似た意味を持つ「拡充」(読み方:かくじゅう)と「拡大」(読み方:かくだい)と「拡張」(読み方:かくちょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「拡充」と「拡大」と「拡張」という言葉は、広げて大きくなるという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
拡充と拡大と拡張の違い
拡充と拡大と拡張の使い分け方
拡充と拡大と拡張の違いを分かりやすく言うと、拡充は対象の中身を充実させる時に使い、拡大は対象を広げて大きくする時に使い、拡張は対象に付け加えて大きくする時に使うという違いです。
拡充と拡大と拡張の使い方の違い
拡充という言葉は、「支援の拡充を願う」「施設内の機能の拡充を目指す」などの使い方で、より広く行き渡るように広げることを意味します。遊園地を例に挙げて考えると、拡充は客に満足してもらうためのサービスや施設の質の向上などを指します。
拡大という言葉は、「パソコンのウイルス感染の拡大」「写真を拡大する」などの使い方で、大きく広げることを意味します。遊園地で言えば、土地が広がったことだけを意味するため、その増えた土地が遊園地に相応しい場所になっているかどうかは不明瞭です。
拡張という言葉は、「ゲームの拡張パックの発売が楽しみだ」「拡張工事が行われており一部立ち入り禁止である」などの使い方で、付け加えて広げることを意味します。遊園地だと、新たな施設を増設するなど付け加えられることで規模が大きくなることを指します。
これらのことから、拡充、拡大、拡張には明確な違いがあり、それぞれを置き換えて使うと意味が変わってしまいます。
拡充の意味
拡充とは
拡充とは、組織や施設を広げて充実させることを意味しています。
拡充の由来
拡充は、拡張充実の省略語とも言われています。もとは、中国の『孟子』の中で著者の孟子が「拡めてこれを充たす」という表現を使ったのが「拡充」の由来とされています。
表現方法は「拡充を図る」「拡充させる」「知識の拡充」
「拡充を図る」「拡充させる」「知識の拡充」「商品拡充」「人員拡充」「機能拡充」などが、拡充を使った一般的な言い回しです。
拡充の使い方
拡充を使った分かりやすい例としては、「時間と共に劣化した就業規則の拡充を図る必要がある」「今回は教育予算を拡充させるための増税らしい」「仕事量が増えてきたため人員拡充の必要がある」などがあります。
上記以外の拡充を使った言葉として、「拡充模倣」「拡充法」があります。
「拡充模倣」の意味
一つ目の「拡充模倣」とは、子どもが発した言葉に対して、意味や形式を広げて受け答えすることを意味する言葉です。
例えば、小さな子どもが「ママ」と腕を伸ばしてきた場合、「ママ、だっこして」と言葉を補って真似させることで子どもの語彙を増やし、言語能力を高めることができます。このように言葉の内容が十分ではない場合に行うやり取りを拡充模倣と言います。
「拡充法」の意味
二つ目の「拡充法」とは、夢で見た事物やイメージを明確にし、神話や昔話などの物語で見れらるものと対応させてイメージを膨らませていく夢分析の一つです。
例えば、夢に亀が出てきたとします。そして、亀を普段どう思っているのかを連想し、自分が知っている昔話などに出てきていた場合亀がどのように扱われていたのかを参考にしてイメージを広げていきます。ここから現実の生活での心の動きと共に夢を考察します。
拡充の対義語
拡充の対義語・反対語としては、縮まって小さくなることを意味する「縮小」があります。
拡充の類語
拡充の充の字を使った別の言葉としては、必要なものが十分に備わることを意味する「充実」、十分に補い満たすことを意味する「充足」、次の行う物事に備えて活力を蓄えることを意味する「充電」、満ち足りることを意味する「充満」などがあります。
拡大の意味
拡大とは
拡大とは、広げて大きくすることや、広がって大きくなることを意味しています。
表現方法は「拡大する」「画面拡大」「拡大解釈」
「拡大する」「画面拡大」「拡大解釈」などが、拡大を使った一般的な言い回しです。
拡大の使い方
拡大を使った分かりやすい例としては、「後ろの人までしっかり見えるように画面を拡大する」「いつのまにか拡大解釈されていたようで全然違う内容になってしまった」などがあります。
上記以外の拡大を使った言葉として、「拡大家族」「拡大治験」があります。
「拡大家族」の意味
