【隷属】と【服従】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「隷属」(読み方:れいぞく)と「服従」(読み方:ふくじゅう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「隷属」と「服従」という言葉は、他に従うことという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




隷属と服従の違い

隷属と服従の意味の違い

隷属と服従の違いを分かりやすく言うと、隷属には従う者の意思がない時に使い、服従は従う者の意思がある時に使うという違いです。

隷属と服従の使い方の違い

一つ目の隷属を使った分かりやすい例としては、「他人に隷属している自分が嫌いだ」「わが国は他国への隷属化から脱却する必要がある」「誰からも支配されたくないと心が隷属を拒否している」「実は人間は自然に隷属した環境で生きている」などがあります。

二つ目の服従を使った分かりやすい例としては、「社長に絶対服従する社員しかいない」「プレイヤーは監督の指示に服従しなければならない」「下請けが中心の中小企業は大企業に服従せざるを得ない」「もはやここの人たちは服従している意識さえもない」などがあります。

隷属と服従は似たような意味を持つ言葉ですが、前者は支配を受け奴隷のように言いなりになるため、従う者の意思はありません。しかし後者は他の人の意見や命令のままに行動するものの、服従しないという意思も存在しうるという違いがあります。

隷属と服従の英語表記の違い

隷属を英語にすると「subordination」となり、例えば「隷属的地位」を英語にすると「in a subordinate position」となります。

一方、服従を英語にすると「obedience」となり、例えば「絶対服従」を英語にすると「absolute obedience」となります。

隷属の意味

隷属とは

隷属とは、他の支配を受けてその言いなりになることを意味しています。

表現方法は「隷属する」「隷属的」「隷属関係」

「隷属する」「隷属的」「隷属関係」などが、隷属を使った一般的な言い回しです。

「隷属的」の意味

「隷属的」という使い方で支配を受けているような状態を表します。しかし、現代の事物に対して使用する際は実際に命令を受け言いなりになるということより、「隷属的労苦」など労働や組織などと合わせて使い、苦労していることを表すことが多いです。

隷属の意味を含む言葉

隷属に関連する言葉として「植民地」や「シュードラ」があります。

前者の「植民地」は、ある国からの移住者によって開発され、その国の新領土となって本国に隷属する地域を指します。似たような言葉に「従属国」がありますが、こちらは独立的地位が認められていたりなど自由さが異なっています。

後者の「シュードラ」は、ヒンドゥー教におけるカースト制度の前身であるヴァルナ制度の中でももっとも最下層におかれる隷属民のことを指します。奴隷とはやや異なり、売買されることはなく自分たちの家族も財産も所有していました。

隷属の対義語

隷属の対義語・反対語としては、他からの束縛や支配を受けないで、自分の意志で行動することを意味する「独立」があります。

隷属の類語

隷属の類語・類義語としては、権力や威力のあるものに依存して付き従うことを意味する「従属」、付き従い言いなりになることを意味する「隷従」、従って下につくことを意味する「服属」などがあります。

隷属の属の字を使った別の言葉としては、他の国によって支配を受ける国を意味する「属国」、物および権利などが特定の人、団体や国などの所有となることを意味する「帰属」、親族関係において先の世代にある血族を意味する「尊属」などがあります。

服従の意味

服従とは

服従とは、他の意志や命令に従うことを意味しています。

表現方法は「服従する」「服従させる」「服従心」

「服従する」「服従させる」「服従心」などが、服従を使った一般的な表現方法です。

服従の意味を含む言葉

服従の意味が含まれている言葉として「面従腹背」という四字熟語や「尻馬に乗る」ということわざがあります。

前者の「面従腹背」の面従は人の前だけで従うことを、腹は心の中を、背は背くことをそれぞれ意味しています。ここから、うわべだけ上の者に従うふりをしているが内心では従っていないことを意味します。

後者の「尻馬に乗る」とは、他の人が乗っている馬の後ろに乗ることから、自分の意見を持たずに服従することを意味します。四字熟語の「付和雷同」はこのことわざの類義語にあたります。

