似た意味を持つ「気配」(読み方:けはい)と「兆候」(読み方:ちょうこう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「気配」と「兆候」という言葉は、どちらも「何かが起こるきざし」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
気配と兆候の違い
気配と兆候の違いを分かりやすく言うと、気配とは主観的または直感的なきざし、兆候とは客観的または具体的なきざしという違いです。
一つ目の気配を使った分かりやすい例としては、「誰か来るような気配を感じた」「朝方、異様な気配に目を覚ましました」「かすかに秋の気配を感じるようになりました」「人の気配がして隣の部屋のドアを開けました」などがあります。
二つ目の兆候を使った分かりやすい例としては、「新入社員が辞める兆候を見逃してはいけません」「軽い肺気腫の兆候があると診断されました」「為替市場にストレスの兆候は見られません」などがあります。
気配と兆候という言葉は、どちらも何らかの出来事が起こる前や変化する前に感じるものを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
気配とは、漠然とした何となく感じられるようすを意味します。「人の気配がする」とは、視覚でははっきりと人がいることを確認できないのに、周囲のようすや雰囲気から誰かいるのではないかと感じていることを表しています。直感的あるいは主観的な感覚で使用される言葉です。
兆候とは、物事の起こる前ぶれを意味し、すでに起こり始めた出来事の一部が、ある現象として現れかかっていることを表します。「兆候がある」とは、何らかのものごとが起きる予感が見てとれるさまです。具体的あるいは客観的な事象に基づいて使用されることが多い言葉です。
つまり、気配とは主観的または直感的なきざしを表し、兆候とは客観的または具体的なきざしを意味する言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
気配も兆候も英語にすると「sign」「indication」となり、例えば上記の「誰か来るような気配」を英語にすると「signs of some one coming」となります。
気配の意味
気配とは、はっきりとは見えないが、漠然と感じられるようすを意味しています。
その他にも、「取引で、市場の景気や相場の状態、きはい」の意味も持っています。
「ふと背後に人の気配を感じる」「お父さんが帰ってきたらしい気配がした」「うちの猫は人の気配をかぎつけると隠れてしまう」などの文中で使われている気配は、「はっきりとは見えないが漠然と感じられるようす」の意味で使われています。
一方、「特別買い気配からストップ高になりました」「トランプ関税の影響で売り気配が続いています」「株取引の初心者ですが、気配値の見方を教えて下さい」などの文中で使われている気配は、「取引で、市場の景気や相場の状態」の意味で使われています。
気配の読み方は「けはい」の他に「きはい」とも読みますが、多くは「けはい」と読まれています。古くは「けわい」と読まれていましたが、当て字である「気配」に引かれて「けはい」と読まれるようになりました。
気配とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ちますが、一般的には「はっきりとは見えないが、漠然と感じられるようす」の意味で用いられています。気配の「気」は何か特有のようすや趣きを表し、「配」は注意を行き届かせることを表す感じです。
気配を用いた日本語には「気配値」(読み方:けはいね)があります。気配値とは、証券取引市場で、買い方が希望する買いたい値段、売り方が希望する売りたい値を意味します。店頭取引で債券売買の参考値段となります。
気配の類語・類義語としては、その場やそこにいる人たちが自然に作り出している気分を意味する「雰囲気」、その場の雰囲気を意味する「空気」、あるものに抱く感じを意味する「気色」、その物事に特有の雰囲気を意味する「感じ」、気分や雰囲気を意味する「ムード」などがあります。
兆候の意味
兆候とは、物事の起こる前ぶれを意味しています。
兆候を使った分かりやすい例としては、「消費者物価指数から景気回復の兆候が見られる」「不登校になる前には様々な兆候が見られる」「英文がスラスラ読めるようになったら英語力がアップする兆候です」などがあります。
その他にも、「落雷の兆候にご注意ください」「風邪の兆候があったので病院に行きました」「認知症の典型的な兆候を示している」「どうやら妊娠の兆候があるようです」「兆候なしでいきなり陣痛が来ることもありますか」などがあります。
兆候は「徴候」とも書きますが、一般的には「兆候」と表記されています。
兆候の読み方は「ちょうこう」です。誤って「じょうこう」「ちょうそうろう」などと読まないようにしましょう。
兆候の「兆」は訓読みで「きざし」と読み、物事が起こることを予想させるようなしるしを表す感じです。ようすを見ることを表す「候」と結びつき、兆候とは、何かが起こる前ぶれ、物事の起こりそうなきざしを意味します。
兆候という言葉は、何かが起こることを予感させる現象がすでに起きている場合にも、なんとなく感じとれる場合にも使用することができます。汎用性のある言葉であり、日常会話からビジネスシーンまで幅広い場面で用いられています。
兆候の対義語・反対語としては、事が終わったあとも残る風情や味わいを意味する「余韻」などがあります。
兆候の類語・類義語としては、何かが起こる前に現れるしるしを意味する「前兆」、未来の事象を示すものとしての自然現象に現れる変化を意味する「予兆」、何か事が起こるのを予想させるような出来事を意味する「前触れ」、物事が起こりそうな気配を意味する「きざし」などがあります。
気配の例文
この言葉がよく使われる場面としては、漠然と感覚によってとらえられる物事のようす、市場の景気や相場の状態を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4にある気配は、漠然と感覚によってとらえられる物事のようすの意味で用いられています。例文5の気配は、株取引の用語で、買い手と売り手が提示する値段を意味します。
兆候の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事の起こりそうな兆し、前ぶれを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、兆候の慣用的な言い回しには「兆候を見逃さない」「兆候が見られる」「兆候がある」などがあります。「兆候が見られる」とは、何らかの出来事や変化が起こる前のきざしが感じられることを表現しています。
気配と兆候という言葉は、どちらも「何かが起こるきざし」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、直感的なきざしを表現したい時は「気配」を、具体的なきざしを表現したい時は「兆候」を使うようにしましょう。