似た意味を持つ「忌避」(読み方:きひ)と「回避」(読み方:かいひ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「忌避」と「回避」という言葉は、どちらもを「避けること」意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
忌避と回避の違い
忌避と回避の意味の違い
忌避と回避の違いを分かりやすく言うと、忌避とは物事や事態を嫌がって避けること、回避とは好ましくない物事や事態を避けることという違いです。
忌避と回避の使い方の違い
一つ目の忌避を使った分かりやすい例としては、「責任を忌避する者はリーダーになるべきではない」「天然由来成分を使った鳥用忌避剤を探しています」「忌避剤の使い方をお店で教えてもらう」「裁判官の忌避を申し立てる」などがあります。
二つ目の回避を使った分かりやすい例としては、「外交努力によって戦争を回避する」「回避性パーソナリティ障害は人格障害の一つです」「回避依存症の男性は愛情表現が苦手です」「裁判官の回避に関する規定を準用する」などがあります。
忌避と回避の使い分け方
忌避と回避という言葉は、どちらも良くない事態を避けること、好ましくない物事と接触をもたないようにすることを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
忌避とは、「責任を忌避する」のような使い方で、嫌がって避けることを意味し、主に文章語として用いられる言葉です。また、忌避は裁判用語として使用され、訴訟事件で公正さを失わせる恐れのある裁判官を、その職務から排除することも意味します。
回避とは、何らかの義務やトラブルあるいは障害などを避けることを意味します。「回避依存症」とは、親密な人間関係の構築を極端に避ける傾向を指します。また、裁判用語の「回避」は、訴訟事件を担当する裁判官または裁判所書記官が、自らその事件の担当から辞退することを意味します。
つまり、忌避とは嫌がって避けることであり、回避とは好ましくないことを避けることです。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
忌避と回避の英語表記の違い
忌避を英語にすると「evasion」「aversion」「challenge」となり、例えば上記の「責任を忌避する」を英語にすると「evade one’s responsibility」となります。
一方、回避を英語にすると「avoidance」「prevention」「recusal」となり、例えば上記の「戦争を回避する」を英語にすると「avoid war」となります。
忌避の意味
忌避とは
忌避とは、嫌って避けることを意味しています。
その他にも、「訴訟事件に関して、裁判官や裁判所書記官に不公正なことをされるおそれのある場合に、当事者の申し立てにより、その者を事件の職務執行から排除すること」の意味も持っています。
忌避の読み方
忌避の読み方は「きひ」です。誤って「いひ」「きさ」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「忌避する」「忌避感」
「忌避する」「忌避感」などが、忌避を使った一般的な言い回しです。
忌避の使い方
「PTA役員を忌避する保護者が増えています」「昆虫食に嫌悪感や忌避感を抱く人もいます」「ハクビシンが嫌がる匂いを放つ忌避剤を手に入れました」などの文中で使われている忌避は、「嫌って避けること」の意味で使われています。
一方、「弁護団が高裁に忌避を申し立てました」「裁判官に対する忌避申立てを不当に却下した」「忌避権の乱用は認められない」の文中で使われている忌避は、「裁判官や裁判所書記官に不公正なことをされるおそれのある場合に、その者を事件の職務執行から排除すること」の意味で使われています。
忌避とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ちますが、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。忌避の「忌」は嫌なこととして避けることや恐れはばかることを表し、「避」は災いや難儀をこうむらないように遠ざけることを表す漢字です。
「忌避剤」の意味
忌避を用いた日本語には「忌避剤」(読み方:きひざい)があります。忌避剤とは、有害動物の嫌う成分を用いて、害虫や害獣などが近寄らないようにする薬剤のことです。好ましくない虫や獣を近づけないことを目的しており、害虫を殺す目的である「殺虫剤」と区別されるものです。
忌避の対義語
忌避の対義語・反対語としては、喜んで受け入れることを意味する「歓迎」などがあります。
忌避の類語
忌避の類語・類義語としては、関わりを持つことを嫌ってその物事を避けることを意味する「敬遠」、避けようがないことを意味する「不可避」、困難などに直面したとき逃げることを意味する「逃避」などがあります。
回避の意味
回避とは
回避とは、物事を避けてぶつからないようにすること、また、不都合な事態にならないようにすることを意味しています。
その他にも、「訴訟事件で、裁判官または裁判所書記官が、自己に除斥または忌避される原因のあることに気づいて、その事件の取り扱いを避けること」の意味も持っています。
表現方法は「回避する」「回避された」「回避したい」
「回避する」「回避された」「回避したい」などが、忌避を使った一般的な言い回しです。
回避の使い方
「英語の追試を回避しました」「イラストを使用する際のトラブル回避のポイントを教えます」「回避性パーソナリティ障害の診断テストを受ける」「私は回避型愛着障害なのかもしれません」などの文中で使われている回避は、「物事を避けてぶつからないようにすること」の意味で使われています。
一方、「裁判官に審理を回避するよう求める署名活動をしています」「裁判官は回避するかもしれません」「回避は刑事訴訟や民事訴訟において行われます」などの文中で使われている回避は、「裁判官または裁判所書記官が事件の取り扱いを避けること」の意味で使われています。
回避とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ちますが、一般的には「物事を避けてぶつからないようにすること」の意味で使用されています。回避の「回」はぐるりとまわることや向きを変えてもとに戻ること、「避」は難儀にあわないように道をよけることを表す漢字です。
「回避性パーソナリティ障害」の意味
回避を用いた日本語には「回避性パーソナリティ障害」があります。回避性パーソナリティ障害とは、社会的交流や他者との交流を極端に避けようとする人格障害です。重度の劣等感や不安などから、様々なことに臆病になってしまうのが特徴です。
回避の対義語
回避の対義語・反対語としては、物事に直接対することを意味する「直面」などがあります。
回避の類語
回避の類語・類義語としては、災難を避けることを意味する「避難」、その場所を退いて危険を避けることを意味する「退避」、裁判の公正を保つため当事者と特別関係にある裁判官を担当できないようにすることを意味する「除斥」などがあります。
忌避の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、忌み避けること、訴訟事件において裁判官や裁判所書記官が不公平な裁判をするおそれがある場合などに当事者が担当裁判官の職務執行を拒否することを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「忌避感」とは、人や物事を嫌って避けたいと思う気持ちを意味します。忌避感を用いた言い回しには「忌避感を覚える」「忌避感を抱く」「忌避感を持つ」などがあります。
回避の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、物事をよけて避けること、事態がそうならないようにすること、裁判官や裁判所書記官が自分に除斥や忌避の原因があると考えた時に自発的に事件の担当から退くことを表現したい時になどが挙げられます。
上記の例文にあるように、回避の慣用的な言い回しには「回避された」「回避したい」「回避する」などがあります。例文4にある「回避不能」とは、回避できないことであり、避けようと思っても避けられないことを意味します。
忌避と回避という言葉は、どちらも「物事や事態を避けること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、嫌がって避けることを表現したい時は「忌避」を、好ましくないことを避けることを表現したい時は「回避」を使うようにしましょう。