似た意味を持つ「平仄」(読み方:ひょうそく)と「辻褄」(読み方:つじつま)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「平仄」と「辻褄」という言葉は、どちらも「物事の道理」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
平仄と辻褄の違い
平仄と辻褄の意味の違い
平仄と辻褄の違いを分かりやすく言うと、平仄とは物事の道理だけでなく漢字の平声と仄声を表し、辻褄とは物事の道理のみを表すという違いです。
平仄と辻褄の使い方の違い
一つ目の平仄を使った分かりやすい例としては、「近体詩には平仄と韻律に厳格なルールがあります」「漢字の平仄と韻をチェックします」「文章の平仄を合わせる」「前言と平仄が合わない内容になっている」「嘘をついて平仄を合わせるのに苦労する」などがあります。
二つ目の辻褄を使った分かりやすい例としては、「辻褄が合うように話を取り繕う」「作り話の辻褄を合わせるのに苦労する」「英語で話すと辻褄が合わなくなる」「辻褄が合うように嘘を嘘で重ねる」などがあります。
平仄と辻褄の使い分け方
平仄と辻褄という言葉は、どちらも「物事の道理」の意味を持ち、話や考え方などに筋が通って前後が矛盾なくつながることを表します。上記の例文にある「平仄が合わない内容」「作り話の辻褄を合わせる」の平仄と辻褄は、互いに置き換えることができます。
また、平仄という言葉は、漢字の平声と仄声という韻による区別を意味します。辻褄にはこの意味がないため、上記の「漢字の平仄と韻をチェックする」の平仄は、辻褄に置き換えることができません。この点が、平仄と辻褄という言葉の明確な違いになります。
平仄と辻褄の英語表記の違い
平仄を英語にすると「tone patterns」となり、例えば上記の「平仄と韻律」を英語にすると「tone patterns and meter」となります。一方、辻褄を英語にすると「coherence」「consistency」となり、例えば上記の「辻褄が合う」を英語にすると「be consistent」となります。
平仄の意味
平仄とは
平仄とは、漢字の平声と仄声を意味しています。
その他にも、「漢詩の近体詩における、平声字と仄声字の規則的な配列。平仄法」の意味も持っています。
平仄の読み方
平仄の読み方は「ひょうそく」です。誤って「へいそく」などと読まないようにしましょう。
平仄の使い方
「同じ漢字でも使用する時には平仄に注意してください」「漢詩に使われる漢字は平仄のいずれかに分けられます」「平仄確認表を使って漢詩を学習する」などの文中で使われている平仄は、「漢字の平声と仄声」の意味で使われています。
一方、「平仄を合わせて漢詩を作る」「下手な平仄あわせを聞かされる」「提出する前に資料の平仄をとる」「平仄が合わない話は信用できない」「規定の記載との平仄を合わせる」などの文中で使われている平仄は、「平声字と仄声字の規則的な配列」の意味で使われています。
平仄とは、漢詩の声の出し方で、平声と仄声を意味する言葉です。また、漢詩において、音律上の調和を目的とした句中における平字と仄字の配列のルールも意味します。漢詩を作る時にルールに合わせて平字と仄字を配することから、現在では、物事の筋道や道理を表す言葉として用いられています。
平仄はビジネスシーンやお役所言葉として使われる
平仄という言葉は、ビジネスシーンやお役所言葉として使われています。
「資料の平仄をとる」の意味
上記の例文にある「資料の平仄をとる」とは、複数の資料に矛盾がないようにすることや、資料の体裁や書式を合わせることを意味します。
「平仄を合わせる」の意味
また、「平仄を合わせる」とは、順序や辻褄を合わせることを意味する言い回しです。
表現方法は「平仄を図る」「平仄が取れる」「平仄が合わない」
上記以外では「平仄を図る」「平仄が取れる」「平仄が合わない」などが、平仄を使った一般的な言い回しです。
平仄の類語
平仄の類語・類義語としては、漢字の韻による4種の区別を意味する「四声」、話すときの音声や文章などで調子を上げたり下げたりすることを意味する「抑揚」、漢字の表す1音節のうち頭子音を除いた部分の声調の違いによって四声に分類した区別を意味する「韻」などがあります。
辻褄の意味
辻褄とは
辻褄とは、合うべきところがきちんと合う物事の道理を意味しています。
辻褄の使い方
辻褄を使った分かりやすい例としては、「辻褄が合わない話をする人だ」「話の辻褄が合うように嘘をついてしまった」「辻褄を合わせるには正直に話すしかないだろう」「英語の作文の辻褄が合わない」などがあります。
その他にも、「騙しとおすには辻褄合わせが必要だ」「彼女の話は辻褄が合っている」「辻褄が合うようにデータを改ざんした」「事件の結果と考察の辻褄が合わない」「辻褄が合うように文章の前後を整える」などがあります。
辻褄の由来
辻褄という言葉の由来は、着物にあります。「辻」は着物の縫い目が十字に合う部分を指し、「褄」は着物の裾の左右両端の部分のことです。「辻」も「褄」もきちんと合わせるべき部分なので、辻褄とは、合うべき所が正しく合うはずの物事の道理を表現するようになりました。
「辻褄が合う」の意味
上記の例文にある「辻褄が合う」とは、すじみちがよく通っているさま、前後が矛盾しないで合うことを意味します。「辻褄が合わない」のように、打消しを伴って用いられることが多くあります。
表現方法は「辻褄を合わせる」「辻褄が合わない」「辻褄合わせ」
上記以外では「辻褄を合わせる」「辻褄が合わない」「辻褄合わせ」などが、辻褄を使った一般的な言い回しです。
辻褄の類語
辻褄の類語・類義語としては、物事がそうなっているわけを意味する「筋道」、物事の筋道や道理を意味する「条理」、物事の道理や考えや話などの筋道を意味する「理路」、思考や判断などの展開の順序を意味する「道筋」などがあります。
平仄の例文
この言葉がよく使われる場面としては、漢字の平声と仄声、漢詩の近体詩における平声字と仄声字の規則的な配列を表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2の文中にある平仄は、本来の意味で使われており、漢字の平声と仄声を表します。例文3から例文5にある平仄は、本来の意味が転じたもので、物事の道理や条理を表します。このように、平仄という言葉は、現在では、辻褄とほぼ同じ意味で使われています。
辻褄の例文
この言葉がよく使われる場面としては、合うべき所がきちんと合うはずの物事の道理を表現したい時などが挙げられます。
例文2の「辻褄を合わせる」の意味は、理屈を合わせることや、工作して前後や二つの物事が矛盾しないようにすることです。
平仄と辻褄という言葉は、どちらも「物事の筋道」を表します。さらに平仄には、漢字の平声と仄声という意味もあることを覚えておきましょう。