似た意味を持つ「危機感」(読み方:ききかん)と「危機意識」(読み方:ききいしき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「危機感」と「危機意識」という言葉は、どちらも危機が迫っていると感じることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
危機感と危機意識の違い
危機感と危機意識の意味の違い
危機感と危機意識の違いを分かりやすく言うと、危機感とは危険が迫っている緊迫感を意味し、危機意識とは緊迫感だけでなく、秩序や価値観が崩れているという意識の意味も持つという違いです。
危機感と危機意識の使い方の違い
一つ目の危機感を使った分かりやすい例としては、「突然の激しい揺れに危機感を覚えた」「感染症流行に強い危機感で対応する」「現状に満足することなく危機感を持って働こう」「内閣支持率の低下に与党は危機感を募らせる」などがあります。
二つ目の危機意識を使った分かりやすい例としては、「黒船来航で危機意識の高まった」「震災を経験した住民は危機意識が高い」「市民の健全な危機意識の醸成していく」「大企業の社員は危機意識が低い」などがあります。
危機感と危機意識の使い分け方
危機感と危機意識という言葉は、どちらも危険な状況や危うい状態が迫っている時に感じる緊迫感や不安感を表す言葉です。上記の例文の「黒船来航で危機意識の高まった」の危機意識は、危機感という言葉に置き換えることができます。
さらに、危機意識は、既存の秩序や価値観が激しく動揺し、崩壊に向かっていると意識することの意味も持っています。上記の「大企業の社員は危機意識が低い」の危機意識はこの意味で使われ、危機感という言葉に置き換えることはできません。
二つの言葉の異なる点である「感」はもっぱら心の動きを表しますが、「意識」には心の状態だけでなく、物事の気づきや社会的関心の意味もあります。この点からも、危機感と危機意識という言葉の違いは明らかでしょう。
危機感と危機意識の英語表記の違い
危機感も危機意識も英語にすると「sense of crisis」「sense of impending crisis」となり、例えば上記の「危機感を覚える」を英語にすると「feel a sense of danger」となります。
危機感の意味
危機感とは
危機感とは、今のままでは危ないという不安や緊迫感を意味しています。
表現方法は「危機感がない」「危機感が足りない」「危機感を持つ」
「危機感がない」「危機感が足りない」「危機感を持つ」「危機感にかられる」などが、危機感を使った一般的な言い回しです。
危機感の使い方
危機感を使った分かりやすい例としては、「テスト前なのに危機感がないので心配だ」「息子は受験生なのに危機感が薄い」「模試の結果の悪さに危機感を覚える」「危機感を持つことで本気になれる」などがあります。
その他にも、「政府の危機感の欠如には驚くばかりだ」「メディアが危機感を煽るのも問題だ」「大企業には当事者意識や危機感がない人が多い」「危機感があるから知恵を絞って行動する」「健全な危機感を持つべきだ」などがあります。
危機感という言葉は、危機が迫っているときの緊張した感じや不安な感じや、このままでは危ないという感じを意味します。例えば、地震で急に大きな揺れを感知して危険だと感じたり、単位が足りそうになくて留年するかもと緊張したり、不況で会社が潰れるかもと不安に感じることなどを表します。
「危機感を感じる」は誤り
危機感を用いた誤った言い回しには「危機感を感じる」があります。これは、「腹痛が痛い」のような二重表現となるためです。二重表現を避けて、「危機感を抱く」「危機感を覚える」「危機感を持つ」などと表現するようにしましょう。
危機感の対義語
危機感の対義語・反対語としては、不安がなく心が安らかな感じを意味する「安心感」、気がかりなことが除かれ安心することを意味する「安堵」などがあります。
危機感の類語
危機感の類語・類義語としては、緊張した状態になることや追いつめられた状態になることを意味する「切迫」、状況などが非常に差し迫っていることを意味する「緊迫」、物事が差し迫った状態になることを意味する「急迫」などがあります。
危機意識の意味
危機意識とは
危機意識とは、危機が迫っているということを感じること、危機感を意味しています。
その他にも、既成の秩序や価値観が崩壊しつつあることを認識し、これに対処しなくてはならないとする自覚の意味も持っています。
表現方法は「危機意識が低い」「危機意識が高い」「危機意識を高める」
「危機意識が低い」「危機意識が高い」「危機意識を高める」などが、危機意識を使った一般的な言い回しです。
危機意識の使い方
「感染症に対する危機意識を高める」「経営陣の危機意識が低い」「ライバルや危機意識を持つと成長が早い」などの文中で使われている危機意識は、「危機が迫っていると感じること」の意味で使われています。
一方、「データ管理に対する危機意識が高まる」「社員への健全な危機意識の醸成プログラムです」「今後の見通しがなく危機意識の欠如がみられる」などの文中で使われている危機意識は、「秩序や価値観の崩壊を認識し対処しようとする自覚」の意味で使われています。
危機意識という言葉は二つの意味を持ち、どちらの意味でも使われているので、文脈により捉える必要があります。「危機が迫っていると感じること」の意味で使われている場合は、危機感という言葉に置き換えることが出来ます。
「危機意識の醸成」の意味
上記の例文の「危機意識の醸成」とは、自己の所属する組織の存在や世間一般の価値観が危うくなっているという認識から、主体的に対処しようとする意識を徐々に育てることを意味します。危機意識を持つことにより、変化に対応できる力をつけたり、成長を促すことができると考えられています。
危機意識の類語
危機意識の類語・類義語としては、危険な人やものと見なすことや危険であるとして扱うことを意味する「危険視」、危険や災害に備えてあらかじめ注意し用心することを意味する「警戒」、ある事態などの重要性を見抜いて主体的に関わろうとする心持ちを意味する「問題意識」などがあります。
危機感の例文
この言葉がよく使われる場面としては、今のままでは危ないという不安や緊迫感を表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2では「危機感が足りない」「危機感がない」ことを問題視していますが、危機感を抱くメリットの一つに本気で取り組むようになることが挙げられます。例文4にある「危機感の欠如」とは、必要である危機感が欠けていることを表します。
危機意識の例文
この言葉がよく使われる場面としては、危機が迫っているということを感じること、秩序や価値観の崩壊を認識し対処しようとする自覚を表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にある危機意識は、危機が迫っているということを感じることを意味します。例文3から例文5にある危機意識は、既成の秩序や価値観が崩壊しつつあることを認識して対処しなくてはならないとする自覚を意味します。
危機感と危機意識という言葉は、どちらも危機が迫っているという不安感や緊迫感を意味します。さらに危機意識には、秩序や価値観の崩壊を認識し対処しようとする自覚という意味もあることを覚えておきましょう。