似た意味を持つ「不詳」(読み方:ふしょう)と「不明」(読み方:ふめい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「不詳」と「不明」という言葉は、どちらも「はっきりわからないこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
不詳と不明の違い
不詳と不明の意味の違い
不詳と不明の違いを分かりやすく言うと、不詳とは詳しくわからないこと、不明とは全くわからないことという違いです。
不詳と不明の使い方の違い
一つ目の不詳を使った分かりやすい例としては、「彼女は年齢不詳の美魔女である」「制作年不詳の作品を展示しています」「職業不詳の女が結婚詐欺の疑いで逮捕されました」「不詳を補完して統計表を完成させる」などがあります。
二つ目の不明を使った分かりやすい例としては、「交通事故により意識不明の重体になってしまった」「部長の英語力がどの程度かは不明です」「不明点があればご連絡ください」「ファイル形式が不明でデータが開けません」などがあります。
不詳と不明の使い分け方
不詳と不明という言葉は、どちらも明らかでなくハッキリとわからないことを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
不詳とは、詳しくはわからないことを意味します。「制作年不詳の作品」とは、作品が制作された年代は見当がつくものの明確な年がわからないことを表します。また、「年齢不詳」「職業不詳」のように、現時点ではわからなくても調べれば明らかになるかもしれない事柄にも使用される言葉です。
不明とは、明らかでないこと、はっきりとわからないことを意味します。「ファイル形式が不明」のような使い方で、全くわからないことを表現する言葉です。また、「不明点があればご連絡ください」はビジネスシーンで使用され、何かわからないことがないかを確認する意味合いがあります。
つまり、不詳とは詳しくわからないことを表し、不明とは全くわからないことを意味します。二つの言葉を比べると、不詳よりも不明の方が、わからない度合いが大きいと言えるでしょう。
不詳と不明の英語表記の違い
不詳も不明も英語にすると「unknown」「unidentified」となり、例えば上記の「年齢不詳」を英語にすると「age unknown」「unidentified」となります。
不詳の意味
不詳とは
不詳とは、詳しくはわからないこと、はっきりしないことを意味しています。
不詳の使い方
不詳を使った分かりやすい例としては、「よく年齢不詳と言われます」「性別不詳のキャラクターに恋をしました」「作者不詳の詩が世界中で愛されています」「詐欺未遂の疑いで職業不詳の男を逮捕した」などがあります。
その他にも、「国勢調査に関する不詳補完結果を公表する」「不詳の内因死と診断されました」「戦国武将は生没年不詳が多い」「年月日不詳新築として登記する」「インバウンドの宿泊者数に国籍不詳を含みます」などがあります。
不詳の「詳」は訓読みで「くわしい」「つまびらか」と読み、物事の細かいところまではっきりしているさまを表します。打ち消しの助字である「不」と結びつき、不詳とは、詳しくわからないこと、はっきりしないことを意味します。
「被疑者不詳」の意味
不詳を用いた日本語には「被疑者不詳」(読み方:ひぎしゃふしょう)があります。被疑者不詳とは、犯罪に関与した被疑者が特定されていないことを意味します。
「不詳不詳ながら」は誤用
不詳を用いた誤った使い方には「不詳不詳ながら」があります。正しくは「不承不承ながら」(読み方:ふしょうぶしょうながら)であり、気が進まないままに行う様子を表す言い回しです。
不詳の対義語
不詳の対義語・反対語としては、細部に至るまで詳しいことを意味する「詳細」、細かい点まではっきりとして詳しいさまを意味する「明細」などがあります。
不詳の類語
不詳の類語・類義語としては、まだつまびらかでないことを意味する「未詳」、鮮明でないさまを意味する「不鮮明」、不確かなさまを意味する「おぼろげ」、漠然として捉えどころのないさまを意味する「雲をつかむ」、本質的な部分がはっきりしないさまを意味する「掴み所がない」などがあります。
不明の意味
不明とは
不明とは、はっきりわからないこと、明らかでないことを意味しています。
その他にも、「物事を見抜く力のないこと」の意味も持っています。
不明の読み方
不明の読み方は「ふめい」です。誤って「ふみょう」「ふみん」などと読まないようにしましょう。
不明の使い方
「認知症の祖父が行方不明になってしまった」「不明な電話番号からの着信は無視します」「原発不明がんになる原因はいくつかあります」「不明な点等ございましたらご連絡下さい」などの文中で使われている不明は、「明らかでないこと」の意味で使われています。
一方、「これも私の不明の致すところである」「自分の不明を棚に上げて相手を批判する」「作家ながら私の不明の至りです」「君はおのれの不明を恥じるべきだ」などの文中で使われている不明は、「物事を見抜く力のないこと」の意味で使われています。
不明とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。不明の「不」は否定を表す語であり、「明」は事がはっきりしていることや物事を見分けたりする力があることを表す漢字です。
「行方不明」の意味
不明を用いた日本語には「行方不明」(読み方:ゆくえふめい)があります。行方不明とは、どこへ行ってしまったかわからないことを意味し、家族の所在の確認ができない場合は警察署や交番に行って「行方不明者届」を出すことになります。
不明の対義語
不明の対義語・反対語としては、非常にはっきりしていることを意味する「明白」、まぎれもなくはっきりしているさまを意味する「歴然」などがあります。
不明の類語
不明の類語・類義語としては、あいまいなことを意味する「不明瞭」、様子などがはっきりしないことを意味する「灰色」、事柄の内容などがはっきりしないさまを意味する「ぼんやり」、事件の真相などが全くわからず解決の見込みがたたないことを意味する「迷宮入り」などがあります。
不詳の例文
この言葉がよく使われる場面としては、つまびらかでないこと、詳しくわからないことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、不詳という言葉は「職業不詳」「年齢不詳」のように「○○不詳」と表現することが多くあります。
不明の例文
この言葉がよく使われる場面としては、はっきりしないこと、よくわからないこと、物事を見通す見識がないこと、物事を見抜く力が足りないことを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「不明を恥じる」とは、物事を見極める能力がないことを恥ずかしく思うことを意味します。
不詳と不明という言葉は、どちらも「わからないこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、詳しくはわからないことを表現したい時は「不詳」を、全くわからないことを表現したい時は「不明」を使うようにしましょう。