同じ「いぜん」という読み方の「以前」と「依然」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「以前」と「依然」という言葉は同音の言葉ですが、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
以前と依然の違い
以前と依然の意味の違い
以前と依然の違いを分かりやすく言うと、以前とは過去や前の段階を意味し、依然とは変わらない状態を意味するという違いです。
以前と依然の使い方の違い
一つ目の以前を使った分かりやすい例としては、「ずっと以前から愛用しているヘアブラシです」「以前より背が伸びたね」「2010年以前に発表されたモデルです」「以前住んでいた土地で馴染みがある」などがあります。
二つ目の依然を使った分かりやすい例としては、「彼の態度は依然として変わらない」「振り込め詐欺の被害が依然多発しています」「相談しても依然として不安が残る」「旧態依然のお役所仕事だ」などがあります。
以前と依然の使い分け方
以前と依然という言葉は、どちらも「いぜん」と読み、ビジネスシーンや日常生活で使われる言葉ですが、意味は異なるので注意が必要です。以前とは、ある時点より前の過去や前の段階を意味し、依然とは変わらない状態を意味します。
上記の例文の「以前から愛用している」とは、昔からずっと愛用していることを表します。「依然として不安が残る」とは、前と変わらずに不安が残っていることを表します。以前と依然という言葉は、同音異義語のため、互いに置き換えて使うことはできません。
以前と依然の英語表記の違い
以前を英語にすると「ago」「before」「previous」となり、例えば上記の「ずっと以前」を英語にすると「a long time ago」となります。一方、依然を英語にすると「still」「as yet」「as it has been」となり、例えば上記の「依然として変わらない」を英語にすると「still unchanged」となります。
以前の意味
以前とは
以前とは、その時よりも前を意味しています。
その他にも、今より前の時点、ある状態に達する前の段階の意味も持っています。
以前の使い方
「締切日以前に提出しました」「7月27日以前に旅行を予約しました」「明治以前の元号の決め方は様々だ」「昭和以前からのロングセラー商品です」などの文中で使われている以前は、「その時よりも前」の意味で使われています。
一方、「以前と比べて犬が好きになった」「以前よりも早く計算できる」などの文中で使われている以前は「今より前の時点」の意味で使われ、「英文契約書を書けないのは英語以前の問題だ」「能力以前の問題だ」などの文中で使われている以前は「ある状態に達する前の段階」の意味で使われています。
以前という言葉は上記の例文にあるように三つの意味があるので、文脈により捉える必要があります。
「締切日以前」「30日以前」は基準日を含む
「その時よりも前」の意味では、「締切日以前」「30日以前」のように「〇〇以前」と基準となる期日や日付と組み合わせて使われます。この場合、基準となる期日や日付を含んで、それより前の過去を意味することに注意しましょう。例えば「30日以前」は、30日を含んでそれより前のことです。
「以前より」「以前から」は今より過去を表す
「今より前の時点」の意味では、基準となる期日や日付などと組み合わせずに単独で使われます。「以前より速く走れるようになった」のように現在の状況と比べる時に用いたり、「以前お会いしましたね」のように漠然とした過去を表すこともあります。
「以前の問題」「それ以前に」は達する前の状態を表す
「ある状態に達する前の段階」の意味では、名詞と結びついて表現されることが多くあります。上記の例文の「英文契約書を書けないのは英語以前の問題」とは、英語が出来ないから英文契約書が書けないのではなく、契約内容が固まっていなかったり内容を理解していないから書けないことを表します。
以前の対義語
以前の対義語・反対語としては、その後やその時よりのちを意味する「以後」、ある時からのちを意味する「以降」、その時よりこのかたを意味する「以来」、現在のあとに来る時を意味する「未来」などがあります。
以前の類語
以前の類語・類義語としては、過ぎ去った時や以前を意味する「往時」現在より以前の時や過ぎ去った時を意味する「過去」、今より前やこれまでを意味する「従前」、ずっと前を意味する「前前」、過ぎ去ったある日を意味する「過日」などがあります。
依然の意味
依然とは
依然とは、もとのままであるさま、前のとおりであるさまを意味しています。
表現方法は「依然として」「依然変わらず」「依然として変わらない」
「依然として」「依然変わらず」「依然として変わらない」などが、依然を使った一般的な言い回しです。
依然の使い方
依然を使った分かりやすい例としては、「依然として問題は未解決のままである」「容体は依然、予断を許さない状況です」「依然としてビジネス英語が身につかない」「旧態依然が許される業界だ」などがあります。
その他にも、「怪我が依然として治らない」「景気は依然変わらず回復しません」終盤に入っても依然、対局は膠着状態のままだ」「彼女は依然変わりなく独り身です」「旧態依然に依存する怠慢な政治家だ」などがあります。
依然という言葉の「依」とは、そのままであること、元のままであることを意味します。状態を表す語である「然」と結びつき、依然とは、ある事物の状態が長い間変わらないで同じであるさまや、元のままであるさまを意味します。
四字熟語「旧態依然」の意味
依然という言葉を用いた四字熟語には「旧態依然」があり、昔のままで少しも進歩や発展がないさまを意味します。「旧態」は昔からの状態のこと、「依然」はもとの通りのさまであり、良くない意味で用いられる言葉です。対義語には「日進月歩」があり、日に日に絶えず進歩することを意味します。
「それ依然の問題」は誤り
依然を用いた誤った言い回しには「それ依然の問題」があります。正しくは「それ以前の問題」であり、その事柄の前の段階に属する問題であることを意味します。
依然の対義語
依然の対義語・反対語としては、予期しないことが急に起こるさまを意味する「突然」、何の前触れもなく物事が起こるさまを意味する「突如」、だしぬけであることを意味する「唐突」などがあります。
依然の類語
依然の類語・類義語としては、以前の状態が現在も続いているさまを意味する「今猶」、今までと変わったようすが見られないさまを意味する「相変らず」、以前と比べて違いがないさまを意味する「やはり」、以前のままであるさまを意味する「未だ」などがあります。
以前の例文
この言葉がよく使われる場面としては、その時よりも前、現在から見て近い過去、ある状態に達する前の段階を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある以前は「その時よりも前」の意味で使われ、この場合は2019年を含んだ過去を意味します。例文2や例文3にある以前は「現在から見て近い過去」の意味で使われています。
例文4や例文5にある以前は「ある状態に達する前の段階」の意味であり、例文4にある「常識以前」とは人間性やモラルに問題があるのではないかと揶揄する表現です。
依然の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある事物の状態が長い間変わらないで同じであるさまを表現したい時などが挙げられます。
例文2や例文3にあるように依然という言葉は「依然として」の形で、「相変わらず」「前と変わらず」といった意味で使われることが多くあります。「依然」と同じ意味であり、語呂の良し悪しによって「依然」「依然として」どちらを使うか選ベば良いでしょう。
以前と依然という言葉は、どちらも「いぜん」と読む同音異義語です。どちらを使うか迷った場合、ある時点より過去のことや前の段階を表現したい時は「以前」を、状態が変わらないことを表現したい時は「依然」を用いれば間違いないでしょう。