【逆境】と【苦境】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「逆境」(読み方:ぎゃっきょう)と「苦境」(読み方:くきょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「逆境」と「苦境」という言葉は、苦しい境遇という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




逆境と苦境の違い

逆境と苦境の意味の違い

逆境と苦境の違いを分かりやすく言うと、逆境は長期的に苦しい状況を表現する時に使い、苦境は一時的に苦しい状況を表現する時に使うという違いです。

逆境と苦境の使い方の違い

一つ目の逆境を使った分かりやすい例としては、「逆境に打ち勝ち先に進むことが出来た」「私には逆境の中をめげずに生き抜く力がある」「逆境に負けた時の言い訳ばかり思いつく」などがあります。

二つ目の苦境を使った分かりやすい例としては、「苦境に陥ることで強くなることが出来るだろう」「この状態であれば苦境から逃れられる」「苦境にある友人に同情して相談に乗っていた」などがあります。

逆境と苦境は似たような意味を持つ言葉ですが、前者は長期的、前者は一時的な状態を表すため、それぞれを置き換える表現ができる場合とできない場合があります。

上記の例で言えば、「逆境でもめげない」という表現は「苦境でもめげない」に置き換えることはできず、「苦境に陥る」という表現は「逆境に陥る」に置き換えることはできません。

逆境と苦境の英語表記の違い

逆境を英語にすると「adverse circumstances」「adversity」となり、例えば上記の「逆境に打ち勝つ」を英語にすると「win a victory over adversity」となります。

一方、苦境を英語にすると「a painful position」「distress」となりますが、例えば上記の「苦境に陥る」を英語にすると「get into trouble」や「get into water」となります。

逆境の意味

逆境とは

逆境とは、苦労の多い境遇や不運な境遇を意味しています。

表現方法は「逆境を乗り越える」「逆境を力に変える」「逆境に立ち向かう」

「逆境を乗り越える」「逆境を力に変える」「逆境に立ち向かう」などが、逆境を使った一般的な表現方法です。

逆境の使い方

逆境を使った分かりやすい例としては、「逆境に強い人には共通点があるようだ」「逆境を生き抜くことができないものもいる」「エンターテイナーなどは逆境でこそ人一倍輝く職業であるだろう」「逆境から立ち直る時間が非常に大切」などがあります。

逆境を使った格言

有名な経営者である松下幸之助の格言の一つには「逆境もよし、順境もよし。要はその与えられた境遇を素直に生き抜くこと」というものがあり、彼は他にも逆境に関する言葉を残しています。

「逆境指数」の意味

逆境を使った言葉として、「逆境指数」と呼ばれる指標があります。

逆境指数とはAQとも呼ばれ、知能指数(IQ)や感情指数(EQ)と並べられ、逆境に陥った際の心の強さやストレス耐性を表すための数値です。コントロール、責任、影響の範囲や持続時間といった要素からレベルを決めるため、企業の人材育成などで注目されています。

逆境の対義語

逆境の対義語・反対語としては、物事がうまくいっている望ましい状況を意味する「順境」があります。

逆境の類語

逆境の類語・類義語としては、辛いことや苦しい体験を意味する「憂き目」、辛く苦しい思いをすることや苦しみを意味する「辛苦」(読み方:しんく)、悲しい境遇や不幸な身の上を意味する「悲境」などがあります。

逆境の逆を使った別の言葉としては、事の成り行きなどがそれまでとは反対になることを意味する「逆転」、主君に背く心を意味する「逆心」、激しい怒りや悲しみなどのために、頭に血が上ることや取り乱すことを意味する「逆上」などがあります。

苦境の意味

苦境とは

苦境とは、苦しい境遇や苦しい立場を意味しています。

表現方法は「苦境の中」「苦境に陥る」「苦境に立つ」

「苦境の中」「苦境に陥る」「苦境に立つ」「苦境にある」「苦境を乗り越える」などが、苦境を使った一般的な言い回しです。

苦境の使い方

苦境を使った分かりやすい例としては、「苦境に挑む姿を部下に見せることで育ってくれるだろう」「苦境から救い出すために彼は出張してきてくれた」「子どもたちは苦境に立たされたが上手く乗り切った」「財政難で苦境にあえぐ企業が増えた」などがあります。

