似た意味を持つ「経緯」(読み方:けいい)と「経過」(読み方:けいか)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「経緯」と「経過」という言葉は、どちらも物事の移り変わりを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
経緯と経過の違い
経緯と経過の意味の違い
経緯と経過の違いを分かりやすく言うと、経緯とは物事の流れを事情や内容から捉えること、経過とは時間の流れから捉えることの違いです。
経緯と経過の使い方の違い
一つ目の経緯を使った分かりやすい例としては、「事件の経緯を詳しく教えてください」「これまでの経緯をすべて話します」「謝罪が必要になった経緯」「経緯報告書のテンプレートを使う」などがあります。
二つ目の経過 を使った分かりやすい例としては、「事件の経過を見守るしかなかった」「途中経過の状況を知りたい」「失礼のないよう経過伺いする」「経過措置が適用されます」「経過勘定項目を計上する」などがあります。
経緯と経過という言葉は、どちらも物事の移り変わりを表し、似たような表現をする言葉なのですが、意味は微妙に異なります。経緯は、物事の筋道やいきさつを意味します。一方の経過は、ある時間内の物事の進行や変化の具合を意味します。
「事件の経緯」と「事件の経過」の違い
上記の例の「事件の経緯」とは、事件が起きた原因や理由から、現状に至るまでの詳しい事件の事情や内容のことです。これが「事件の経過」となると、事件の一連の流れや事件の移り変わりの様子を表します。
つまり、経緯は物事の移り変わりを事情や内容から捉えることであり、経過は物事の移り変わりを時間の流れから捉えることを表しています。
経緯と経過の英語表記の違い
経緯を英語にすると「details」「particulars」「circumstances」となり、例えば上記の「事件の経緯」を英語にすると「the circumstances of the affair」となります。
一方、経過 を英語にすると「development」「progress」「course」となり、例えば上記の「事件の経過」を英語にすると「the development of an affair」となります。
経緯の意味
経緯とは
経緯とは、物事の筋道やいきさつを意味しています。
その他にも、経線と緯線または経度と緯度の意味も持っています。
表現方法は「経緯に至る」「経緯を経て」「経緯がある」
「経緯に至る」「経緯を経て」「経緯がある」などが、経緯を使った一般的な表現方法になります。
経緯の使い方
「問題発生の経緯を報告する」「差別に関する歴史的経緯を考える」「経緯書のフォーマットを作成する」「ことの経緯が分からない」などの文中で使われている経緯は、「物事の筋道やいきさつ」の意味で使われています。
一方、「経緯度について学校で習った」「経緯度から日射量を求める」「経緯台がついた大型望遠鏡を買った」などの文中で使われている経緯は、「経線と緯線または経度と緯度」の意味で使われています。
経緯の読み方
経緯には二つの読み方があり、「けいい」の他に「いきさつ」とも読みます。「けいい」は改まった場面や文章に使われ、「いきさつ」は話し言葉に使われる傾向があります。また、経緯と漢字表記されている場合、通常「いきさつ」ではなく「けいい」と読まれています。
経緯の語源
経緯という言葉は、上記の例のように複数の意味がある言葉ですが、一般的には「物事の筋道やいきさつ」の意味で使われています。時間軸を表す「経」と、織物の横糸を意味する「緯」が組み合わさり、物事の移り変わりを事情や内容から捉えることを表した言葉です。
「経緯報告書」の意味
経緯という言葉を用いた日本語には「経緯報告書」があり、何らかの問題やトラブルが起きた場合に経緯を報告するためのビジネス文書を意味します。同じようなビジネス文書に「顛末書」がありますが、顛末書は事態収束後に提出するものに対して、「経緯報告書」は事態進行中に提出されるものです。
経緯の類語
経緯の類語・類義語としては、事の最初から最後までの事情や一部始終を意味する「顛末」、今まで経過してきた状態や成り行きを意味する「次第」、物事の成り行きや結果を意味する「首尾」などがあります。
経緯の緯の字を使った別の言葉としては、赤道を零度として南北に地球を横に切る線の目盛りを意味する「緯度」、黄道を零度として南北に90度まで測る緯度を意味する「黄緯」などがあります。
経過の意味
経過とは
経過とは、ある時間内の物事の進行や変化の具合、成り行きを意味しています。
その他にも、時間が過ぎることの意味も持っています。
表現方法は「経過する」「経過報告」「経過状況」
「経過する」「経過報告」「経過状況」などが、経過を使った一般的な言い回しです。経過報告とは物事の進み具合を報告することを意味し、経過状況とは物事が始まってしばらく時間が経過してからの状況を意味します。
経過の使い方
「術後は経過観察となった」「術後の経過は良好です」「保育経過記録を読み返す」「経過地設定ができるポータブルカーナビ」「消費税率に関する経過措置」「経過措置医薬品を調べる」などの文中で使われている経過は、「ある時間内の物事の進行や変化のぐあい」の意味で使われています。
一方、「エクセルで経過年数を計算する」「法律用語の経過する日と経過した日は違う」「経過句がない短い曲だった」「四種類の経過勘定について勉強した」などの文中で使われている経過は、「時間が過ぎること」の意味で使われています。
経過の語源
経過という言葉は、時間軸を表す「経」と、時間がたつことを表す「過」が組み合わさり、時間が過ぎることを表します。転じて、ある事柄が時間にしたがってどのように進んできたかも意味し、日常生活やビジネスシーンで幅広く使われる言葉です。
「経過観察」の意味
上記の例の「経過観察」とは、状態や変化について定期的に確認することを意味します。特に、医療分野で使われる言葉で、手術や治療の後に積極的な対応はせず、予後をみるために定期的に診察を行うことを表す言葉です。
「経過措置」の意味
経過という言葉を用いた日本語には「経過措置」があり、特定の制度から新しく別の体制に移行する際に、その移行により発生する不利益を極力減らすために取られる一時的な措置や対応を意味します。この言葉は、消費税率移行や医薬品の扱い等に対して使われています。
経過の類語
経過の類語・類義語としては、時がたつにつれて状態が変化することを意味する「推移」、時の流れとともに移り変わることを意味する「変遷」、物事が次第に変化していく様子や過程を意味する「成り行き」などがあります。
経過の過の字を使った別の言葉としては、物事が変化し進行して結果に達するまでの道筋を意味する「過程」、見逃すことを意味する「看過」、行き来する人を意味する「過客」などがあります。
経緯の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事の筋道やいきさつ、経度と緯度を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4で使われている経緯は、物事の筋道やいきさつを意味します。経緯報告書は経過報告書とも呼ばれ、何らかの経緯や経過を時系列に報告するための文書です。例文5にある「経緯度」は、経度と緯度を意味し、地球表面上で位置を示すための座標表現です。
経過の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある時間内の物事の進行や変化の具合、時間が過ぎることを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある経過は、物事の進行や変化の具合や成り行きを意味します。例文3にある「経過良好」とは、術後の状態が好ましいことを表しています。例文4と例文5にある経過は、時間が過ぎることを意味しています。
経緯と経過という言葉は、どちらも物事の移り変わりを表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、事情や内容から捉えることを表現したい時は「経緯」を、時間の流れから捉えることを表現したい時は「経過」を使うようにしましょう。