似た意味を持つ「不束者」(読み方:ふつつかもの)と「未熟者」(読み方:みじゅくもの)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「不束者」と「未熟者」という言葉は、どちらも不十分であることを表すという共通点があり、本来の意味は違いますが混同して使われる傾向があります。
不束者と未熟者の違い
不束者と未熟者の意味の違い
不束者と未熟者の違いを分かりやすく言うと、変えられない元々の性格か、発展する可能性がある性格かの違いです。
不束者と未熟者の使い分け方
不束者という言葉は、思慮深さや能力などが足りていない人や、気遣いが行き届かない人という意味を持っています。また、教養がない様子や、大雑把でまとまりがない様子なども示します。
不束という言葉の起源は古く、源氏物語などの中にも「不束」という表現が出てきます。当時の不束という言葉は「太束」という字で書いていて、太くて頑丈であり立派である様子を示していました。
しかし、時代が変化するにつれて、太くて頑丈である様子が与える印象が変化しました。太くて頑丈であるということは、立派なことではなく、不格好で野暮であるという印象を持たれるようになりました。
そこから太束という漢字ではなく、不格好などの「不」という字を取って「不束」と表記されるようになりました。
不束者とは、その人の気質そのものを指す言葉であり、性格のようなものです。今後、改善されたり発展したりするようなものではなく、その人自身に根付いているものであると言えます。
現代での不束とは、自分で自分に対して謙遜の意味をこめて使ったり、親族や会社の上司などが子供や部下を外部へ紹介する際に、謙遜として使ったりするのが主流です。同僚など立場が同じ人が「あの人は不束な人だね」などと使うのは間違っています。
あくまで、自分が自分に対して謙遜を込めて使うか、目上の人や立場が上の人が下の者を紹介する場面などで謙遜をして使う場合にのみ「不束者」という言葉を使います。
一方で、未熟者という言葉は、ある程度の知識はあるけれど、他の人たちと比べればまだまだ知識が足りていないと感じている時などに使う言葉です。不束者と同じで、自分を謙遜をして表現したい時に使います。
不束と違う点は、未熟というのは、これから成熟する可能性があるという意味を含んでいることです。不束は、今後も変化の展望が見えないのに対し、未熟というのは成長が見込めることを意味しています。
未熟者とは、今はまだ未熟ですが、今後は知識を蓄えて成熟していきますので、そのためにもご指導のほど、お願いします、という意味で使われる言葉です。
また、未熟者という言葉は、ある程度の知識が備わっている人が使う言葉です。全く知識や経験がない場合には「未熟」という言葉を使うことは出来ません。
例えば、新入社員が入社の挨拶などで「未熟者ですが……」と使うのは、間違っています。新入社員というのは、まだ入ったばかりで勤務経験がない状態なので、未熟者という言葉を使うとかえって図々しいと思われてしまう可能性があります。
まだなにもわかっていないような状況の場合は「右も左もわからない状態ですが……」や「何もわからない状態でご迷惑をおかけしますが……」などという挨拶をするのが良いでしょう。
不束者と未熟者、どちらの言葉を使ったら良いのか迷った場合は、元の性格的な部分で至らない点があることを言いたい場合は「不束者」と表現し、今後発展する可能性があることを伝えたい場合は「未熟者」と表現するようにします。
不束者と未熟者の英語表記の違い
不束者を英語にすると「unmarried person」「Unbalanced」「rude」となり、「不束者ですがよろしくお願いします」を英語にすると「I’m an unmarried person, but I look forward to working with you」となります。
一方の未熟者を英語にすると「inexperienced person」「novice」となり、「未熟者ですがよろしくお願いします」を英語にすると「I’m an inexperienced person, but thank you」となります。
不束者の意味
不束者とは
不束者とは、元々の思慮深さや能力が足りていないことを意味しています。
表現方法は「不束者ですが」「不束者ではございますが」「不束者ではありますが」
「不束者ですが」「不束者ではございますが」「不束者ではありますが」などが、不束者を使った一般的な言い回しです。
不束者の使い方
不束者を使った分かりやすい例としては、「不束者ですが末永くよろしくお願い致します」「不束者の娘ですがよろしくお願いします」「不束者ではございますが、今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます」などがあります。
不束者の語源
不束者の「束」という字は、たばねる、引き締めてひとつにまとめるという意味を持った言葉です。不束とは、まとまっていない、引き締まっていないという意味になり、転じて行き届いていない様子や、思慮深さが足りない様子を意味するようになりました。
不束というのは、その人の性質を表すもので、今後も不束なままである可能性があるという意味です。
