似た意味を持つ「心労」(読み方:しんろう)と「心痛」(読み方:しんつう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「心労」と「心痛」という言葉は、どちらも精神的な苦痛を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
心労と心痛の違い
心労と心痛の意味の違い
心労と心痛の違いを分かりやすく言うと、心労とは長期的な問題に対して使われ、心痛とは重大な問題や大きな不幸に対して使われるという違いです。
心労と心痛の使い方の違い
一つ目の心労を使った分かりやすい例としては、「国王は心労のあまり病に臥した」「離婚した女優に心労を心配する声が集まっている」「心労とストレスの違いついて調べてみた」「ご心労はいかばかりかとお察しします」などがあります。
二つ目の心痛を使った分かりやすい例としては、「喪主が挨拶とともに心痛の涙を流した」「ご心痛いかばかりかと拝察します」「被災された方々のご心痛は計り知れません」「動悸や心痛で受診する人が増えている」などがあります。
心労と心痛の使い分け方
心労と心痛という言葉は、どちらも困難な問題により精神的に苦しむことを表しますが、微妙に意味や使い方は異なります。
心労とは、あれこれ心配して精神的に疲れることを意味し、困難な問題に長くかかわっている場合に使われます。問題が長く解決しない場合に用いられ、ビジネスシーンでも使われる言葉です。
心痛とは、心配事によって心を痛めることを意味し、問題が大き過ぎて悩みが痛みとなるほど強い場合に使われます。大きな不幸に対して用いられ、主にお悔みの場で使われる言葉であり、ビジネスシーンではあまり使われない言葉です。
これらが、心労と心痛という言葉の明確な違いになります。
心労と心痛の英語表記の違い
心労を英語にすると「anguish」「mental exhaustion」「anxiety」となり、例えば上記の「心労のあまり」を英語にすると「as a result of excessive anxiety」となります。
一方、心痛を英語にすると「worry」「mental agony」「heartache」となり、例えば上記の「心痛の涙」を英語にすると「tears of heartache」となります。
心労の意味
心労とは
心労とは、あれこれ心配して心を使うこと、それによる精神的な疲れを意味しています。
表現方法は「心労を抱える」「心労を重ねる」「心労が絶えない」
「心労を抱える」「心労を重ねる」「心労が絶えない」などが、心労を使った一般的な言い回しです。
心労の使い方
心労を使った分かりやすい例としては、「ご心労お察しします」「環境変化により心労がたたることが予想される」「心労を抱えると笑えなくなる」「子供を心配するあまり親として心労が募る」「中間管理職は心労がたまる」などがあります。
その他にも、「次々に問題が生じて心労が重なる」「心労を和らげるアロマです」「親に心労を与える結果になってしまった」「母の心労を思うと申し訳ない」「父は心労のあまり倒れてしまった」などがあります。
心労という言葉は、あれこれ心配して悩み精神的に疲れることを意味し、困難な問題に長く関わっている場合に用いらる言葉です。日常的な問題に対しては心労という言葉ではなく、「気苦労」や「気疲れ」が使われています。
目上の人には「ご心労」と丁寧な表現を
心労は、自分の精神的疲労を表すことができる言葉ですが、重みのある言葉なので大げさな印象を与えてしまう可能性があります。そのため、一般的には他人に対して、相手の心や体の状態を心配する意味で使用することが多い言葉です。特に目上の人に対しては、「ご心労」と丁寧な表現をします。
心労の類語
心労の類語・類義語としては、心づかいや緊張などのため精神的に疲れることを意味する「気疲れ」、あれこれと気を使って精神的に疲れることを意味する「気苦労」、心配することや悩むことを意味する「気に病む」などがあります。
心痛の意味
心痛とは
心痛とは、心配して深く思い苦しむこと、心を痛めることを意味しています。
その他にも、胸が痛くなることの意味も持っています。
表現方法は「心痛の思い」「心痛を感じる」「心痛の極み」
「心痛の思い」「心痛を感じる」「心痛の極み」などが、心痛を使った一般的な言い回しです。
心痛の使い方
「さぞご心痛のことと思います」「ご心痛お察しいたします」「親に心痛をかけるん」「不慮の事故が相次ぎ心痛の極みであります」「子供を取り巻く環境に心痛を深めている」などの文中で使われている心痛は、「心配して深く思い苦しむこと」の意味で使われています。
一方、「心痛といっても必ずしも重大な病気とは限らない」「狭心痛の発作が繰り返し起こった」「心痛を感じるので診察を受けた」などの文中で使われている心痛は、「胸が痛くなること」の意味で使われています。
心痛という言葉は、上記の例文にあるように二つの意味を持ちますが、一般的には「心配して深く思い苦しむこと」の意味で使われています。心痛とは、文字の通りに「心を痛めること」ですが、単なる気苦労ではなく、問題が重大で悩みが痛みとなるほど強い場合に用いられる言葉です。
「ご心痛」はお悔やみの言葉で使われる敬語表現
心痛はお悔みの言葉に使われており、「ご遺族の皆様には、さぞ御心痛のことと思います」などと表現します。心痛とは、愛する人を失った激しい悲しみや大きな不幸に対して用いられる言葉です。「御心痛」は「心痛」に尊敬を表す接頭語「御」を付けた敬語表現です。「ご心痛」とも書き表します。
「心痛をかける」は誤り
心痛を用いた誤った言い回しには「心痛をかける」があります。正しくは「心労をかける」であり、ある事で他人に精神的な疲れを感じさせることを意味します。
心痛の類語
心痛の類語・類義語としては、物事の先行きなどを気にして心を悩ますことを意味する「心配」、気がかりで落ち着かないことを意味する「不安」、心配することや思いわずらうことを意味する「憂慮」、胸部の痛みを意味する「胸痛」などがあります。
心労の例文
この言葉がよく使われる場面としては、あれこれ心配して悩み気苦労することを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「心労が絶えない」とは、精神的な疲れになることが絶え間なく起こり、心が休まらない状態を表します。例文2にある「心労を重ねる」とは、心配事がいくつもあり、気苦労が積み重なる様子を表します。例文4にある「心労を抱える」とは精神的苦痛を保ち続けている状態のことです。
心痛の例文
この言葉がよく使われる場面としては、深く思い悩んで心を痛めること、胸部の痛みを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4にある心痛は「深く思い悩んで心を痛めること」の意味で使われ、例文5にある心痛は「胸部の痛み」の意味で使われています。例文1や例文2のように、心痛は主にお悔みの場で使われる言葉です。また、例文3や例文4のように災害などの大きな不幸に対しても使われています。
心労と心痛という言葉は、どちらも精神的な苦痛を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、あれこれ心配して悩み気苦労することを表現したい時は「心労」を、深く思い悩んで心を痛めることを表現したい時は「心痛」を使うようにしましょう。