【嫌】と【厭】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

同じ「いや」という読み方、似た意味をもつ「嫌」と「厭」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分けを参考にしてみてください。

「嫌」と「厭」という言葉は、どちらも拒否感・不快感を表現するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




嫌と厭の違い

嫌と厭の意味の違い

嫌と厭の違いを分かりやすく言うと、嫌というのは、ある物事に対する不快感を全般的に意味していて、厭というのは、ある物事に飽きることから生じる拒否感を意味しているという違いです。

嫌と厭の対義語の違い

対義語・反対語は両方共通で、「好き」「好む」などです。

嫌と厭の使い分け方

嫌とは、ある物事に対して抱く不快な感情のことを全般的に意味しています。不快であるため、その物事を欲しない、遠ざけておきたいということが、暗に言われています。物事に対する感情のことなので、なぜ嫌なのかという理由がない場合もあります。

厭とは、嫌の一種で、飽き飽きしている、あきれ果てる、うっとうしいという意味合いをもちます。物事を自分から遠ざけておきたいという意味合いをもつ「嫌」に似て、「厭」には、自分の方が嫌な物事から距離を取りたいという意味合いがあります。

例えば、この世は不幸に満ち溢れているので、執着しても仕方がないと考えることを意味する「厭世観」(読み方:えんせいかん)という言葉を考えると、「厭」が自分の方から離れていきたいという意味合いを持つことが分かりやすくなります。

ただし、「厭」は常用外漢字なので、公的文書ではもっぱら「嫌」の字が使われることに注意が必要です。

嫌の意味

嫌とは

嫌とは、ある物事を不快に感じて、自分から遠ざけておきたい気持ちを意味しています。

嫌の使い方

嫌の使い方として、例えば「この道は嫌だ」というのは、その道を避けようとする気持ちのことです。

「嫌」と関係する言葉として、感動詞の「否」(読み方:いや)があります。「否、要りません」という時に使われる言葉ですが、現在はふつう、漢字では表記されません。

嫌の類語

嫌の類語・類義語には、人を嫌うことを意味する「悪感情」(読み方:あくかんじょう)、嫌いで許せないことを意味する「憎悪」、主に宗教や思想良心的理由から避けることを意味する「忌む」などがあります。

嫌の字を使った別の言葉としては、とても憎々しく思うことを意味する「嫌悪」、いまわしく思うこと、嫌って避けることを意味する「嫌忌」(読み方:けんき)、悪事の疑いをかける「嫌疑」、気分を意味する「機嫌」などがあります。

厭の意味

厭とは

厭とは、習慣的・反復的・永続的な物事に対して不快感を持つ気持ちを意味しています。分かりやすく言うと、毎日のように繰り返されることに対する不快な感情のことを、厭と表現します。

厭の使い方

「もう飽きている」「あきれ果てる」「うんざりしている」「うっとうしい」と感じる時の不快感と考えれば分かりやすいです。また、そうしたあきれた状況に対して、自分から離れていきたいという意味合いも、厭には含まれています。

「毎日学校にいくのが面倒くさい」という状況には、嫌よりも厭の方が本来は適切です。しかし、厭は常用外漢字なので、この状況が続けば、今後はニュアンスの違いが解消して、単なる嫌の古形となる可能性があります。

厭の類語

厭の類語・類義語としては、二度といやなことを意味する「懲り懲り」(読み方:こりごり)があります。また、「厭う」(読み方:いとう)という使い方をすると、嫌うという意味はなくなり、気遣うという意味になります。

厭の字を使った言葉としては、あきれ果てて嫌悪することを意味する「嫌厭」、飽きて嫌になることを意味する「倦厭」などがあります。

嫌の例文

1.人の嫌がることをしてはいけないというのが、母の口癖だ。
2.いやいやながら引き受けた仕事なので、身が入らない。
3.世の中嫌な人ばかりだと思っていたけれど、住み移った町では良い人と多く付き合えている。
4.街中でトラブルを見かけると、自分には関係がなくても嫌な気持ちになる。
5.社会の中では、右を見ても左を見ても辛い出来事ばかりで、この世が嫌になってきた。

この言葉がよく使われる場面としては、物事に対する拒否感を表現したい時などが挙げられます。嫌な物事には、自分から遠ざけておきたいという感情が自然に湧いてきます。例文4で、そのことが直接的に表現されています。

例文2の「いやいや」は、漢字で書くと「嫌嫌」「嫌々」ですが、文法的に副詞に分類されるものは、基本的にはひらがなで表記します。これは「漢字常用表」に基づく内閣訓令「公用文における漢字使用等について」によって定められた指針です。

例文5の状況には、嫌よりも厭の方を使うのを適切ですが、厭は常用外漢字なので、一般的には嫌で代用されます。

厭の例文

1.単調な毎日が厭になって全く見知らぬ土地に行ってみた。
2.両親の言い分に対して、何度も違うと言い続けてきたが、聞く耳を持ってくれないので厭になってきた。
3.今回はさすがに呆れてものも言えなくなって、厭というのはこういう気持ちなんだと理解した。
4.厭になってやめた仕事だったが、離れてみると良い面もあったと思えてきた。
5.田舎は退屈で厭だったので、都会に出て住み込みで働く方が気が楽だった。

この言葉がよく使われる場面としては、ずっと続いていたり、何度も繰り返されていて不快に感じる物事を表現したい時などが挙げられます。厭なことは多くの場合、具体的な何かよりも、事情・状況になってしまっているので、遠ざけることが難しいです。

そのため、厭には「自分の方から捨て去って離れていきたい」という意味合いが込められます。程度の差はあれ、どの例文にもそうした意味合いがあることが掴めるようになって下さい。

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