似た意味を持つ「昨今」(読み方:さっこん)と「近年」(読み方:きんねん)と「最近」(読み方:さいきん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「昨今」と「近年」と「最近」という言葉は、今日この頃という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
昨今と近年と最近の違い
昨今と近年と最近の意味の違い
昨今と近年と最近の違いを分かりやすく言うと、昨今は記憶にある過去数年を表現する時に使い、近年は過去5年から現在に至るまでの数年間を表現する時に使い、最近は少し前から現在までを表現する時に使うという違いです。
昨今と近年と最近の使い方の違い
昨今という言葉は、「昨今、アルバイトをしていない大学生はほとんどいない」「昨今の就職状況は就職氷河期に似たものを感じる」などの使い方で、近い過去から現在までを意味します。記憶に残っている数年間を指すことがほとんどです。
近年という言葉は、「近年になく天災が多い年である」「近年の若者を知らないまま新入社員を迎える」などの使い方で、最近の数年間を意味します。過去5年を近年という言葉で表すことも多く、昨今や最近よりも過去の事項を表す時に使われます。
最近という言葉は、「最近は自然災害もあって野菜が高い」「両親には最近会った」などの使い方で、現在より少し前までの期間を意味します。例文の後者のように、過去の一時点について使うこともできます。
昨今と近年と最近の使い分け方
昨今と近年は、過去から現在までを通して対象となる動作や状態がしばらくの間続いている時に使います。
例えば、「昨今アルバイトをしていない大学生がいない」という使い方でアルバイトをする大学生ばかりの状態が続いており、「近年になく天災が多い年」という使い方で天災が連続的に起きている状態を表します。
一方の最近は、昨今や近年と同じように動作や状態が続いている時にも使うことができますが、過去の一点を表すこともできる言葉です。「両親には最近会った」という使い方は両親に断続的に会っていたことではなく、一度両親に会った日があることを表します。
そのため、表す期間の広い順に並べると、近年≧昨今>最近となります。
また、昨今は文語的、近年と最近は口語的表現で使われるという違いもあります。これらが明確な違いです。
昨今の意味
昨今とはどれくらい前の範囲か
昨今とは、今日この頃を意味しています。現在に近い過去から現在までを含めて漠然と表します。
昨今の読み方
昨今とは「さっこん」という読み方をしますが、「さくこん」「きこん」といった読み方はしません。
表現方法は「昨今の事情を鑑みて」「昨今の情勢の中」「昨今の状況を踏まえ」
昨今を使った表現として、「昨今の事情を鑑みて」「昨今の情勢の中」「昨今の状況を踏まえ」「昨今において」「昨今における」「昨今まれに見る」「昨今興隆が見られる」「昨今興隆が著しい」などの言い回しがあります。
昨今の使い方
昨今を使った分かりやすい例としては、「昨今の事情を鑑みて弊社ではリモートワークを導入いたしました」「昨今の情勢の中にも関わらず業績はうなぎ上りである」「昨今の状況を踏まえて当店では短縮営業を行っております」などがあります。
会話文ではなく、ニュースや紙面などの文語的な表現で使われる言葉です。
昨今の類語
昨今の類語・類義語としては、現世の世を意味する「現世」、いくつかに区切られた短い期間のうち現在の期間を意味する「今節」、今の世の中を意味する「当世」、近頃を意味する「輓近」(読み方:ばんきん)などがあります。
昨今の昨の字を使った別の言葉としては、今日の前の日を意味する「昨日」、今週の前の週を意味する「昨週」、去年の春を意味する「昨春」、昨日の夜を意味する「昨夜」などがあります。
近年の意味
近年とはどれくらい前の範囲か
近年とは、最近の数年間を意味しています。
近年の読み方
近年は「きんねん」という読み方をしますが、「こんねん」「ちかどし」といった読み方はしません。
表現方法は「近年まれに見る」「近年当たり前となった」「近年類を見ない」
近年を使った表現として、「近年まれに見る」「近年当たり前となった」「近年類を見ない」などの使い方があります。昨今ほど固い表現ではありませんが、最近と比べるとやや文語的な使われ方をします。
近年の使い方
近年を使った分かりやすい例としては、「近年まれに見るハードワークをこなす新入社員が入社してきた」「近年当たり前となったスマホだが昔は無かったものだ」「この野球選手は近年類を見ないホームランバッターである」などがあります。
近年の対義語
近年の対義語・反対語としては、過ぎ去った年を意味する「往年」があります。
近年の類語
近年の類語・類義語としては、現在の時代を意味する「現代」、この頃を意味する「近頃」があります。
近年の年の字を使った別の言葉としては、年と月を意味する「年月」、1年を単位として定めた給料を意味する「年俸」、太陽系以外の天体の距離を表す単位を意味する「光年」、多くの年月を意味する「多年」などがあります。
最近の意味
最近とはどれくらい前の範囲か
最近とは、現在より少し前のある時を意味しています。また、少し前から現在までの間も意味します。
表現方法は「ここ最近」「つい最近」「最近の状況」
「ここ最近」「つい最近」「最近の状況」などが、最近を使った一般的な言い回しです。
最近の使い方
最近を使った分かりやすい例としては、「ここ最近は体調がよく元気に仕事が出来ている」「つい最近我が家では犬を飼い始めた」「最近の状況が知りたいから近いうちにご飯でもいきましょう」などがあります。
「最近類」の意味
最近を使った言葉として「最近類」があります。これは、論理学の考え方の一つで、ある概念のすぐ上位にある似た概念を意味する言葉で、定義付けをする際に使います。例えば、人間とは理性的な動物である、という文であれば「動物」が最近類にあたります。
ちなみに、その動物とは、イヌやネコ、トラなども含み、その中でも理性があると他の種に差をつけています。そのため、ここでいう「理性的」の部分は種差と言います。
ただし、ここで使われている「最近」には年月に関する意味はなく、「最も近い」という意味で使われています。
最近の類語
最近の類語・類義語としては、数日来を意味する「日頃」、さしあたりを意味する「目下」、今の時世を意味する「今時」、まさに今を意味する「方今」(読み方:ほうこん)があります。
最近の最の字を使った別の言葉としては、最も悪い状態であることを意味する「最悪」、一番終わりを意味する「最終」、もっとも大きいことを意味する「最大」、一番適していることを意味する「最適」などがあります。
昨今の例文
この言葉がよく使われる場面としては、今日この頃を意味する時などが挙げられます。
どの例文も、過去3年ほどの記憶しているだろう頃から現在に至るまでを指しています。そのため、さらに過去を表すような「近年」と「昨今」に置き換えて使うことはしません。
近年の例文
この言葉がよく使われる場面としては、過去5年間ほどを意味する時などが挙げられます。
どの例文も過去から現在に至るまで、継続的に行われている行動です。そのため、「近年」と一時的な部分を表す「最近」と置き換えて使うことはできません。
最近の例文
この言葉がよく使われる場面としては、少し前から今現在を意味する時などが挙げられます。
どの例文も、ここ数日や、1~2週間を指し、長くとも1か月程度を表します。場合によっては3か月や1年を表すこともありますが、2年や3年を表す場合は「近年」を使うのが好ましいです。
昨今と近年と最近どれを使うか迷った場合は、覚えてる範囲の数年間を表す場合は「昨今」を、過去5年から現在までの数年間を表す場合は「近年」を、少し前から現在を表す場合は「最近」を使うと覚えておけば間違いありません。