服従の対義語

服従の対義語・反対語としては、外部から加わる力に対して逆らうことを意味する「抵抗」と、目上の人や権威および権力などに従わず逆らうことを意味する「反抗」があります。

服従の類語

服従の類語・類義語としては、反逆や抵抗をやめて従うことを意味する「帰順」習慣などを守り従うことを意味する「順守」、命令につつしんで従う態度をとることを意味する「恭順」、がまんして従うことを意味する「忍従」などがあります。

服従の服の字を使った別の言葉としては、薬を飲むことを意味する「服用」、深く感心して尊敬の気持ちを抱くことを意味する「感服」、努力して困難に打ち勝つことを意味する「克服」、仕事に携わることを意味する「服務」などがあります。

隷属の例文

1.私からすると、友人とその彼氏はただの恋人ではなく、隷属関係を結んでいるようにしか見えない。
2.この国の原点となる王朝はもともと他の国を隷属しており、非常に強大であった。
3.ロシアでは農村部の富裕層が貧しい農民をだんだん隷属化していったことから生まれたことわざがある。
4.支配と隷属の関係が普通であったが、今では平等な関係を築き上げるための社会になってきたと言えるだろう。
5.古代の農民たちの多くは隷属させられることで、つらい生活ながらも食べるものがある程度確保できていたともいえる。
6.彼女は自分が隷属している会社からの脱出を夢見て、独立してフリーランスになることを決意した。
7.時代が進むに連れて、農民は領主への隷属から解放され、小さいながらも私有地を得ることができた。
8.我々は、我々を隷属させようとする敵対勢力と闘い、最後には勝利を収めなければならない。
9.混迷の時代だからこそ、私達は自分たちの考えを持ち、他人の隷属にならないように努力すべきだ。
10.独裁国家では、経済が開放されたとしても、政治的な圧力や思想統制によって、人々は隷属されており、本当の自由はない。

この言葉がよく使われる場面としては、他の支配を受けており従う側に意思がないことを意味する時などが挙げられます。

例文1の「隷属関係」は恋愛においても存在する関係で、今日では依存関係に主従の役割が付与されたような形といえます。古くは、女性は男性より劣っていると考えられていたため、妻は一般的に夫に従属させられているとされていました。

例文3のことわざは「靭皮の紐を借りたら革帯を返せ」というもので、日本でいう「借りる八合済す一升」と同義であるため、他人に物を借りたなら必ずお礼を添えて返すのが良識であるという意味を持ちます。

服従の例文

1.ガンディーによる非暴力・不服従運動は、今後も語り継がれる運動だと言えるだろう。
2.最近犬を飼い始めたため、おすわりなど必要な服従訓練を少しずつ進めている。
3.その試合をするにあたって、服従する必要のあるルールが伝えられるのを待たなければならない。
4.職場の先輩に服従し続けるのは、抵抗するのも面倒だからである。
5.人間はだれしも権威や権力には従ってしまうため、恋愛においてもその方法をとってコミュニケーションを図るものが少なくない。
6.この会社で働く社員たちは、まるで軍隊のように上司の命令に絶対服従することが求められる。
7.集団行動において、個人の自己表現よりも集団の意志に服従することが求められることがある。
8.日本では中小企業が経済を支えているなどと美談があるが、中小企業は下請けであり、大企業に服従せざるを得ないのである。
9.田舎では伝統的な文化の中で、有力者たちの権威に従うことが求められることがあるが、時代錯誤も甚だしい。
10.ブラック企業では、営業目標を実現するために「自己犠牲」と「服従の精神」が要求された。

この言葉がよく使われる場面としては、他の支配を受けており従う側に意思があることを意味する時などが挙げられます。

例文1の「非暴力・不服従運動」とは、インドのガンディーがイギリスの植民地支配に抵抗するために非暴力と不服従を貫くための運動です。

隷属と服従どちらを使うか迷った場合は、従う者に意思を持つことが許されていない場合には「隷属」を、従う者に意思を持つことが許されているものの従っている場合には「服従」を使うと覚えておけば間違いありません。

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