似た意味を持つ「無謀」(読み方:むぼう)と「無茶」(読み方:むちゃ)と「無理」(読み方:むり)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「無謀」と「無茶」と「無理」という言葉は、筋道が立たず道理に合わないことという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
無謀と無茶と無理の違い
無謀と無茶と無理の意味の違い
無謀と無茶と無理の違いを分かりやすく言うと、無謀は行為の結果を想定した上で使い、無茶は行為者にとって不可能な行為に使い、無理は行為者にとって不可能ではない行為に使うという違いです。
無謀と無茶と無理の使い方の違い
無謀という言葉は、「無謀な挑戦について語る」「無謀な行為は周りにも迷惑を掛ける」などの使い方で、自分の行いの結果を全く考えていないことを意味します。
無茶という言葉は、「無茶なお願いだとはわかっている」「多少の無茶はどうにかなる」などの使い方で、道理に合わないことを意味します。また、後者の例文のように、度を越していることも意味するため、対象にとって不可能に近い行為に使われる言葉です。
無理という言葉は、「その話の流れには無理がある」「無理難題を押し付ける」などの使い方で、物事の筋道が立っていないことを意味します。また、後者の例文のように、行うことが難しいことも意味するため、不可能ではない行為に使われる言葉です。
無謀と無茶と無理の使い分け方
そのため、結果を重視する場合には無謀を、その行為を行う人を重視する場合には無茶や無理を使います。
そして、無茶は行為者の能力的に不可能に近い行為に対して使い、無理は行為者の能力的には不可能ではない行為に対して使います。これらが、無謀、無茶、無理の明確な違いです。
無謀の意味
無謀とは
無謀とは、結果に対する深い考えがないことやその様子を意味しています。
表現方法は「無謀な夢」「無謀な挑戦」「無謀な考え」
「無謀な夢」「無謀な挑戦」「無謀な考え」「無謀な行動」「無謀すぎる」などが、無謀を使った一般的な言い回しです。
無謀の使い方
無謀を使った分かりやすい例としては、「周りから無謀な夢だと言われても気にすることはない」「大学受験での成功は無謀な挑戦だと先生にまで言われていた」「無謀な考えを持つ上司がいると部下は大変な思いをする」などがあります。
「無謀運転」の意味
無謀を使った言葉として「無謀運転」があります。これは、自動車や自転車などの運転者による重大な事故などにつながる運転方法を意味する言葉です。日本では自動車運転処罰法や道路交通法がありますが、アメリカでは無謀運転致死罪という法律があります。
無謀を意味する四字熟語
無謀の意味を含んだ言葉として「暴虎馮河」(読み方:ぼうこひょうが)があります。これは、向こう見ずなことをすることを表す四字熟語です。暴虎は素手で虎を撃つことを意味し、馮河は川を徒歩で渡ることを意味し、どちらも無謀なことを表します。
無謀の対義語
無謀の対義語・反対語としては、将来どうなるのかをあらかじめ見抜くことを意味する「先見」、あらかじめ計画を立てて物事を行う様子を意味する「計画的」、確かで危なげがないことを意味する「堅実」があります。
無謀の類語
無謀の類語・類義語としては、結果などを考えずにいちずに物事をすることを意味する「無闇」、是非や結果を考えずに無闇に行動することを意味する「無鉄砲」、軽はずみなことを意味する「軽忽」(読み方:きょうこつ)があります。
無謀の謀の字を使った別の言葉としては、遠い将来まで見通したはかりごとを意味する「遠謀」、臨機応変なはかりごとを意味する「権謀」、作戦などの計画に参与する人を意味する「参謀」、深く考えて立てたはかりごとを意味する「深謀」などがあります。
無茶の意味
無茶とは
無茶とは、道理に合わないことやその様子を意味しています。その他にも、度を越していることや、知識がないことも意味します。
無茶の語源
「無茶」の語源に関する説はいくつかあり、茶を客人に出さないことを意味しそれが常識はずれであることを表すことが由来となった説と、仏教の言葉で無為を表す「無作」(読み方:むさ)が由来となった説がありますが、前者は後付けとも言われています。
表現方法は「無茶する」「無茶を言う」「無茶しないで」
「無茶する」「無茶を言う」「無茶しないで」などが、無茶を使った一般的な言い回しです。
無茶の使い方
無茶を使った分かりやすい例としては、「彼は大人なのに朝まで遊ぶという無茶する人間である」「無茶を言うお客さんの相手をするのは辛い」「決して無茶しないで頑張ってください」などがあります。
無茶を使った言葉として、「無茶苦茶」「無茶ぶり」があります。
「無茶苦茶」の意味
