似た意味を持つ「体験」(読み方:たいけん)と「経験」(読み方:けいけん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「体験」と「経験」という言葉は、どちらも何かを見聞きするという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
体験と経験の違い
体験と経験の意味の違い
体験と経験の違いを分かりやすく言うと、一度でも実際に見聞きしたことのある物事については「体験」と言い、何度も繰り返し見聞きした物事については「経験」と言うという違いです。
体験は主体性、経験は客観性を持つ
また、体験というのは自分自身が当事者になっている場合に使用される言葉であり、主体的な表現であると言えます。実際に当事者となってみて、印象に深く残った物事に対して「体験」という言葉は使われる傾向にあります。
対する「経験」というのは、体験よりも客観性を持つ言葉です。他者に対してもよく使用される言葉であり、体験よりも広い範囲で使える言葉であると言うことが出来ます。特別に印象的な出来事ではなくても「経験」という言葉は使うことが出来ます。
経験というのは、基本的には何度も同じことを繰り返していくことを表現する言葉です。繰り返すことによって、何かを定着させることを「経験を積む」と表現したりもします。
「貴重な体験」と「貴重な経験」の違い
体験と経験という言葉は類語なので、どちらの表現を使っても問題ない場合も多くあります。例えば「今回の実習では貴重な体験をさせて頂きました」「今回の実習では貴重な経験をさせて頂きました」、これらの表現はどちらも間違いではありません。
しかし、厳密に違いを考えてみると、その実習が特別なものであり、印象深いものであったことを強調したい場合には「経験」よりも「体験」と表現する方が正しく意味が伝わる表現となります。
「経験豊富」と「体験豊富」の違い
また、体験は一度きりという意味を強く持つ言葉であるのに対し、経験は繰り返しという意味を持つ言葉です。経験という言葉は「経験豊富」などのように使用することが出来ますが、「体験豊富」という表現は使われません。
「経験値」と「体験値」の違い
他にも、何度も同じことを積み上げて習得していくことを「経験値」などと表現しますが、「体験値」という表現は使われません。
このように、実際に見聞きした物事の印象や、見聞きした回数によって、体験と表現するか、経験と表現するかを判断するようにしましょう。
どうしてもどちらの表現を使ったら良いのかわからない場合には「経験」とする方が広い意味で使用される言葉なので間違いがありません。
体験の意味
体験とは
体験とは、自分で実際に見たり聞いたりして、身をもって感じたことを意味しています。また、哲学用語では、個々人が直接感じたことを体験と呼びます。一般的な意見や知性的な意見ではなく、個人の持つ人格や個性による意見のことを「体験」と呼びます。
「体験した」の意味
体験というのは、一度でも実際に見聞きしたり、その身で感じたりしていたら「体験した」と表現することが出来ます。繰り返し見聞きしていなくても、それは「体験」であるということが出来ます。
「体験を積む」「体験を得る」は間違い
体験という言葉は、知識や技術を身に付けることを目的にしているわけではありません。例えば「経験を積む」や「体験を得る」という表現はありますが、これらの表現は使われません。
体験というのは、自分自身が当事者になっていることが必要であり、とても主観的な言葉であると言えます。そのため、印象に強く残るような出来事に対して使われることの多い表現であるということが出来ます。
表現方法は「貴重な体験」「体験する」「体験談」
「貴重な体験」「体験する」「体験談」などが、体験を使った一般的な言い回しです。
体験の使い方
体験を使った分かりやすい例としては、「まだ若手社員の私にとっては貴重な体験をさせてもらう機会となった」「一度でも体験すると感動が忘れられなくなる」「大学受験の合格体験談は受験生の励みになっている」などがあります。
体験の語源
体験の「体」という字は、身に付ける、身を持ってする、元となる、という意味を持つ言葉です。そのことから、体験というのは漢字の成り立ちだけで考えると「実際に確かめながら身を持ってしてきたこと」という意味になります。
体験の類語
