似た意味を持つ「約束」(読み方:やくそく)と「契約」(読み方:けいやく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「約束」と「契約」という言葉は、どちらも「取り決めること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
約束と契約の違い
約束と契約の意味の違い
約束と契約の違いを分かりやすく言うと、約束とは日常的な取り決めを表し、契約とは法的な取り決めを表すという違いです。
約束と契約の使い方の違い
一つ目の約束を使った分かりやすい例としては、「軽い口約束からトラブルに発展しました」「英語のレッスン中は約束事を必ず順守してください」「約束手形の支払期日が明日に迫っています」「まさか約束を反故にするつもりですか」などがあります。
二つ目の契約を使った分かりやすい例としては、「日本人大リーガーの契約金が話題になっています」「英語の契約書を日本語に訳す」「二部の契約書に割印を押しました」「上司に相談しながら契約締結を進める」などがあります。
約束と契約の使い分け方
約束と契約という言葉は、どちらも物事についてあらかじめ取り決めることや決めた事柄を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
約束とは、当事者の間で取り決めることを意味します。「約束手形」のような使い方で商取引において使用されることもありますが、基本的には「軽い口約束」「約束事を守る」のような使い方で日常語として用いられている言葉です。
契約とは、約束することを意味し、特に、法律上の効果を発生させる目的で、当事者の意思表示の合意によって成立する法律行為を指す言葉です。「契約書」には、契約の条件を記載した文書であり、その成立を証明する役割があります。
つまり、約束とは日常生活での取り決めを表現することが多い言葉であり、契約とは主に商取引などの法的な取り決めを表現する言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
約束と契約の英語表記の違い
約束を英語にすると「promise」「appointment」「engagement」となり、例えば上記の「口約束」を英語にすると「a verbal promise」となります。一方、契約を英語にすると「contract」「sign」「undertake」となり、例えば上記の「契約金」を英語にすると「contract money」となります。
約束の意味
約束とは
約束とは、当事者の間で取り決めることを意味しています。
その他にも、「ある社会や組織で、守るように定めたきまり」「その実現が確実視されていること」「前から決まっている運命、宿命、因縁」の意味も持っています。
表現方法は「約束する」「約束を守る」
「約束する」「約束を守る」などが、約束を使った一般的な言い回しです。
約束の使い方
「英語の勉強を毎日すると約束しました」「約束手形の代金を支払う」などの文中で使われている約束は「当事者間で取り決めること」の意味で、「夏休みのお約束は守れましたか」などの文中で使われている約束は「守るように定めたきまり」の意味で使われています。
一方、「彼は社長の座を約束された御曹司だ」の文中で使われている約束は「実現が確実視されていること」の意味で、「私は何を約束して生まれ変わったのだろうか」の文中で使われている約束は「前から決まっている運命」の意味で使われています。
約束とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。約束の「約」は紐で結び目を作り取り決めの目印とすること、「束」は動きがとれないように引き締めることを表す漢字です。
「約束手形」の意味
約束を用いた日本語には「約束手形」があります。約束手形とは、現金に代わる企業間の決済手段であり、振出人みずからが受取人に対して一定金額の支払いを約束した証券を意味します。手形には、約束手形と為替手形の2種類がありますが、日本で流通している手形のほとんどは約束手形です。
約束の対義語
約束の対義語・反対語としては、役に立たなくなった物事を意味する「反故」、契約や約束などにそむくことを意味する「違約」などがあります。
約束の類語
約束の類語・類義語としては、約束や誓いを意味する「契り」、話し合って決めることを意味する「申し合わせ」、公衆に対して約束することを意味する「公約」、物事のきまりや秩序を意味する「規則」、団体内で協議して決めた規則を意味する「規約」などがあります。
契約の意味
契約とは
契約とは、二人以上の当事者の意思表示の合致によって成立する法律行為、売買・交換・贈与・貸借・雇用・請負・委任・寄託などを意味しています。
その他にも、「約束を取り交わすこと、また、その約束」「ユダヤ教・キリスト教に特徴的な思想で、救いの恩恵に関して神と人間との間で交わされた約束」の意味も持っています。
契約の読み方
契約の読み方は「けいやく」です。誤って「きつやく」「けつやく」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「契約書」「契約成立」
「契約書」「契約成立」などが、契約を使った一般的な言い回しです。
契約の使い方
「契約書に収入印紙を貼る」「プロ野球選手の契約更改の季節になりました」「契約社員でもボーナスが支給される会社があります」「商法は契約不適合責任の期間を制限しています」などの文中で使われている契約は、「当事者の意思表示の合致によって成立する法律行為」の意味で使われています。
一方、「口車に乗せられて馬鹿な契約をしてしまった」の文中で使われている契約は「約束を取り交わすこと」の意味で、「人類の歴史は神との契約で始まり、契約の成就で終わる」の文中で使われている契約は「神と人間との間で交わされた約束」の意味で使われています。
契約とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ちますが、多くの場合は、意思表示の合致 によって成立する法津行為の意味で用いられる言葉です。契約の「契」は訓読みで「ちぎる」と読み、将来のことを固く誓うことを表し、「約」は取り決めの目印を表します。
「契約不適合責任」の意味
契約を用いた日本語には「契約不適合責任」があります。契約不適合責任とは、売主や請負人が引き渡した目的物が、契約の内容に適合していなかった場合に負う責任を意味する法律用語です。たとえば、商品が不良品であった場合に売主が買主に対して負う責任を指します。
契約の対義語
契約の対義語・反対語としては、契約を取り消すことを意味する「解約」などがあります。
契約の類語
契約の類語・類義語としては、誓って約束することを意味する「誓約」、協議した上で約束をとりむすぶことを意味する「協約」、国家間または国家と国際機関との間の文書による合意を意味する「条約」、特別の便宜をはかる契約をすることを意味する「特約」などがあります。
約束の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある物事に関して取り決めて互いに誓うこと、ある事柄に関して守るように定めること、将来そうなることがほとんど間違いない、前から定まっている運命を表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「お約束」とは、典型的な物事の展開や、特定の状況で次の展開として期待される物事を意味します。
契約の例文
この言葉がよく使われる場面としては、当事者の申込みや承諾という意思表示の合致によって成立する法律行為、言い交わすこと、神が救いの業を成し遂げるために人間に対して示す特別な意思を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「契約社員」とは、非正規雇用の形態の一つであり、雇用期間を定めた有期労働契約を企業と結んで働く社員を指す言葉です。
約束と契約という言葉は、どちらも「物事についての取り決め」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、日常生活における取り決めを表現したい時は「約束」を、ビジネス上の法的な取り決めを表現したい時は「契約」を使うようにしましょう。