似た意味を持つ「市中」(読み方:しちゅう)と「市内」(読み方:しない)と「市街」(読み方:しがい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「市中」と「市内」と「市街」という言葉は、街の中という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
市中と市内と市街の違い
市中と市内と市街の意味の違い
市中と市内と市街の違いを分かりやすく言うと、市中は日常生活において人が集まる場所を表現する時に使い、市内は行政区域の市全体を表現する時に使い、市街は都市の機能が集まる場所を表現する時に使うという違いです。
市中と市内と市街の使い方の違い
市中という言葉は、「市中感染を完全に避けることはできない」「市中銀行のための銀行が中央銀行である」などの使い方で、街の日常生活において人が集まるような場所を意味します。
市内という言葉は、「市内で有名な花火大会は雨で中止となった」「市内トップの功績を背に更なる高みを目指す」などの使い方で、行政区域として定められた市の区域内を意味します。
市街という言葉は、「旅行先の市街地にはお土産がたくさんある」「第二次世界大戦中の市街戦について調べる」などの使い方で、都市に必要な機能が集約される場所を意味します。
市中と市内と市街の使い分け方
市街とは、都市に必須な機能が集められた箇所に使われる言葉で、市内という言葉にも共通していますが、後者は本来行政区域として定められた市の全体を意味する言葉です。
また、市中も、市街と同じように街の中を意味する言葉ではありますが、日常生活において足を運ぶ場所を意味するため、繁華街以外の人が集まるような場所も含みます。そのため、表す場所がより広い順番に並べると、市内>市中≧市街となります。
例えば、横浜市全体を指すのであれば市内を、横浜駅やみなとみらい駅付近などの繁華街を指すのであれば市街を使います。市街のような場所だけではなく、他の人が集まるような場所も含む場合には市中を使います。
これが、市中、市内、市外の明確な違いです。
市中の意味
市中とは
市中とは、街の日常生活において人が集まるような場所を意味しています。
市中を使った言葉として、「市中感染」「市中銀行」があります。
「市中感染」の意味
一つ目の「市中感染」とは、繁華街での人との接触だけでなく、通勤通学途中や、食べたものに病原体が付着していたなど、いつも通りの生活を送っている中で起こるような病気の感染を指す言葉で、「市井感染」(読み方:しせいかんせん)とも言われます。
「新型コロナウイルスの市中感染」といった言葉をよく耳にしますが、どこで感染したのか、誰から感染したのかという経路が推定できる場合ではない時に使われます。
新型コロナウイルスに感染しても無症状の人もいるため、誰がウイルスを保持しているのか分かりません。誰もが持っている可能性を考えて、普段から手洗いなどの感染予防を徹底する必要があります。
「市中銀行」の意味
二つ目の「市中銀行」とは、一般の人からお金を預かり、事業者などにお金を貸し出す銀行を指す言葉で、「銀行」「市銀」などの呼ばれ方をしています。
民間のための市中銀行のための銀行が中央銀行であり、日本の中央銀行である日本銀行は「銀行の銀行」と呼ばれている機関です。
市中の類語
市中の類語・類義語としては、住宅や商店が集まっている場所を意味する「街中」(読み方:まちなか)、市街地の道路や広場を意味する「街頭」があります。
市内の意味
市内とは
市内とは、行政区域として定められた市の区域内を意味しています。
「市内局番」の意味
市内を使った言葉として、「市内局番」があります。これは電話番号を構成する番号の並びの一部分を指す言葉です。電話番号は、市外局番、市内局番、加入者番号の三つで構成されています。
例えば、「03-XXXX-YYYY」という電話番号の「03」は市外局番で東京に振り分けられた番号です。後ろの「XXXX」が市内局番にあたり、「YYYY」の部分が加入者番号にあたります。
本来は「03」などの市外局番からダイヤルをして電話を掛けますが、同じ地域の番号に電話を掛ける際は市外局番を抜いて、市内局番から入力しても電話は繋がります。ただし、同じ市内でない場合には間違い電話になってしまう場合もあります。
市内の対義語
市内の対義語・反対語としては、市の区域外もしくは市の周辺地域を意味する「市外」があります。
市内の類語
市内の類語・類義語としては、町の中を意味する「町内」、町の通りの曲がり角を意味する「街角」(読み方:まちかど)があります。
市街の意味
市街とは
市街とは、都市に必要な機能が集約されたにぎやかな場所を意味しています。
市街を使った言葉として、「市街戦」「市街電車」があります。
「市街戦」の意味
一つ目の「市街戦」とは、民間人が生活する市街地など建築物が存在する複雑な地形において行われる戦闘を指す言葉で、明治時代の旧幕府軍と新政府軍との間で起きた「戊辰戦争」も市街戦に該当します。
世界で起きた市街戦の多くが第二次世界大戦の間やそれ以降に起きているため、戦いに伴う建築物の爆破はもちろん、近代技術を駆使した戦い方が展開されました。
「市街電車」の意味
二つ目の「市街電車」とは、民間企業が運営していた路面電車を指す言葉で、市内電車とも呼ばれ、「市電」という略称があてられていました。
そのため、同じ略称だった「市営電車」と混同して使われるようになったことから、市を走る路面電車を指す言葉となりました。
今日にも残る東京都電は、もともと東京市を走る市営の路面電車であったことから、市電と呼ばれることもあり、路面電車ではない市営の鉄道を市電と呼ぶこともありました。
市街の対義語
市街の対義語・反対語としては、都市に隣接した地域を意味する「郊外」があります。
市街の類語
市街の類語・類義語としては、物事の中心となる部分を意味する「中心部」、商店などが建ち並び多くの人で賑わっている地域を意味する「繁華街」、大都会の中心部を意味する「都心」があります。
市中の例文
この言葉がよく使われる場面としては、日常生活において人が集まるような場所を意味する時などが挙げられます。
例文3の「市中引き回し」とは、江戸時代に行われた囚人に対する刑罰で、囚人を馬に乗せ、罪状を書いたものを掲げる人たちと共に刑場まで公開連行をする制度のことです。
市内の例文
この言葉がよく使われる場面としては、行政区域として定められた市全体を意味する時などが挙げられます。
基本的には、どの例文の市内も行政区分としての市の中を表す言葉であるため、市中や市街に置き換えて使うことはできません。
市街の例文
この言葉がよく使われる場面としては、都市に必要な機能が集約される場所を意味する時などが挙げられます。
例文2の「市街化区域」とは、住宅街や商業施設などを作って活性化させていく区域を指す言葉です。
例文3の「市街化調整区域」とは、住宅や施設などを出来るだけ作らず、活性化を行わない地域を指す言葉です。
市中と市内と市街どれを使うか迷った場合は、日常生活において人が集まる場所を表す場合は「市中」を、行政区域の市全体を表す場合は「市内」を、都市の機能が集まる場所を表す場合は「市街」を使うと覚えておけば間違いありません。