一つ目の「無茶苦茶」とは、無茶を強める言葉で、意味は無茶と同じです。また、無茶苦茶の苦茶は、客人に対して苦いお茶を出すことが非常識であるため、茶を出さないことを表す無茶と共に使うことで非常識であることを強調しているとも言われています。
「無茶ぶり」の意味
二つ目の「無茶ぶり」とは、困難な仕事を無理やり頼むことや、返答に困る話を投げかけることを意味する言葉です。バラエティ番組で司会者にお笑い芸人に対して突然無理難題なことを強いてくるといった事例が「無茶ぶり」にあたります。
無茶の類語
無茶の類語・類義語としては、言うことに根拠がなく取り留めのないことを意味する「荒唐」、常識のないことを意味する「非常識」、普通に考えられる程度をはるかに超えていることを意味する「法外」、論理に反していることを意味する「背理」があります。
無茶の茶の字を使った別の言葉としては、茶を入れたりご飯を盛る器を意味する「茶碗」、茶を人に勧める時にへりくだっていう言葉である「粗茶」、茶葉を煎じて飲むことを意味する「煎茶」、特別に名のある上質な茶を意味する「銘茶」などがあります。
無理の意味
無理とは
無理とは、物事の筋道が立たず道理に合わないことやその様子を意味しています。その他にも、実現することが難しい様子や、押し切って行うことも意味します。
表現方法は「無理です」「無理をする」「無理オブ無理」
「無理です」「無理をする」「無理オブ無理」などが、無理を使った一般的な言い回しです。
無理の使い方
無理を使った分かりやすい例としては、「どう考えてもこの仕事は自分には無理です」「彼女は無理をする性格だから気にかけてしまう」「最近の若者は絶対に無理という意味で無理オブ無理という言葉を使う」などがあります。
無理を使った言葉として、「無理が通れば道理が引っ込む」「無理数」があります。
「無理が通れば道理が引っ込む」の意味
一つ目の「無理が通れば道理が引っ込む」とは、道理にかなわない不正が平気で通用する場合、正しいことが行われなくなることを意味することわざです。また、正しいことを主張したとしても聞き入れられない場合には、引っ込んでいるのがよいことも意味します。
「無理数」の意味
二つ目の「無理数」とは、分数で表すことのできない数を意味する言葉です。1や2といった整数は分母に1をつけることで分数の表現になり、0.3のように小数点を伴うものも3/10と分数の形で表すことができるため、無理数ではなく有理数と呼ばれます。
小数点のケタに終わりがあるものもあれば、2を3で割った時のように0.6666…と同じ数字が続く場合や、同じ数字でなくとも規則性がある場合もあります。これらは循環小数といい有理数にあたります。
しかし、3.1415926535…といった円周率のように規則性がないものがあり、これは分数で表すことができないため、無理数と言います。
無理の対義語
無理の対義語・反対語としては、物事の正しい筋道を意味する「道理」、ある物事ができる見込みがあることを意味する「可能」があります。
無理の類語
無理の類語・類義語としては、できないことを意味する「不能」、多すぎることを意味する「過多」、程度が過ぎることを意味する「過度」、普通の程度からは大きく外れていることを意味する「極端」があります。
無理の理の字を使った別の言葉としては、物事を正当に判断する個々との動きを意味する「理性」、物事がそうなった根拠を意味する「理由」、多くの物事を成り立たせる根本的な法則を意味する「原理」、心の働きや状態を意味する「心理」などがあります。
無謀の例文
この言葉がよく使われる場面としては、結果を考えない状態を意味する時などが挙げられます。
結果を重視する言葉ではありますが、例文1と例文3のように場合によっては無茶や無理に置き換えて使うことができます。
無茶の例文
この言葉がよく使われる場面としては、度を越しており、道理に反していることを意味する時などが挙げられます。
例文3の「無茶ぶり」とは、無理難題を押し付けることを意味する言葉です。
無理の例文
この言葉がよく使われる場面としては、筋道が立っておらず道理に反していることを意味する時などが挙げられます。
例文1の「無理もない」とは、道理に反することはない、筋道が立っているという意味が転じて、当然である、そうなるのに十分な理由があるといった意味になる慣用表現です。
例文2の「無理やり」は、当て字を使うと「矢理」という表記になりますが、「遣り」が本来の表記です。
「遣る」は人を派遣したり物を送るという意味で使われていた言葉ですが、中世頃から何かをなすという意味で使われるようになり、近世頃から「無理」と合成され、使われるようになりました。
無謀と無茶と無理どれを使うか迷った場合は、結果を重視する場合は「無謀」を、行為を行う人の器量を踏まえない場合は「無茶」を、行為を行う人の器量を踏まえる場合は「無理」を使うと覚えておけば間違いありません。