体験の類語・類義語としては、実際に見たり聞いたりすることを意味する「見聞」、実際に見て知ることを意味する「知見」などがあります。
体験の「体」という字を使った言葉としては、体験を通して知り、理解をして自分のものにすることを意味する「体得」、各部分が統一的に組織されて一つの全体を形づくっている状態を意味する「体制」などがあります。
経験の意味
経験とは
経験とは、実際に見たり聞いたりして、行ってみたことを意味しています。また、それらによって得られた知識についても経験と表現されたりします。哲学用語では、感覚や知覚によって直接与えられた知識のことを「経験」と呼びます。
経験というのは、基本的には、何度も繰り返して行うものです。経験は、知識や技術などを身に付けるために行うものであり、身に付くまでは、何度も同じことを繰り返して行うことが大切になります。
この何度も繰り返して、実際に行うことを「経験」と呼びます。経験という言葉は、客観的な視点を持つ言葉であり、他者に対しても使うことが出来ます。
経験という言葉は、一般的な行為や行動について使われることの多い表現なので、体験という言葉よりも広く使用されます。体験と違い、特別に印象的な出来事に対してでなくても使える表現なので使用できる場面の範囲が広いのが特徴です。
表現方法は「経験を積む」「経験を得る」「経験が浅い」
「経験を積む」「経験を得る」「経験が浅い」「経験する」「経験値」などが、経験を使った一般的な言い回しです。
経験の使い方
経験を使った分かりやすい例としては、「将来の独立を目指してこのお店で経験を積むことにした」「君はまだ経験が浅いからまだまだこれから成長できる」「しっかりと経験を積んで勉強しなさい」などがあります。
経験の語源
経験の「経」という字は、縦方向の糸という意味や、道筋を辿るという意味、他にも営むという意味や常に変わらないことを意味したりもする言葉です。
このように様々な意味合いを持っている言葉ですが、ここで言う「経」という字は、通り過ぎるという意味です。
経験という言葉は、漢字の成り立ちだけで考えると「実際に確かめながら通り過ぎてきたこと」という意味を持つ言葉です。経験とは、過去のことであり、過ぎ去ったものを表現する際に使われる言葉です。
経験の類語
経験の類語・類義語としては、経験した数を意味する「場数」があります。
経験の「経」という字を使った言葉としては、物事の筋道やいきさつを意味する「経緯」、今まで経験してきた仕事や身分、地位や学業などの事柄を意味する「経歴」、ある時間内の物事の進行や変化の具合を意味する「経過」などがあります。
体験の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分自身が実際に身をもって感じたことを表現する時などが挙げられます。自分が当事者になっている場合でないと「体験」という言葉は使えないものです。
体験というのは、何かの物事を自分で実際に行ったりしてみることで、自分の心が感じたことを表現する言葉です。一般的な意見や、知性的な感覚ではなく、自分の心が感じたままの状態のことを「体験」と言います。
例えば、例文1のように入学する前に、自分で実際に学校に行ってみることを「体験入学」などと言います。世間一般的な評価としては、とても評判の良い学校であったとしても、実際に本人が体験してみたら、本人は合っていないと感じる場合もあります。
これが体験というものです。他者の意見や、一般的な認識ではなく、その人個人の主体的な考え方に基づいた経験のことを「体験」と呼ぶのだと覚えておくようにしましょう。
経験の例文
この言葉がよく使われる場面としては、実際に自分で何度も見たり聞いたりして、行ってみることを表現したい時などが挙げられます。なにかの物事を身に付けたい時などにも「経験」という言葉はよく使用されるものです。
体験と違って、経験と言うのは特別な出来事に対してではなくても使うことの出来る言葉です。例文にあるように、自分よりも目上の人に対しては「人生経験が豊富である」と表現したりもします。
これは、その人が特別に、特殊な人生を送ってきたという意味ではなく、生きてきた年数が多い分、自分よりも多くのことを見聞きしてきただろうという敬意を意味する言葉です。
このように、経験という言葉は、特殊な出来事に対してではなく、体験という言葉よりも広く様々な場面で使える表現であるのだと覚えておくようにしましょう。