似た意味を持つ「洗脳」(読み方:せんのう)と「催眠術」(読み方:さいみんじゅつ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「洗脳」と「催眠術」という言葉は、どちらも「人の精神に働きかける手法」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
洗脳と催眠術の違い
洗脳と催眠術の違いを分かりやすく言うと、洗脳とは強制的に主義や思想を変えること、催眠術とは本人の同意の上で暗示をかけることという違いです。
一つ目の洗脳を使った分かりやすい例としては、「自分が洗脳されるとは思わなかった」「ホストに洗脳された女性たちを救いたい」「インターネットで洗脳の方法を調べる」「カウンセリングで洗脳を解く」などがあります。
二つ目の催眠術を使った分かりやすい例としては、「こんなに簡単に催眠術にかかるとは思わなかった」「友達と話題の催眠術カフェに行きました」「五円玉を見ているうちに催眠術にかかったようだ」「催眠術師のイラストをダウンロードする」などがあります。
洗脳と催眠術という言葉は、どちらも他者の意識や精神に働きかける手段を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
洗脳とは、特異な環境のもとで、相手の信念や価値観を根本から書き換えることを意味します。多くの場合、暴力や恐怖の煽りなどを利用して強制的に特定の思想を植え付けます。比較的長い時間をかけて行われ、相手の判断力を鈍らせるものです。
催眠術とは、相手を特殊な意識の状態にして、人工的に暗示にかかりやすくする方法です。催眠療法など、心理療法として病気の治療や精神病理の研究などにも利用されています。基本的には、本人の同意のもとで行われ、短時間で意識を変化させる効果があります。
つまり、洗脳とは強制的に主義や思想を変える手法であり、催眠術とは本人の意思を尊重しながら暗示をかける手法です。そのため、洗脳はネガティブな意味で使用され、催眠術はポジティブな意味で用いられることが多くあります。
洗脳を英語にすると「brainwashing」「brain washing」となり、例えば上記の「洗脳される」を英語にすると「be brainwashed」となります。一方、催眠術を英語にすると「hypnosis」「mesmerism」となり、例えば上記の「催眠術にかかる」を英語にすると「be hypnotized」となります。
洗脳の意味
洗脳とは、その人の主義や思想を根本的に改めさせることを意味しています。
その他にも、「共産主義社会における思想改造」の意味も持っています。
「ママ友に洗脳されるとは思わなかった」「当時の私は元カレに洗脳されかけていた」「あなたが洗脳されやすい人かどうか診断します」などの文中で使われている洗脳は、「人の主義や思想を根本的に改めさせること」の意味で使われています。
一方、「中国共産党が捕虜に洗脳を施していた」「洗脳の手段として自己批判を強要する」「嘘と洗脳で文化大革命を起こした」などの文中で使われている洗脳は、「共産主義社会における思想改造」の意味で使われています。
洗脳とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ちますが、一般的には「その人の主義や思想を根本的に改めさせること」の意味で用いられています。洗脳の「洗」は汚れをあらい清めること、「脳」は頭の働きを表す漢字です。
洗脳の語源は、中国語に由来します。第二次世界大戦後の中国で、反革命分子とされた人々に対して行なった、精神的または物理的圧迫による思想改造の工作を「洗脳」と言いました。日本には、それを英語で直訳した「brainwashing」が伝来し、「洗脳」と呼ばれるようになりました。
洗脳の対義語・反対語としては、身体や心の束縛や制限などを除いて自由にすることを意味する「解放」などがあります。
洗脳の類語・類義語としては、案内することや指導を与えることを意味する「導き」、教え示すことや指導することを意味する「指南」、心理学的な資料や経験に基づいて援助することを意味する「カウンセリング」、精神を管理制御することを意味する「マインドコントロール」などがあります。
催眠術の意味
催眠術とは、暗示をかけて催眠状態に引き入れる技術を意味しています。
催眠術を使った分かりやすい例としては、「彼は世界的にも有名な催眠術師です」「催眠術の仕組みを教えてもらいました」「アメリカ人に英語で催眠術にかける」「会社の同僚と催眠術の体験をしてきました」などがあります。
その他にも、「催眠術にかかりやすい人は性格が素直です」「東京に催眠術を学べる教室があります」「催眠術が効かないタイプのポケモンもいます」「どんな人でも本当に催眠術にかかるのだろうか」などがあります。
催眠術の「催眠」は、薬や暗示などにより人為的に眠けを催させたり睡眠に似た状態にすることを表します。目的を遂げるための手段や方法を表す「術」と結び付き、催眠術とは、暗示などを用いて相手を特殊な催眠状態へと誘導する技術を意味する。
催眠術は「催眠法」とも言い、自分自身に術を施す「自己催眠」と、他人を催眠させる術を「他者催眠」に分けられます。また、集まった人々に対して広く催眠をかけることは「集団催眠」と呼び、マジックショーなどで行われています。
催眠術の類語・類義語としては、不思議なわざを意味する「奇術」、ある刺激や作用に対し無批判に受入れてしまう心的過程を意味する「暗示」、患者を催眠状態にすることによって行う心理療法を意味する「催眠療法」などがあります。
洗脳の例文
この言葉がよく使われる場面としては、その人の主義や思想を根本的に改造することを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、洗脳という言葉はマイナスのイメージで使用されることがほとんどです。
催眠術の例文
この言葉がよく使われる場面としては、正常状態から催眠状態にさせる技術方法を表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「催眠術師」とは、言葉や動作などで働きかけて、相手を催眠状態にさせる専門家を指します。
洗脳と催眠術という言葉は、どちらも「人の精神に働きかける方法」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、強制的に主義や思想を変える方法を表現したい時は「洗脳」を、本人の同意のうえで暗示をかける方法を表現したい時は「催眠術」を使うようにしましょう。