似た意味を持つ「原体験」(読み方:げんたいけん)と「原風景」(読み方:げんふうけい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「原体験」と「原風景」という言葉は、どちらも人生観に影響を及ぼす記憶を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
原体験と原風景の違い
原体験と原風景の意味の違い
原体験と原風景の違いを分かりやすく言うと、原体験とは人生観に影響を及ぼす体験、原風景とは原体験を想起させる風景という違いです。
原体験と原風景の使い方の違い
一つ目の原体験を使った分かりやすい例としては、「私の原体験は小学校時代にあります」「五感を通じた原体験は大切です」「海外で暮らした原体験を英語の仕事に活かす」「原体験により負けず嫌いな性格になった」などがあります。
二つ目の原風景を使った分かりやすい例としては、「旅先で日本の原風景に出会う」「記憶の中の原風景をたどる」「それが原風景であり建築の原点です」「研究のきっかけとなった原風景がある」などがあります。
原体験と原風景の使い分け方
原体験と原風景という言葉は、どちらも人格形成や思想形成に影響を与える記憶を意味し、似たような表現をする言葉ですが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
原体験とは、人生観に影響を与えるような忘れられない幼少期の体験を意味します。幼少期に病気になり辛い経験をしたことから医者を目指すようになったなど、その後の生き方を左右するような体験のことです。
原風景とは、原体験を想い起させるようなイメージを意味します。前述した医者を目指すようになった原体験に対して、その原体験の際に見た白い病院の風景や、白衣を着た看護師の姿などが原風景になります。
原体験も原風景も人の物の考え方や感じ方に大きな影響を及ぼすものです。原体験はそのような体験であり、原風景は原体験を想起させるイメージであると覚えておきましょう。
原体験と原風景の英語表記の違い
原体験を英語にすると「formative experience」となり、例えば上記の「私の原体験」を英語にすると「my formative experience」となります。
一方、原風景を英語にすると「original landscape」となり、例えば上記の「日本の原風景」を英語にすると「Japanese original landscape」となります。
原体験の意味
原体験とは
原体験とは、その人の思想が固まる前の経験で、以後の思想形成に大きな影響を与えたものを意味しています。
原体験の使い方
原体験を使った分かりやすい例としては、「幼少期の原体験を通じて物事の本質を学ぶ」「原体験が知性の源となります」「原体験に何歳前までの定義はありません」「英語の原体験は近所のイギリス人との遊びです」などがあります。
その他にも、「あなたの原体験は何ですか」「就活の面接で原体験について質問された」「原体験を織り交ぜながらエントリーシートを書く」「志望動機と原体験が結びつかない」「原体験を心理学の観点から捉える」などがあります。
原体験とは、人の生き方や考え方に大きな影響を与える幼少期の体験のことです。原体験という言葉の「原」とは物事のもとや起こりを表し、「体験」とは自分で実際に経験することを表します。まだ人格形成がされていない幼少期の体験のうち、以後の生き方に影響を及ぼしたことを表す言葉です。
子どもの原体験の具体例
例えば、子どもの時に描いたお絵描きが親や友達に上手だと褒められ、絵を描くことが好きになり後にイラストレーターを目指すようになった場合、お絵描きを褒められた経験が原体験だと言えます。
原体験の類語
原体験の類語・類義語としては、考えや行動のもととなるところ物事を考えるときの出発点を意味する「原点」、物事を始める最初の時点を意味する「出発点」、大元にまで遡ることを意味する「遡源」などがあります。
原風景の意味
原風景とは
原風景とは、原体験におけるイメージで、風景のかたちをとっているものを意味しています。
原風景の使い方
原風景を使った分かりやすい例としては、「日本の原風景が残る山里を訪ねる」「人類共通の原風景がある」「有名建築家の原風景は何だろう」「日本人の原風景に関する論文です」「臨床心理学から原風景を研究する」などがあります。
その他にも、「近代的な建築に懐かしい原風景を見た」「原風景を心理療法に適用した事例です」「小説の主人公の原風景を読み解く」「原風景を生かすまちづくりの会を発足します」「日本の原風景に触れる旅がしたい」などがあります。
原風景とは、原体験を想起させるイメージのことです。原体験の際に見た実在する風景を指すだけでなく、現実ではなく原体験の際に心の中に思い描いたり、心に浮かんだ風景も指します。人生観を作るような忘れられない体験を想い起させるイメージであり、懐かしさの感情を伴うことが多くあります。
「日本の原風景」の意味
上記の例文にある「日本の原風景」とは、多くの日本人が思い描くであろう、本来の日本の風景、その風景が日本らしさをあらわすような風景の意味で使われる言葉です。明確な定義はありませんが、一般的に、のどかな田園風景や緑豊かな農村風景などを指します。
原風景の類語
原風景の類語・類義語としては、考えや行動のもととなるところを意味する「基点」、心の中に描き出される姿や心に浮かぶ像を意味する「心象」、ある物事についていだく全体的な感じを意味する「イメージ」などがあります。
原体験の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人格形成や行動の方向づけに影響を及ぼしている幼少期の体験を表現したい時などが挙げられます。
例文4に関して、原体験は何歳までの経験という定義はありませんが、大人になってからの経験は含まれません。原体験とは、幼少期の経験の中でも記憶の底にずっと残っており、その人に何らかの形で影響を与える体験のことです。
原風景の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人の心の奥にある原初の風景を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にあるように、原風景とは人それぞれ違うものです。多くは幼少期の生活環境が根本にありますが、旅行先で見た風景や思い描いたイメージの場合もあります。
原体験と原風景という言葉は、どちらも人生観に影響を及ぼす記憶を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、人生観を左右するような体験を表現したい時は「原体験」を、原体験を想起させるイメージを表現したい時は「原風景」を使うようにしましょう。