一つ目の「拡大家族」とは、世帯主夫婦以外の夫婦が同居している家族を指す言葉で、親夫婦、子の夫婦、孫で構成されている大家族が今日ではほとんどです。
「拡大治験」の意味
二つ目の「拡大治験」とは、がんなど生命に重大な影響がある重度の病気の患者を救済するために、既存の治療法では有効なものがなく、国内では未承認である海外の薬などの使用を認める制度で、「人道的見地から実施される治験」とも言われます。
拡大の対義語
拡大の対義語・反対語としては、しっかりと引き締めることを意味する「緊縮」があります。
拡大の類語
拡大の類語・類義語としては、規模が広がって大きくなることを意味する「膨張」、勢力や規模が伸び広がることを意味する「伸展」、増えることを意味する「増殖」、増えて大きくなることを意味する「増大」があります。
拡大の大の字を使った別の言葉としては、思い切りよくやってのけることを意味する「大胆」、計画の規模や志が将来まで見通され大きい様子を意味する「遠大」、大きすぎる様子を意味する「過大」、立派で大規模なことを意味する「盛大」などがあります。
拡張の意味
拡張とは
拡張とは、範囲や勢力などを広げて大きくすることを意味しています。
表現方法は「拡張する」「拡張工事」「拡張機能」
「拡張する」「拡張工事」「拡張機能」などが、拡張を使った一般的な言い回しです。
拡張の使い方
拡張を使った分かりやすい例としては、「家の横を通る道路を拡張するための立ち退きの話が出ている」「駅の拡張工事が始まってから改札まで人の渋滞が出来ている」「このアプリに拡張機能を追加することでもっと長く遊ぶことが出来る」などがあります。
上記以外の拡張を使った言葉として、「拡張現実」「拡張-形成理論」があります。
「拡張現実」の意味
一つ目の「拡張現実」とは、人が知覚する現実環境をコンピュータによって拡張する技術を指す言葉で、ARとも言われます。スマートフォンのカメラで写した画面の中に二次元キャラクターが存在することで、あたかも現実世界に現れたかのような演出が可能です。
ARと似た言葉にVRがあり、こちらも視覚を利用する技術ですが、その映像しか目に入らない閉鎖的な視界にリアリティを高めた映像を投影する「仮想現実」と呼ばれ、非現実の世界を現実のように感じさせる技術を指すため、ARとは似て非なるものです。
「拡張-形成理論」の意味
二つ目の「拡張-形成理論」とは、ポジティブな感情が精神の働きを拡張することで、視野を広げたり様々な考え方や行動を思い付くという考え方です。
例えば、医者になって病に苦しむ人を助けたいという思いが、今後の学業やボランティア活動につながり、知識や技術、人間関係などを築き上げることにつながり、将来的によい未来になっていきます。この考え方が「拡張-形成理論」です。
拡張の類語
拡張の類語・類義語としては、物事の勢いなどが一段と激しくなることを意味する「増進」、重さや負担を加えることを意味する「加重」、広く伝わることを意味する「伝播」(読み方:でんぱ)、道路の幅を広くすることを意味する「拡幅」があります。
拡張の張の字を使った別の言葉としては、面を互いに引っ張るように働く力を意味する「張力」、心が張り詰めて身体が固くなることを意味する「緊張」、血管などがふくれることを意味する「怒張」、大げさに表現することを意味する「誇張」などがあります。
拡充の例文
この言葉がよく使われる場面としては、満たし広げることを意味する時などが挙げられます。
どの例文も、決められた枠の中を満たすという意味で拡充が使われているため、枠の規模そのものを拡大することを意味する拡大や拡張に置き換えて使うことはできません。
拡大の例文
この言葉がよく使われる場面としては、大きく広げることを意味する時などが挙げられます。
例文2の「拡大解釈」とは、文章の意味を通常よりも広げて解釈することを意味する言葉で、対義語に縮小解釈があります。
拡張の例文
この言葉がよく使われる場面としては、付け加えて広げることを意味する時などが挙げられます。
例文3の「拡張型心筋症」とは、心臓の下にある心室が拡大して、全身に必要とされる量の血液が送り出すことができなくなることによって引き起こされる疾患です。
拡充と拡大と拡張どれを使うか迷った場合は、満たして広げることを表す場合は「拡充」を、大きく広げることを表す場合は「拡大」を、付け加えて大きくすることを表す場合は「拡張」を使うと覚えておけば間違いありません。