似た意味を持つ「幻覚」(読み方:げんかく)と「錯覚」(読み方:さっかく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「幻覚」と「錯覚」という言葉は、どちらも「間違った感覚」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
幻覚と錯覚の違い
幻覚と錯覚の意味の違い
幻覚と錯覚の違いを分かりやすく言うと、幻覚とは実在しないものが見えること、錯覚とは実在するものを見間違えることという違いです。
幻覚と錯覚の使い方の違い
一つ目の幻覚を使った分かりやすい例としては、「薬物には幻覚をもたらす働きがあります」「幻覚が見えるの原因と対処法を調べる」「幻覚や妄想は精神的な病気の症状かもしれません」「対話型AIが回答した文章中の幻覚を検出する」などがあります。
二つ目の錯覚を使った分かりやすい例としては、「こちらは目の錯覚を利用した絵です」「だまし絵や錯覚アートで遊ぼう」「一体いつから錯覚していたのだろう」「歯の痛む場所を脳が錯覚することがあります」などがあります。
幻覚と錯覚の使い分け方
幻覚と錯覚という言葉は、どちらも間違えた感覚や誤った意識を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
幻覚とは、「対象なき知覚」とも言われ、外部から刺激がないのに、声を聞いたり、物が見えたり、味がしたり、匂ったりする体験を意味します。t例えば、人工知能が実際には存在しない事実や根拠のない情報を生成することを「AIの幻覚」と表現することがあります。
錯覚とは、ある対象が事実と著しく異なって知覚される現象を意味します。例えば、道端に落ちている細長い縄をヘビと間違えて認識してしまったり、ブランド物の服を着ているだけでお金持ちと勘違いしてしまうようなことです。
つまり、幻覚とは対象がないのに知覚することであり、錯覚とは対象を誤って知覚することを意味します。二つの言葉は似ていますが、意味は大きく異なるので区別して使うようにしましょう。
幻覚と錯覚の英語表記の違い
幻覚を英語にすると「hallucination」「mirage」「phantom」となり、例えば上記の「幻覚をもたらす」を英語にすると「causes hallucinations」となります。
一方、錯覚を英語にすると「illusion」「sensory illusion」「perceptual illusion」となり、例えば上記の「目の錯覚」を英語にすると「an optical illusion」となります。
幻覚の意味
幻覚とは
幻覚とは、実際に感覚的刺激や対象がないのに、あるように知覚することを意味しています。
幻覚の使い方
幻覚を使った分かりやすい例としては、「認知症の祖母は幻覚症状が出るようになってしまった」「幻覚で急に人が見える時があります」「幻覚が見える病気には何がありますか」「英語の先生は幻覚を見るようになったらしい」などがあります。
その他にも、「幻覚症状の患者を看護する」「ストレスが幻覚を引き起こすこともあります」「幻覚と妄想の違いを教えてもらいました」「幻覚を見るのは薬の副作用でしょうか」「AIの幻覚に惑わされないようにしてください」などがあります。
幻覚の「幻」は訓読みで「まぼろし」「まどわす」と読み、実際にはないのにあるように見えるものを表す漢字です。意識を表す「覚」と結び付き、幻覚とは、実際には感覚刺激や対象がないのに、それが実在しているように感覚的に認知したり、認知したと感じる感覚を意味します。
表現方法は「幻覚犯」
幻覚を用いた日本語には「幻覚犯」があります。幻覚犯とは、法律上罪とならない事実を罪となると誤信してなされた行為を意味します。幻覚犯は、そもそも当該行為を処罰する規定が存在しないため、行為者がいかに犯罪を犯すつもりでも不可罰になります。
幻覚の対義語
幻覚の対義語・反対語としては、いま目の前に事実として現れている事柄や状態を意味する「現実」などがあります。
幻覚の類語
幻覚の類語・類義語としては、実際にはないものがあるように見えることを意味する「幻視」、実際には音がしていないのに聞いたように感じることを意味する「幻聴」、現実にはないことをあるかのように心に思い描くことを意味する「幻想」などがあります。
錯覚の意味
錯覚とは
錯覚とは、思い違い、勘違いを意味しています。
その他にも、「心理学で、刺激または対象の客観的事実を違ったものに知覚すること」の意味も持っています。
錯覚の使い方
「自分は英語が得意だと錯覚していました」「錯覚画像で脳トレをしながら注意力を磨く」「マッチングアプリでいいね数が多いと錯覚資産が働きます」などの文中で使われている錯覚は、「思い違い、勘違い」の意味で使われています。
一方、「透明性の錯覚をテーマに論文を書く」「錯覚アートを描いてみたいです」「目の錯覚を数学的に解明する研究をしています」などの文中で使われている錯覚は、「心理学で、刺激や対象の客観的事実を違ったものに知覚すること」の意味で使われています。
錯覚とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で使用されているため、文脈により意味を捉える必要があります。錯覚の「錯」は訓読みで「まじる」「あやまる」と読み、間違えることや誤ることを表す漢字です。
表現方法は「錯覚資産」
錯覚を用いた日本語には「錯覚資産」があります。錯覚資産とは、他人が自分に対して持っている、自分に都合のいい思考の錯覚を意味します。「この人はすごい」「この人は何でもできる」と思わせるような能力です。
「錯覚を覚える」は誤用
錯覚を用いた誤った日本語には「錯覚を覚える」があります。「錯覚を覚える」は「頭痛が痛い」と同じ二重表現なので誤用とされています。「錯覚する」「錯覚を起こす」「錯覚に陥る」などと言い換えるようにしましょう。
錯覚の対義語
錯覚の対義語・反対語としては、実際に起こった事柄や現実に存在する事柄を意味する「事実」などがあります。
錯覚の類語
錯覚の類語・類義語としては、音や色あるいは寒暖などから受ける印象や感じを意味する「感覚」、実際とは異なる作られたイメージを意味する「虚像」、物事の感じや味わいを微妙な点まで悟る働きを意味する「センス」などがあります。
幻覚の例文
この言葉がよく使われる場面としては、感覚印象がないにもかかわらず、それが現実に存在しているような知覚を生じる体験を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「幻覚剤」とは、知覚体験や意識状態の変容を起こす化学物質を意味し、LSDやメスカリンなどがあります。
錯覚の例文
この言葉がよく使われる場面としては、勘違い、外界の対象を客観的事実と著しくちがえて知覚することを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「錯覚アート」とは、別名「トリックアート」とも言い、錯視を利用した作品を意味し、実際の色や形と異なって見える絵画や、模様が動いて見える静止画などを指す言葉です。
幻覚と錯覚という言葉は、どちらも「間違った感覚」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、実在しないものを見ることを表現したい時は「幻覚」を、実在するものを見間違えることを表現したい時は「錯覚」を使うようにしましょう。