似た意味を持つ「失職」(読み方:しっしょく)と「失業」(読み方:しつぎょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「失職」と「失業」という言葉は、どちらも職を失うことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
失職と失業の違い
失職と失業の意味の違い
失職と失業の違いを分かりやすく言うと、失職とは職を失うことを表し、失業とは職を失うことだけでなく職に就けない状態も表すという違いです。
失職と失業の使い方の違い
一つ目の失職を使った分かりやすい例としては、「会社のリストラで失職することになった」「公務員が刑事事件を起こして失職する」「失職の場合は退職金を支給しない」「夫の失職は離婚理由になるだろうか」などがあります。
二つ目の失業を使った分かりやすい例としては、「失業保険の手続きを教えてください」「失業保険の金額を計算する」「コロナ禍で失業保険の受給者が増加している」「失業保険受給中にバイトしても良いですか」「失業中で求職活動しています」などがあります。
失職と失業の使い分け方
失職と失業という言葉は、どちらも就いていた職を失うことを意味する言葉です。この意味で使う場合、失職と失業のどちらを使っても間違いではありません。上記の例文の「リストラで失職する」の失職は失業に置き換えることが出来ます。ただし、失職よりも失業の方が一般的に用いられています。
共通する意味を持つ一方で、失業という言葉は、働く能力と意志を持ちながら職に就けない状態にあることの意味も持っています。上記の「失業中で求職活動しています」の失業は、この意味で使われており、失業を失職に置き換えることは出来ません。
失職と失業の英語表記の違い
失職も失業も英語にすると「unemployment」「loss of employment」「losing one’s job」となり、例えば上記の「リストラで失職する」を英語にすると「lose one’s job to corporate restructuring」となります。
失職の意味
失職とは
失職とは、今まで就いていた職を失うことを意味しています。
表現方法は「議員失職」「失職することになる」
「議員失職」「失職することになる」などが、失職を使った一般的な言い回しです。
失職の使い方
失職を使った分かりやすい例としては、「夫が失職したら生活はどうなるのだろう」「失職した場合に退職金はもらえますか」「公務員が逮捕されたら失職するだろう」「新型コロナウイルス感染症の影響を受けて失職しました」「この場合は懲戒免職ではなく失職になります」などがあります。
その他にも、「地方公務員法の規定により失職する」「失職町議が採決に参加する騒動があった」「失職し失業保険の対象となる」「統計によると失職者は減少傾向にあります」「会社都合の失職と自己都合の退職は違います」などがあります。
失職という言葉は、これまで就いていた職を失うことを意味します。広義では職業を失うことですが、狭義では公務員が本人の退職手続や懲戒処分などによらず、その職を失うことを表します。失職とは一般的にはあまり用いられず、公務員が有罪になり身分を失うなど、特殊なケースに使われる言葉です。
「失職証明書」は「退職証明書」の誤り
失職という言葉を用いた誤った言い回しには「失職証明書」があります。正しくは「退職証明書」であり、退職したことを証明する書類です。勤めていた会社が発行します。
失職の対義語
失職の対義語・反対語としては、職業につくことや新しく職を得て勤めることを意味する「就職」、仕事につくことや仕事を始めることを意味する「就労」などがあります。
失職の類語
失職の類語・類義語としては、失業して生活の手段を失うことを意味する「食上げ」、定まった職がないことを意味する「無職」などがあります。
失業の意味
失業とは
失業とは、職を失うことを意味しています。
その他にも、労働者が労働の能力と意欲とを持ちながら、労働の機会を得ることのできない状態の意味も持っています。
表現方法は「失業する」「失業した」「失業者を生み出す」
「失業する」「失業した」「失業者を生み出す」などが、失業を使った一般的な言い回しです。
失業の使い方
「失業保険期間がもうする終了する」「失業保険の計算方法を教えてください」「自己都合でも失業保険はもらえますか」「失業保険を会社都合退職でもらう」「失業保険の確定申告は必要ですか」などの文中で使われている失業は、「職を失うこと」の意味で使われています。
一方、「完全失業率は前月比横ばいでした」「我が国の潜在失業は意外と多い」「若者の高い失業率への対策が必要だ」などの文中で使われている失業は、「労働の能力と意欲を持ちながら、労働の機会を得ることのできない状態」の意味で使われています。
失業という言葉は、上記の例文のように二つの意味があり、どちらの意味でも用いられているため文脈により捉える必要があります。特に、仕事が無い状態で就業に向けた職探しを行っていることを指し、そのような人を「失業者」と言います。
「失業保険」の意味
上記の例文にある「失業保険」とは、労働者が失業した場合に、一定期間の所得保障を行うことによって、労働者の生活を保障しようとする社会保険の一種です。正式名称は「雇用保険」ですが、俗に「失業手当」とも言います。
「完全失業率」の意味
失業という言葉を用いた日本語には「完全失業率」があり、労働力人口に占める完全失業者の割合を意味します。完全失業者とは、働く意志と能力を持ちながら、就業の機会を得ず全く仕事に従事していない者を指します。
失業の対義語
失業の対義語・反対語としては、職業につくことを意味する「就業」、ある任務や職務につくことを意味する「就任」、役務や苦役などにつくことを意味する「就役」などがあります。
失業の類語
失業の類語・類義語としては、勤めを辞めさせられることを意味する「御祓箱」、職業に就いていないことを意味する「無業」などがあります。
失職の例文
この言葉がよく使われる場面としては、今まで就いていた職を失うことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、失職という言葉は、公務員が自主的な退職や任命権者の懲戒処分などによらず職を失うことに多く用いられています。例文5にある「首長」とは行政機関の長を意味する言葉であり、ここでは「市長」を指しています。
失業の例文
この言葉がよく使われる場面としては、それまでついていた職を失うこと、働く意思と能力がありながら就業の機会が得られない状態を表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「失業給付金」とは、雇用保険に加入していて、会社の倒産や解雇、自己都合の理由などで離職した人に対し、再就職を支援するために国から一定期間支給される手当のことです。「失業手当」とも言います。
失職と失業という言葉は、どちらも今まで就いていた職を失うことを表します。さらに失業という言葉には、働く意思と能力がありながら就業の機会が得られない状態の意味を持つことを覚えておきましょう。