【人種】と【民族】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「人種」(読み方:じんしゅ)と「民族」(読み方:みんぞく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「人種」と「民族」という言葉は、どちらも「人間の分類」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




人種と民族の違い

人種と民族の意味の違い

人種と民族の違いを分かりやすく言うと、人種とは遺伝的な分類、民族とは文化的な分類という違いです。

人種と民族の使い方の違い

一つ目の人種を使った分かりやすい例としては、「歴史的な背景が人種差別を生み出している」「この国での人種差別の現状をお伝えします」「今また人種主義が台頭しつつあります」「人種を理由に職務質問してはいけません」などがあります。

二つ目の民族を使った分かりやすい例としては、「社会の先生にアイヌ民族の定義を教えてもらいました」「独特の旋律とリズムは民族音楽の魅力です」「オリンピック競技に民族スポーツはありません」などがあります。

人種と民族の使い分け方

人種と民族という言葉は、どちらも性質や種類などによって別々に分けてた人間の分類を表しますが、意味や使い方には違いがあります。

人種とは、共通の遺伝的特徴を持つ人の集団を意味します。一般的には、皮膚の色によりコーカソイド(白色人種)・モンゴロイド(黄色人種)・ニグロイド(黒色人種)に分類し、それぞれをさらに数種に分けることができます。

民族とは、他の集団から区別されるなんらかの文化的共通項を持ち、互いに伝統的に結ばれていると自ら認める人々、もしくは他の人々によってそのように認められる人々を意味します。漢民族、騎馬民族、モンゴル族などがあります。

つまり、人種とは遺伝的な形質上の特徴にもとづいた分類であり、民族とは文化的あるいは社会的な共通項にもとづいた分類です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。

人種と民族の英語表記の違い

人種も民族も英語にすると「race」「ethnic group」となり、例えば上記の「人種問題」を英語にすると「a race problem」となります。

人種の意味

人種とは

人種とは、人類を骨格・皮膚・毛髪などの形質的特徴によって分けた区分を意味しています。

その他にも、「人をその社会的地位・生活習慣・職業や気質などによって分類していう言い方」の意味も持っています。

人種の使い方

「人種差別撤廃条約の目的と内容をきちんと確認する」「昔は人種のるつぼと言っていましたが、今は人種のサラダボウルです」「人種差別をなくすには、どうしたらよいのだろう」などの文中で使われている人種は、「人類を骨格や皮膚などの形質的特徴によって分けた区分」の意味で使われています。

一方、「彼女は自分とは違う人種だと思います」「ああいう人種と付き合うのはやめなさい」などの文中で使われている人種は、「人をその社会的地位や職業などによって分類していう言い方」の意味で使われています。

人種の読み方

人種の読み方は「じんしゅ」のほかに「ひとだね」とも読みます。「ひとだね」と読む場合、その場にいる人の数という別の意味を持つので注意してください。

人種とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。人種の「人」は生物中の一類としての人間を表し、「種」は共通の性質によって分類されるものを表す漢字です。

表現方法は「人種主義」

人種を用いた日本語には「人種主義」があります。人種主義とは、「レイシズム」「レーシズム」とも言い、人種間には本質的な優劣の差異があるとする見解に基づく思想やイデオロギーを意味します。19世紀末のヨーロッパで広まり、優秀民族支配論・有色民族劣等論などを生み出しました。

人種の類語

人種の類語・類義語としては、白色人種に属する人を意味する「白人」、黒色人種に属する人を意味する「黒人」、モンゴロイドの俗称を意味する「黄色人種」、成人男子の平均身長が150センチに満たない民族の総称を意味する「ピグミー」などがあります。

民族の意味

民族とは

民族とは、言語・人種・文化・歴史的運命を共有し、同族意識によって結ばれた人々の集団を意味しています。

民族の使い方

民族を使った分かりやすい例としては、「兄は大学で民族衛生学を研究しています」「アイヌ民族の生活様式を英語で説明する」「民族主義は帝国主義に反対する立場を取っている」「かわいい民族衣装のイラストを描いてもらった」などがあります。

その他にも、「民族自決権の濫用が問題になっている」「家族で国立民族学博物館に行きました」「質の良い民族楽器を販売しています」「世界の民族衣装一覧から気に入ったものに投票してください」などがあります。

民族の「民」は権力や官位のない普通の人や一般の人々を表し、「族」は祖先を同じくする者の集団は種類を同じくするものの集まりを表します。民族とは、言語や宗教あるいは政治などの文化内容の大部分を共有し、集団帰属意識によって結ばれた集団を意味します。

表現方法は「民族自決」

民族を用いた日本語には「民族自決」があります。民族自決とは、各民族はその政治的運命をみずから決定する権利をもち、他民族による干渉を認めないとする主義を意味します。人権の一つとも考えられ、1950年の国連総会で基本的人権として認められました。

民族の類語

民族の類語・類義語としては、同一言語・同質の文化を共有する比較的小さな民族的集団を意味する「種族」、 一定の地域に住み共通の言語や宗教などを持つ共同体を意味する「部族」、多民族国家における少数民族集団を意味する「エスニックグループ」などがあります。

人種の例文

1.世界の人口でみた黄色人種の割合は、決して少ないものではありません。
2.モンゴリアンという概念は、人類を五大人種に分けたことで広まりました。
3.なぜアメリカは人種差別に敏感であるかを、正確に説明できる人はあまりいません。
4.日本人とアメリカ人の人種に対する考え方は、水と油とのように相容れないものがあります。
5.私達のような人種と富裕層とでは、お金の使い方が全く違います。

この言葉がよく使われる場面としては、共通の遺伝的特徴を持つ人の集団、人を生活習慣や気質の違いによって分けたものを表現したい時などが挙げられます。

例文3にある「人種差別」とは、人種の違いによって差別されることを意味します。「人種問題」と呼ばれることもあります。

民族の例文

1.世界の民族一覧を調べてみて、人類の多様性が実に面白いと思いました。
2.日本は単一民族国家と言われていますが、実際にはいくつかの民族集団があります。
3.ゲルマン民族が話していた言語が、英語の基礎になっていると考えられています。
4.民族問題はなぜ起こるのかを、小学生向けに簡単にまとめてみました。
5.多民族国家である中国では、55の少数民族が公式に認められています。

この言葉がよく使われる場面としては、同じ文化を共有し、生活様態を一にする人間集団を表現したい時などが挙げられます。

例文5にある「多民族国家」とは、いくつもの民族から構成される国家を意味します。支配的な多数民族と多くの少数民族からなる場合が多くあります。

人種と民族という言葉は、どちらも「人間の分類」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、遺伝的な特徴にもとづいた分類を表現したい時は「人種」を、文化的あるいは社会的な分類を表現したい時は「民族」を使うようにしましょう。

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