似た意味を持つ「私儀」(読み方:わたくしぎ)と「私事」(読み方:わたくしごと)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「私儀」と「私事」という言葉は、どちらも個人的な事柄を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
私儀と私事の違い
私儀と私事の意味の違い
私儀と私事の違いを分かりやすく言うと、私儀とは文語的表現、私事とは口語的にも文語的にも使われるという違いです。
私儀と私事の使い方の違い
一つ目の私儀を使った分かりやすい例としては、「私儀、このたび入籍したことをご報告いたします」「さて私儀一身上の都合により休職いたします」「私儀、恐縮でございますが」「私儀、今般グループ長に拝命しました」などがあります。
二つ目の私事を使った分かりやすい例としては、「私事にわたって恐縮ですが」「明日は私事で欠勤します」「私事に属することは言わなくて結構です」「人の私事に立ち入るな」「あなたにだけ私事を明かします」などがあります。
私儀と私事の使い分け方
私儀と私事という言葉は、どちらも公や他人に関わらない、個人的なことを意味します。二つの言葉は「自分のことで恐れ多いのですが」というニュアンスで、自分をへりくだった表現ですが、使い方には違いがあります。
私儀とは、冠婚葬祭などの大きな事柄や儀礼的な挨拶文のなかで、もっぱら文章語として使われます。一方、私事とは、比較的小さな事柄にも用いられ、書き言葉だけでなく話し言葉にも使われています。
なお、私事は「しじ」と音読みすることも出来ますが、私儀は「しぎ」という読み方はありませんのでご注意ください。
私儀と私事の英語表記の違い
私儀を英語にすると「I」「as for me」「undersigned」となり、例えば上記の「私儀、ご報告いたします」を英語にすると「I beg to report」となります。
一方、私事を英語にすると「private affair」「private matter」「personal secret」となり、例えば上記の「私事にわたって恐縮ですが」を英語にすると「Excuse me for being personal affair」となります。
私儀の意味
私儀とは
私儀とは、私個人に関してを意味しています。
私儀の使い方
私儀を使った分かりやすい例としては、「私儀、病気療養のため休職いたしたくお届けいたします」「私儀、昨年春に定年退職いたしました」「私儀、このたび代表取締役に就任いたしました」などがあります。
その他にも、「私儀、今般転勤となりましたことをご報告致します」「私儀、このたび恩師夫妻の媒酌により結婚式をあげることになりました」「退職届けの書き出しに私儀と書く」などがあります。
私儀という言葉は、自称を表し、私個人に関しての意で、多く届け書や候文などで自分の事を言い出すときに用いる言葉です。「私のことですが…」と自分のことをへりくだって表現したい時に使われています。
文書に「私儀」を用いる場合に、押さえておきたいポイントが二つあります。一つ目は、文字の大きさです。「私儀」という文字は、本文の文字の大きさよりも小さめにします。二つ目は、「私儀」が行末にくるように配置します。「私儀」で書き出す場合は、行末から書き出すことになります。
私儀の対義語
私儀の対義語・反対語としては、公的な事柄やおおやけごとを意味する「公儀」、公的な手続きを踏んで物事を行うことを意味する「公式」などがあります。
私儀の類語
私儀の類語・類義語としては、その人自身の身の上や境遇などに関することを意味する「一身上」、自分自身の事情によることを意味する「自己都合」、個人や家庭内の私事や私生活を意味する「プライバシー」などがあります。
私事の意味
私事とは
私事とは、公的でない、自分だけに関係した個人的な事柄を意味しています。
その他にも、自分だけのこととして秘密にしていることの意味も持っています。
表現方法は「私事で申し訳ありません」「私事で恐縮ですが」「私事ですが」
「私事で申し訳ありません」「私事で恐縮ですが」「私事ですが」などが、私事を使った一般的な言い回しです。
私事の使い方
「明日は私事都合のため早退します」「私事に属する話はしたくない」「私事に立ち入るのは止めてください」「私事で恐縮ですが、お休みを頂けますでしょうか」「私事のため欠席します」などの文中で使われている私事は、「自分だけに関係した個人的な事」の意味で使われています。
一方、「あの人には私事を明かそうかな」「私事を暴いて弱みを握る」「墓場まで持っていくつもりの私事だ」「私事が多くてミステリアスな人だ」などの文中で使われている私事は、「秘密にしていること」の意味で使われています。
私事という言葉は、自分個人のことや私生活に関係したことの意味と、秘密にしておきたいことや隠しごと、という複数の意味があります。
私事の読み方
私事は、「わたくしごと」「しじ」という二通りの読み方があり、「わたくしごと」は話し言葉で使われ、「しじ」は書き言葉で使われる傾向があります。
「私事情」は誤字
私事の間違えやすい言い回しには「私事情」があり、正しくは「諸事情」です。諸事情とは、さまざまな都合や、もろもろの理由を意味し、あれこれの事情や理由のあることを婉曲に示す言葉です。
私事の対義語
私事の対義語・反対語としては、公務または公共に関する事柄を意味する「公事」、自分には関係のないことや他人に関することを意味する「人事」、おおやけの用事や公共団体または勤務する会社などの用務を意味する「公用」などがあります。
私事の類語
私事の類語・類義語としては、自分個人の用事を意味する「私用」、個人的な感情や私意を意味する「私情」、他人に知られないようにしている事柄を意味する「隠し事」、秘密の事柄やないしょごとを意味する「密事」などがあります。
私儀の例文
この言葉がよく使われる場面としては、私個人に関してを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4のように、私儀という言葉はビジネス文や挨拶文で、自分のことをへりくだった表現をしたい時に使われています。例文5にあるように「私儀」を使う時にはルールがあるので、気をつけましょう。
私事の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分個人のことや私生活に関係したこと、他人に知られたくない秘密を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4で使われている私事は、公的でない自分だけに関係した個人的な事柄を意味します。例文5にある私事は、自分だけのこととして秘密にしていることの意味で使われています。
私儀と私事という言葉は、どちらも「個人的なこと」を意味しますが、使い方は異なります。どちらの言葉を使うか迷った場合、大きな事柄に対して文語的表現をしたい時は「私儀」を、小さな事柄に対して自分のことを表現したい時は「私事」を使うようにしましょう。