【推敲】と【推考】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

同じ「すいこう」という読み方の「推敲」と「推考」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「推敲」と「推考」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。




推敲と推考の違い

推敲と推考の意味の違い

推敲と推考の違いを分かりやすく言うと、推敲とは文を練り直すことを意味し、推考とは物事を推測して考えること意味するという違いです。

推敲と推考の使い方の違い

一つ目の推敲を使った分かりやすい例としては、「この原稿はまだ推敲が必要だろう」「文章の推敲に余念がない」「推敲とチェックを繰り返した」「無料の推敲アプリを使ってみる」「仕上げの推敲に取り掛かる」などがあります。

二つ目の推考を使った分かりやすい例としては、「宇宙空間について推考するのが趣味だ」「株の値動きを推考するのは難しい」「介護問題を定量的なデータから推考する」「子供の推考力を伸ばしたい」などがあります。

推敲と推考は、同音の言葉で意味が異なる同音異義語です。そのため、上記の例にある推敲と推考は、互いに置き換えることは出来ません。

推敲と推考の使い分け方

推敲は、詩文の字句や文章を十分に吟味して練りなおすことを意味します。一方の推考は、物事の道理や事情などを推測して考えることを意味します。推敲は文章を直す実際の作業を表現し、推考はあれこれと推し量って考えをめぐらす頭の動きを表現する言葉です。

推敲と推考の英語表記の違い

推敲を英語にすると「polishing」「elaboration」「revision」となり、例えば上記の「この原稿は推敲が必要だ」を英語にすると「this manuscript needs to be polished」となります。

一方、推考を英語にすると「surmising」「speculation」となり、例えば上記の「宇宙空間について推考する」を英語にすると「speculate about space」となります。

推敲の意味

推敲とは

推敲とは、詩文の字句や文章を十分に吟味して練りなおすことを意味しています。

表現方法は「推敲する」「推敲を重ねる」「推敲に推敲を重ねる」

「推敲する」「推敲を重ねる」「推敲に推敲を重ねる」などが、推敲を使った一般的な言い回しです。

推敲の使い方

推敲を使った分かりやすい例としては、「文章を推敲する」「細かく推敲する必要があるだろう」「推敲するうえで語彙力がカギとなる」「自分で書いた文を推敲する」「納得いくまで推敲を重ねる」などがあります。

その他にも、「推敲を重ねた自信作の詩だ」「文章を推敲してから提出するように」「何度も推敲して出来た感想文だ」「字句や文を推敲するのが苦手だ」「推敲のやり方やコツを教えてもらった」などがあります。

推敲のやり方

推敲という言葉は、文章の中の文字や語句、文章構成を念入りに練り直すことを意味します。具体的には、誤字脱字はないか、思うような表現に書けているか、全体の文章構成や文の流れが不自然ではないか、などの観点からチェックし検討することです。

推敲の由来

推敲は故事成語のひとつです。 古代中国の詩人が「僧は推す月下の門」という句を作っていた時に、「推す(おす)」を「敲く( たたく)」にすべきか迷ったすえに、「敲」の字に改めました。この出来事から「推敲」は文章を練り直すことを意味するようになりました。

「推敲してもらう」は間違い

推考という言葉は、自分が書いた文章に対して使います。他の人に文章を直してもらう場合は推敲という言葉は使えないので、「推敲してもらう」という表現は誤りです。この場合、「手を入れてもらう」「添削してもらう」などと表現します。

推敲の類語

推敲の類語・類義語としては、一度書き上げた原稿を書きなおすことを意味する「改稿」、他人の文章や答案などを加筆したり削ったりして改め直すことを意味する「添削」、他人の原稿を書きなおすことを意味する「リライト」などがあります。

推敲の敲の字を使った別の言葉としては、詩や文章の音の響きやリズムが美しいことのたとえを意味する「敲金撃石」、見当違いの無理な望みをもつことのたとえを意味する「敲氷求火」などがあります。

推考の意味

推考とは

推考とは、物事の道理や事情などを推測して考えることを意味しています。

表現方法は「推考する」「推考いたします」

「推考する」「推考いたします」などが、推考を使った一般的な言い回しです。

推考の使い方

推考を使った分かりやすい例としては、「私が推考するに、彼は来ないだろう」「未来の生活を推考することが好きだ」「不可視領域まで推考する」「アイディアを推考して検証する」「さらに推考して良い作品にする」などがあります。

