同じ「きょうい」という読み方の「脅威」と「驚異」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「脅威」と「驚異」という言葉は、同音の言葉ですが、意味は大きく異なりますのでご注意下さい。
脅威と驚異の違い
脅威と驚異の意味の違い
脅威と驚異の違いを分かりやすく言うと、脅威はおそろしいことを表現する時に使い、驚異はおどろくことを表現する時に使うという違いです。
脅威と驚異の語源の違い
脅威の脅にはおどす、おびやかすという意味があり、脅威の威には人を恐れさせる強大な力という意味があります。そのため脅威という言葉は、対象が他に危害を与えるのではないかというマイナスイメージを付与します。
一方、驚異の驚にはおどろく、おどろかすという意味があり、驚異の異には普通と違って珍しいという意味があります。そのため驚異という言葉は、驚くほど素晴らしいというプラスイメージを付与します。これらが明確な違いです。
脅威と驚異の英語表記の違い
脅威を英語にすると「menace」「threat」となり、例えば「社会に対する脅威」を英語にすると「a menace to society」となります。
一方、驚異を英語にすると「miracle」「marvel」「wonder」となり、例えば「科学の驚異」を英語にすると「a scientific miracle」となります。
脅威の意味
脅威とは
脅威とは、強い力や勢いでおびやかすことやおびやかされて感じる恐ろしさを意味しています。
表現方法は「脅威を感じる」「脅威にさらされる」「脅威となる」
「脅威を感じる」「脅威にさらされる」「脅威となる」などが、脅威を使った一般的な表現方法です。
脅威を使った言葉として、「脅威アピール」「脅威論」があります。
「脅威アピール」の意味
一つ目の「脅威アピール」とは、害や危険に対する対処行動の注意を聞き入れなかった場合、最終的にどのような事態になってしまうのかを伝える説得的なメッセージを指します。
煙草を吸い続けた場合の人体や、飲酒運転をしたことで起きた交通事故による被害などをアピールし、怖さゆえに思わず煙草をやめてしまう、車を運転する前には飲酒を行わないなどの効果を期待しているものが「脅威アピール」です。
「脅威論」の意味
二つ目の「脅威論」とは、急激に増大した経済力や軍事力が世界にとって重大な脅威となる警戒論を指し、主に中国に対して使われ「中国脅威論」と言われています。
ヨーロッパによる分割統治を経て第二次世界大戦後は改革開放が進んだ中国では、軍事による学生運動の鎮圧や地下核実験の再開などが行われることとなりました。
さらに尖閣諸島を含めた東シナ海の大半と南シナ海の大半を中国のものとする領海法を定めたことで、東南アジアでは中国脅威論が広がります。後々中国は平和と発展を強調し、中国脅威論の払拭に努めることとなります。
脅威の類語
脅威の類語・類義語としては、おそれることや怖いと思うことを意味する「恐怖」、人をおどして恐れさせることを意味する「恫喝」、威力をもっておどすことを意味する「威嚇」、相手の弱みなどにつけこんでおどすことを意味する「恐喝」などがあります。
脅威の威の字を使った別の言葉としては、どなったりして人を脅すことを意味する「威喝」、温かい情けと厳しい態度を意味する「恩威」、威力や気勢を他に示すことを意味する「示威」(読み方:じい)、厳かで徳の高いことを意味する「威徳」などがあります。
驚異の意味
驚異とは
驚異とは、驚き不思議がることや驚くほど素晴らしい事柄や現象を意味しています。
表現方法は「自然の驚異」「驚異的」「驚異の目を見張る」
「自然の驚異」「驚異的」「驚異の目を見張る」などが、驚異を使った一般的な表現方法です。
驚異の意味を含む四字熟語
驚異の意味を含んだ言葉として、「驚天動地」があります。「驚天動地」とは、世間を非常に驚かせることや世間をあっと驚かせる事件および出来事を意味する四字熟語です。
中国王朝の唐の時代の詩人である白居易が有名な詩人李白の墓参りをした際、荒れ果てていたことを嘆き作られた詩で、天地を揺るがすほどの詩人であったと李白を形容する時に使ったのが「驚天動地」です。
驚異の類語
驚異の類語・類義語としては、常識で考えて起こりえない不思議な現象などを意味する「奇跡」、超人間的な技術や行為を意味する「神業」、怪しくて不思議なことを意味する「怪奇」、すばらしい出来事などに驚き感心することを意味する「驚嘆」などがあります。
驚異の驚の字を使った別の言葉としては、非常に驚くことを意味する「驚愕」(読み方:きょうがく)、思いがけない出来事に驚き喜ぶことを意味する「驚喜」、おどろくことやびっくりすることを意味する「吃驚」(読み方:きっきょう)などがあります。
脅威の例文
この言葉がよく使われる場面としては、おそろしいことや恐ろしいと感じる気持ちを意味する時などが挙げられます。
例文2の「脅威に晒される」とは、危険な目にいつ遭うかわからない状態にあることを意味する慣用表現です。
驚異の例文
この言葉がよく使われる場面としては、驚くような出来事や驚くくらい素晴らしいことを意味する時などが挙げられます。
例文1と例文2の「驚異的」は名詞である驚異に接尾辞の的がついて、驚くほどすばらしい様子を表す言葉です。驚異であるものが複数存在する場合は、例文4や例文5のように「驚異の」という使い方はできないため、驚異的を使うようにしましょう。
例文3の「目を見張る」とは、怒ったり驚いたり感心したりして目を大きく見開く様子を表す慣用句です。そのため「驚異の目を見張る」という表現をすることで、驚くほど素晴らしいものに限定して使うことが出来ます。
脅威と驚異どちらを使うか迷った場合は、おそろしいことや恐怖心を表す場合には「脅威」を、おどろくことや驚くほど素晴らしいことを表す場合は「驚異」を使うと覚えておけば間違いありません。