用いた日本語には、「義務教育学校」があります。義務教育学校とは、小学校課程から中学校課程までの義務教育を一貫して行う学校を意味します。小中一貫校の大きな違いは、小学校と中学校の区切りの有無です。義務教育学校には区切りが無いため、柔軟に学年制を変更することができます。
インターネットスラングである「義務教育の敗北」の意味
義務を用いたインターネットスラングには「義務教育の敗北」があります。義務教育の敗北とは、小中学校で身につけるべき知識や常識が欠如しているさまを意味します。自虐的に自分のことを指して言うこともあります。
義務の対義語
義務の対義語・反対語としては、ある行為における正当性の根拠となる能力や資格を意味する「権利」などがあります。
義務の類語
義務の類語・類義語としては、責任をもって果たすべきつとめを意味する「任務」、人が本来尽くすべきつとめを意味する「本分」、毎日決めてする仕事を意味する「日課」、役として成しとげなければならない仕事を意味する「役目」、与えられた重大な務めを意味する「使命」などがあります。
責任の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、責めを負ってなさなければならない任務、悪い結果をまねいたときに責めを負うこと、違法な行為をした者に負わされる法律的な制裁を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「責任能力」とは、違法な行為による民事責任または刑事責任を負担できる能力を意味します。民法上の未成年者や刑法上の14歳未満の者などは、責任能力がないとされます。
義務の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、人が立場や職分に応じてしなければならないこと、人が道徳的にしなければならないこと、法令によって課せられる拘束を表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「国民の三大義務」とは、「教育の義務」「勤労の義務」「納税の義務」のことで、日本国憲法で定められています。
責任と義務という言葉は、どちらも「果たすべきこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、引き受けてやらなけれならないことを表現したい時は「責任」を、当然やらなければならないことを表現したい時は「義務」を使うようにしましょう。