苦境を使った格言

ノーベル物理学賞で有名なアインシュタインの格言の一つには「チャンスは、苦境の最中にある」というものがあり、彼は他にも苦境に関する言葉を残しています。

苦境の対義語

苦境の対義語・反対語としては、楽しい境遇や安楽な境地を意味する「楽境」(読み方:らっきょう)があります。

苦境の類語

苦境の類語・類義語としては、不幸なもしくは苦痛な状態を意味する「痛事」(読み方:いたごと)、追い詰められて逃げ場のない苦しい状態や立場を意味する「窮地」、耐え忍ぶためあるいは克服するために努力が必要である様子を意味する「難局」などがあります。

苦境の苦を使った別の言葉としては、楽しいことと苦しいことを意味する「甘苦」(読み方:かんく)、相手が強く不利な状況で苦しい戦いをすることを意味する「苦戦」、不快感や戸惑いの気持ちを持ちながらも仕方なく笑うことを意味する「苦笑」などがあります。

逆境の例文

1.逆境が人を強くするとはまさにその通りで、先に苦労をしておいたからか今がやや楽になった気がする。
2.適度な逆境がなければ発展したコンテンツはここまでのものにならなかった可能性がある。
3.今後さらなる発展を望む場合は、逆境に向き合うためにいろいろと準備が必要になってくると思う。
4.私たちは逆境から学ぶことが多くあり、それはビジネスだけでなく日常生活や人間関係でもいえることである。
5.余裕がまったくないよりはいいが、逆境を楽しんでいる人がいるのはあまり落ち着かない。
6.当社の創業者は、戦後の物資不足や食糧難といった逆境をものともせず、精力的に働いて、ここ蔵前に駄菓子の問屋を開いた。
7.周りには「お前には不可能だ」という意見ばかりで出来るわけがないと言われたが、逆境に打ち勝ち実現することが出来た。
8.わたしたちは逆境に直面した時に常に先人たちがどう立ち向かったのかを学ぶようにしている。
9.彼はいかなる逆境でも挫けず、また皆に心配をかけないようユーモアもわすれない男でもあった。
10.わたしはあまり逆境に強い人間ではなかったので、長い間不遇な時期を過ごしたように思う。

この言葉がよく使われる場面としては、長期的に苦労が多い状態を意味する時などが挙げられます。

例文5以外は長期的な困難を意味したり、何度か苦難を経験したことを示唆しているため苦境に置き換えることはしません。

苦境の例文

1.苦境を乗り越えた時、自分の中に新しい未来のビジョンが広がった。
2.この世で苦境に直面しない人は誰一人いないが、自身の苦境を感じさせない人は尊敬する。
3.企業の売り上げとしては苦境に立たされている状態であるため、新しいやり方で展開していく必要がある。
4.大幅な人員削減を行うことで苦境を切り抜けることもできるが、それは最後の手段としておきたい。
5.苦境の企業がそれぞれ手を取り合って、同じ産業を盛り上げていくことになった。
6.結婚を前にして思うことは、苦境をただ一緒に嘆くのではなく、苦境の中から前進するきっかけを見つけることが出来るパートナーでありたいということだ。
7.なかなか仕事が覚えられず苦境に立たされたが工夫と努力で乗り越えることが出来た。
8.カフェをオープンした当初は売上が思わしくなく、一時は苦境に立たされるも、今ではテレビで紹介されるまでに繁盛している。
9.21世紀に入ってそれまで世界を席巻していた日本の家電メーカーは外国メーカーに押されて苦境に立たされた。
10.わたしはかねてからの恩人だった同期の苦境を救うために一肌脱ぐことになった。

この言葉がよく使われる場面としては、一時的に苦労をしている状態を意味する時などが挙げられます。

例文1以外は一時的な苦難を意味するため、逆境に置き換えることは出来ませんが、例文1の苦境を逆境に置き換えた場合は、その時だけ発生した困難ではなく、今までいくつも困難に立ち向かってきたという意味を含むため注意しましょう。

逆境と苦境どちらを使うか迷った場合は、苦労が多く長いこと苦しい境遇が続いている状態を表す場合には「逆境」を、一時的に苦しく困難な境遇に陥っている状態を表す場合は「苦境」を使うと覚えておけば間違いありません。

言葉の使い方の例文
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