その他にも、「生涯学習の必要性を自分なりに推考する」「本の丸写しでは自分の推考とは言えない」「失敗の原因は準備不足だと推考している」「結婚式のスピーチを推考中だ」「推考に推考を重ねて理論を導く」などがあります。

推考の語源

推考という言葉は、ある事柄をもとにして、あれこれ推測して考えることを意味します。推考の「推」は考えをおし進めることを表し、「考」は考えることや思いめぐらすことを表します。

推考の名言

推考を用いた名言には、イギリスの詩人バイロンの「推考しないものは偏屈者、推考できないものは愚か者、推考する勇気を持たぬものは奴隷」があります。推考は物事を推測して考えることを意味しますが、バイロンは極めて重要な頭の働きとして捉えていたことがうかがえる言葉です。

推考の類語

推考の類語・類義語としては、ある事柄をもとにして推量することを意味する「推測」、物事の状態・程度や他人の心中などをおしはかることを意味する「推量」、他人の事情や心中を思いやることを意味する「推察」などがあります。

推考の考の字を使った別の言葉としては、工夫して考え出すことを意味する「考案」、参考のために付記することを意味する「備考」、一度考えてみることを意味する「一考」などがあります。

推敲の例文

1.故事成語の推敲の意味は中学校で習った記憶があり、小学生の息子が知っていて驚いた。
2.『推敲』の書き下し文と現代語訳をノートに書く宿題があったのを忘れていた。
3.推敲のこうの意味はたたくことだが、推敲以外でこの字を使ったことがない。
4.自分の文章を読み返してみると、誤字脱字だけでなく、つじつまが合わないことに気づいたりするので、推敲する意味は大いにある。
5.推敲の由来は知っていたが、同じ故事成語の朝三暮四については知らなかった。
6.昨晩推敲に推敲を重ねたラブレターを今朝読み直してみたら、恥ずかしすぎた。ラブレターは一晩寝かせてから推敲するのがベストだ。
7.プレゼン資料を推敲していたのだが、推敲すればするほどインパクトのない文になってしまった。
8.俳人といえども、いきなり思いつきで歌を詠んだりすることはせず、必ず推敲するものだ。
9.推敲を怠ると、文章のクオリティが低下することがありますから、手を抜くことは命取りになります。
10.私は意気揚々と原稿を提出したものの、上司から推敲が足りないと言われ、突き返されてしまった。

この言葉がよく使われる場面としては、詩文の字句や文章を十分に吟味して練りなおすことを表現したい時などが挙げられます。

例文3にあるように推敲の「敲」は、指先やこぶしで軽くたたくという意味があります。敲は音読みで「こう」、訓読みで「たたく」と読みますが、常用外漢字ということもあり、あまり使われない漢字です。

推考の例文

1.推考と同じ意味の言葉がたくさんあって、どの言葉を使うか推敲を重ねている。
2.国語のテストでは、物語文の主人公の気持ちは文章から読み取らなければならず、勝手に推考することはご法度だ。
3.自己評価シートに業務推考力があると書いてあるが、業務遂行力の間違いだろう。
4.真夏の異常な暑さは、二酸化炭素を排出し続ける人間への戒めなのではないかと推考する。
5.将来的にAIはアートの世界でも活躍し、ファッションの流行も推考するようになるかもしれない。
6.この商品がなぜヒットしたのか要因を整理しながら、次のヒットのカギを推考するつもりだ。
7.絵画やアートを見て、作者の意図を推考するのは、謎解きや推理小説とはまた違う思考の楽しみがある。
8.日々の株の値動きを推考するのは難しいが、それが見事に当たった時はとても嬉しい。
9.計画の失敗の原因は準備不足だと推考しているので、今度はしっかりと準備を行いたい。
10.自分のキャリアパスについて、将来の市場需要や自己のスキルセットを推考し、適切な方向性を見つける必要がある。

この言葉がよく使われる場面としては、物事の道理や事情などを推測して考えることを表現したい時などが挙げられます。

例文1にあるように、推考という言葉には推量・推察・推測などの類語があります。書いている文章に、どの言葉を使うか吟味している様子を推敲という言葉を使って表現しています。例文3にある業務推考力は誤りです。業務をやり遂げる力を「業務遂行力」と言います。

推敲と推考という言葉は、どちらも「すいこう」と読む同音異義語です。どちらの言葉を使うか迷った場合、文章を練り直すことを表現したい時は「推敲」を、物事を推測して考えることを表現したい時は「推考」を使うようにしましょう。

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