似た意味を持つ「年次」(読み方:ねんじ)と「年度」(読み方:ねんど)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「年次」と「年度」という言葉は、1年間を表すという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
年次と年度の違い
年次と年度の意味の違い
年次と年度の違いを分かりやすく言うと、年次は1月1日から12月31日までの1年間を表現する時に使い、年度は特定の日付から1年間を表現する時に使うという違いです。
年次と年度の期間の違い
年次は、年のはじまりである1月1日から12月31日までの1年間を区切りとする際に使う言葉です。一方年度は、暦とは別に便宜上定められた1年間を区切りとする際に使う言葉です。
そのため、年度で表現されているものに関しては必ずしも1月1日から始まるわけではありません。日本の学校や会社などのように4月1日から始まるものが多く見受けられます。これが年次と年度の明確な違いです。
年次と年度の英語表記の違い
年次を英語にすると「yearly」「annual」となり、例えば「年次休暇」を英語にすると「yearly paid vacation」となります。
一方、年度を英語にすると「year」「fiscal year」となり、例えば「年度のはじめ」を英語にすると「the beginning of a fiscal year」となります。
年次の意味
年次とは
年次とは、1年ごと、毎年、年の順序を意味しています。
年次の期間
学生の学年に対して「1年次」などという使い方をします。この場合は、1月1日から12月31日の期間を表すわけではなく、学年の順序を表します。
そのため、1年次は1年生と同義になり、定められた単位をその学年で取得できない場合は再度1年生として留年することになります。この表現は、大学生に対して使い、高校生より下にはあまり使われません。
ちなみに「1回生」などという使い方は、主に西日本中心で特に関西で多く使われています。この言葉は入学してどのくらいの年数なのかを表す言葉であるため、定められた単位をその学年で取得できずとも2回生、3回生となり、最長8回生まで存在します。
年次の読み方
年次には「ねんじ」という読み方の他に「としなみ」という読み方もあります。毎年変わらないことや例年並み、年々という意味を持ちます。
表現方法は「年次が上」「年次が上がる」「年次が高い」
「年次が上」「年次が上がる」「年次が高い」などが、年次を使った一般的な表現方法です。
年次を使った言葉として、「年次慰労休暇」「年次カレンダー」があります。
「年次慰労休暇」の意味
一つ目の「年次慰労休暇」とは、いわゆる年次有給休暇のことで賃金が支払われる休暇を指します。
2019年4月からすべての企業で、年10日以上年次有給休暇が与えられる労働者に対して、うち年5日は雇用する側が時季を指定して休暇を取得させることが義務付けられました。
年次有給休暇は省略して「年休」と呼ばれますが、「有給」や「有休」とも呼ばれます。これらに大きな違いはありませんが、一部では、給料が発生する「年休」や「有給」と、給料が発生しない「有休」と区別している企業もあります。
「年次カレンダー」の意味
二つ目の「年次カレンダー」とは、腕時計に搭載される日付表示機能の一つです。通常の日付機能であれば31日まで表示してしまうため、存在しない4月31日のような表示になってしまい、日付のズレを月の初めに修正する必要があります。
しかし、年次カレンダー機能であれば、30日までの月と31日までの月の違いを判断してくれるため、4月30日の次は5月1日を示すようになります。ただし、30日までか31日までかの判断しかできないため、28日や29日までしかない2月には対応できません。
年次の類語
年次の類語・類義語としては、年回りや年を意味する「歳次」、ある年代の間を意味する「年間」があります。
年次の次の字を使った別の言葉としては、物事の順序を意味する「序次」、順を追って次々に物事がなされる様子を意味する「逐次」(読み方:ちくじ)、今度や今回を意味する「今次」(読み方:こんじ)などがあります。
年度の意味
年度とは
年度とは、暦年とは別に、事務などの便宜のために区分した1年の期間を意味しています。
年度を使った言葉として、「会計年度」と「学校年度」があります。
官公庁などは予算を執行するための期間を指す「会計年度」を、学校や塾では学年の切り替わりを目的とした期間を指す「学校年度」を用いており、どちらも4月1日から3月31日までを一区切りとしています。
「会計年度」の意味
一つ目の「会計年度」は1886年に始まった区分です。当時日本の主な産業は稲作であったため、政府が集める税金も米でした。米の収穫は秋であるため、それを現金に換えて予算を編成した場合、1月では間に合わなかったため4月にずらしていました。
また、当時世界の銀行と称されていたイギリスの会計年度も4月からとしていたため、イギリスに会計年度をそろえたともされています。
近年では、海外との取引などため海外に合わせて、1月から12月を区切りとする企業も見受けられるようになってきました。
「学校年度」の意味
二つ目の「学校年度」は、1886年に会計年度が始まったことで国や県から補助金をもらう学校がそれに合わせて4月入学に変更していくところから始まった区分です。
江戸時代の寺子屋や明治時代初期の学校では入学時期だけでなく、進学時期も特には決まっていませんでした。しかし徐々4月入学に変わっていき、昭和に入ったころにはほぼすべての学校で4月はじまりに統一されていました。
他にも、6月から5月までを区切りとする「肥料年度」、7月から6月までを区切りとする「麦年度」、8月から7月までを区切りとする「綿花年度」、9月から8月までを区切りとした「芋年度」など様々な区切りが存在します。
年度の類語
年度の類語・類義語としては、1年の間を意味する「年中」、年を意味する「年歳」があります。
年度の度の字を使った別の言葉としては、強さの程度や度合いのはなはだしいことを意味する「強度」、物体のあたたかさや冷たさを示す尺度を意味する「温度」、同じことが繰り返されることやいつもを意味する「毎度」などがあります。
年次の例文
この言葉がよく使われる場面としては、1月1日からの1年間や年の順序を意味する時などが挙げられます。
例文3の「年次が浅い」と例文4の「年次が低い」という表現で、その職などに就いて日がそんなに経っていないことを表します。同じ意味を持つ表現として「年次が若い」という言葉もあります。
例文5の「年次毎」とは1年ごとや毎年を意味する言葉です。
年度の例文
この言葉がよく使われる場面としては、暦上の区切りではなく特定の日付からの1年間を意味する時などが挙げられます。
どの例文も1月1日から始まる可能性もあれば、4月はじまりである可能性もあります。今日では、おおよその会社も学校も年度始まりが4月であるため、例文2のように新生活と書かれていたら4月からの生活を意味することとなります。
年次と年度どちらを使うか迷った場合は、1月1日から12月31日の1年間を表す場合には「年次」を、1月1日はじまりではない1年間を表す場合は「年度」を使うと覚えておけば間違いありません。