不束者は謙遜を表す言葉
不束者という言葉は、謙遜を表す言葉であり、自分で自分のことを評価する場面や、上司などが部下を外部へ紹介する場面、プロポーズや結婚する旨を親に伝える場面などで使われる言葉です。
不束という言葉は、「努力します」や「尽力いたします」などのプラスの意味を持つ言葉とセットで使われる場合が多いです。
「不束者ですが」の意味
結婚式などで耳にする「不束者ですが」というのは、このまま変化しない可能性もありますが、ありのままを受け止めてくださいという意味になります。
不束者の類語
不束者の類語・類義語としては、配慮が出来ない人を意味する「不調方者」(読み方:ぶちょうほうもの)があります。
不束者の「束」という字を使った単語としては、混乱していたものがまとまって収まりがつくことを意味する「収束」、志を同じくする者が団結することを意味する「結束」、守るように定めたきまりを意味する「約束」などがあります。
未熟者の意味
未熟者とは
未熟者とは、未だ発展途上であるけれど、今後成長の余地があることを意味しています。
表現方法は「未熟者ですが」「未熟者ではございますが」「未熟者ながら」
「未熟者ですが」「未熟者ではございますが」「未熟者ながら」などが、未熟者を使った一般的な言い回しです。
未熟者の使い方
未熟者を使った分かりやすい例としては、「未熟な私をいつも支えて下さり、本当にありがとうございました」「まだまだ未熟な二人でございますが、今後とも変わらぬ御指導御鞭撻を賜りますよう心からお願い申し上げます」などがあります。
未熟者の語源
未熟というのは、まだ熟していないという意味を持つ言葉です。つまり、今後は熟していく予定である、熟していくだろうと思われるということを意味する言葉とも言えます。
また、未熟というのは、知識がなにもない状態の時には使えない言葉でもあります。熟していくためには、ある程度「実」がついている必要があるからです。
「未熟者ですが」の意味
基本的な知識はあるけれど、まだ成熟するのには足りない、不足があると感じているような場合に未熟者という言葉を使います。
未熟者ですがという言葉は、「ご指導願います」や「ご鞭撻のほどをお願いします」などの教えを求める言葉と一緒に使われることが多いです。
自分よりも知識や経験が豊富な人に対して「自分はまだまだ未熟者ですので」と謙遜の前置きをした後に「ご指導のほど、よろしくお願いいたします」とお願いをするという形で使われます。
未熟者の類語
未熟者の類語・類義語としては、おろかな人間を意味する「愚か者」「愚者」(読み方:ぐしゃ)、一人前の半分の働きしか出来ない人を意味する「半人前」、新しく加わった人を意味する「新人」、経験が浅い人を意味する「青二才」などがあります。
未熟者の「熟」という字を使った単語としては、肉体や精神の発育が普通より早いことを意味する「早熟」、人の心や身体などが十分に成長することを意味する「成熟」、物事に慣れて手際よく上手にできることを意味する「熟練」などがあります。
不束者の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分自身や身内などについて謙遜して表現する時などが挙げられます。
例文1のように、結婚式のスピーチなどで使われることが多く「不束な娘ですが」「不束者ですが」などと前置きする際に使用します。別段、女性にだけ使用される言葉という決まりはなく、男性に対しても「不束者」という言葉は使うことが出来ます。
不束という言葉は、その人の性格や元から備わっている性質について表現する言葉です。自分自身や身内などの能力を謙遜して表現したい場合に使われます。親が自分の子供などに対して使う場合が多く、自分の子供を控えめに表現するために使われます。
この言葉は、あえて自分や自分の身内を控えめに低く表現する際に使われるものであり、他人からの目線で「あの人は不束者よね」などのように表現することは出来ません。
他者評価ではなく、あくまで自己評価、身内評価の言葉であることを覚えておきましょう。
未熟者の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ビジネスシーンなどで、上司が部下を外部の人に紹介する時や、先輩社員から指導をしてもらう時などが挙げられます。
未熟というのは、一部知識はあるけれど、精通するまでには達していないという意味を持って謙遜をしている表現です。知識が全くない場合には「未熟者」という言葉は使いません。ある程度の経験を積んだ後に使える言葉です。
熟してはいないけれど、実は備わっているという場合に「未熟者」という言葉を使います。未熟者という言葉は、今後成熟するという希望を含んだ言葉でもあります。「これから成長をしていくのでご指導のほどお願いします」という意思を含めた表現です。
新入社員などの挨拶では「未熟者」という言葉は使わない方が無難です。まだ実務を経験していないうちに「未熟者ですが」という言葉を使ってしまうと、知識があると勘違いしている新人だと思われてしまう可能性があります。
「未熟者」という言葉は、少しでも経験がある状態で使う表現であるということを覚えておくようにしましょう。