似た意味を持つ「形而上学」(読み方:けいじじょうがく)と「哲学」(読み方:てつがく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「形而上学」と「哲学」という言葉は、どちらも「事物の本質を探究する学問」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
形而上学と哲学の違い
形而上学と哲学の意味の違い
形而上学と哲学の違いを分かりやすく言うと、形而上学とは哲学の一つであり、哲学とは真理を探求する学問であるという違いです。
形而上学と哲学の使い方の違い
一つ目の形而上学を使った分かりやすい例としては、「アリストテレスは偉大な形而上学者です」「形而上学的段階を経て実証的段階になる」「環境問題を形而上学からアプローチする」「形而上学的な空論では役に立たない」などがあります。
二つ目の哲学を使った分かりやすい例としては、「哲学者たちは数々の名言を残している」「ニュースの本質を哲学で探る」「哲学のレポートの書き方を教えてください」「彼は哲学的な思考パターンを持っている」「自分なりの人生哲学を持とう」などがあります。
形而上学と哲学の使い分け方
形而上学と哲学は、どちらも事物の本質を探究する学問を表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
形而上学とは、哲学という学問の一つの分野であり、思考や直感によって世界の根本原理について研究しようとする学問のことです。研究の対象は、形を持たない神や霊、魂などなどが挙げられます。
哲学とは、あらゆるものの真理を探求する学問のことです。古代ギリシアでは学問全般を意味していましたが、現代では論理学、認識論、存在論、倫理学などの諸領域を指す言葉です。また、日常では「人生哲学」「経営哲学」のように、特定の人が見出した真理や理念を表すこともあります。
つまり、形而上学は哲学の一部であるため、形而上学よりも哲学の方が広い意味を持ち、汎用性のある言葉だと言えるでしょう。
形而上学と哲学の英語表記の違い
形而上学を英語にすると「metaphysics」「metaphysical philosophy」となり、例えば上記の「形而上学者」を英語にすると「a metaphysician」となります。
一方、哲学を英語にすると「philosophy」「doctrine」「ism」となり、例えば上記の「哲学者」を英語にすると「a philosopher」となります。
形而上学の意味
形而上学とは
形而上学とは、アリストテレスでは、あらゆる存在者を存在者たらしめている根拠を探究する学問、第一哲学を意味しています。
その他にも、「現象的世界を超越した本体的なものや絶対的な存在者を、思弁的思惟や知的直観によって考究しようとする学問」の意味も持っています。
形而上学の使い方
「形而上学の根本諸概念についての講義を受ける」「形而上学を独断論と呼んで批判した」「アリストテレスの形而上学を英語に翻訳した本です」などの文中で使われている形而上学は、「存在の根拠を探究する学問」の意味で使われています。
一方、「教授は形而上学的唯物論に異を唱えた」「形而上学的な奇妙さを感じる話である」「形而上学的魔法なのかもしれない」「カントは人倫の形而上学を提唱した」などの文中で使われている形而上学は、「思弁的思惟などによって考究しようとする学問」の意味で使われています。
形而上学の「形而上」とは、形がなく感覚ではその存在を知ることのできないものであり、時間や空間を超越した抽象的なものや理念的なもののことです。形而上学とは、事物の本質や存在の根本原理を探究する学問のことです。
「形而上学的唯物論」の意味
形而上学を用いた日本語には「形而上学的唯物論」があります。 弁証法的唯物論以外のすべての唯物論のことであり、自然現象を単なる機械的運動とみなし、社会現象を自然現象に還元する立場とするものです。
形而上学の対義語
形而上学の対義語・反対語としては、哲学で感性を介した経験によって認識できるものを意味する「形而下」、空間的な大きさや形をもつときの物質を意味する「物体」などがあります。
形而上学の類語
形而上学の類語・類義語としては、宗教において教理を体系化し真理性や実践について研究する学問を意味する「神学」、形而上学的であるさまを意味する「メタフィジカル」などがあります。
哲学の意味
哲学とは
哲学とは、世界や人生などの根本原理を追求する学問を意味しています。
その他にも、「各人の経験に基づく人生観や世界観、物事を統一的に把握する理念」の意味も持っています。
哲学の使い方
「教授は現代を代表する哲学者の一人です」「哲学者ニーチェの名言が好きです」「琵琶湖疏水に続く哲学の道を散策する」「思考実験上では哲学的ゾンビが存在します」「先生から哲学的で深遠な話を聞く」などの文中で使われている哲学は、「根本原理を追求する学問」の意味で使われています。
一方、「私なりの人生哲学があります」「社長の仕事の哲学に感銘する」「彼女は恋愛に対して独特の哲学を持っている」などの文中で使われている哲学は、「物事を統一的に把握する理念」の意味で使われています。
哲学とは、人生や世界、事物の根源の原理を、理性によって追求しようとする学問です。論理学、存在論、倫理学などの諸領域を指す言葉です。古代ギリシアでは学問一般を意味していましたが、のち諸科学と対置されるようになりました。
また、「人生の哲学」のように、自分自身の経験などから作りあげた人生観や世界観を表す時にも用いられています。
「数理哲学」の意味
哲学という言葉を用いた日本語には「数理哲学」があります。文字通り、数学に関連する事柄を研究する哲学のことであり、数学の方法や命題などについての哲学的考察を指す言葉です。19世紀におけるカントールの集合論の発見以来、数学基礎論と関連して進展しました。
哲学の対義語
哲学の対義語・反対語としては、一定の目的や方法のもとに種々の事象を研究する認識活動を意味する「科学」、自然界の現象を研究する学問の総称を意味する「自然科学」などがあります。
哲学の類語
哲学の類語・類義語としては、持ちつづけている考えや態度を意味する「主義」、堅く信じて守っている事柄を意味する「信条」、主義や学説を意味する「イズム」、純粋に理性によって立てられる超経験的な最高の理想的概念を意味する「理念」などがあります。
形而上学の例文
この言葉がよく使われる場面としては、あらゆる存在者を存在者たらしめている根拠を探究する学問、絶対的な存在者を考究しようとする学問を表現したい時などが挙げられます。
例文2にあるように、「形而上学」に対する言葉には「形而下学」があります。形而下学とは、形のある物質、植物、動物などについての科学のことです。自然学とも言います。
哲学の例文
この言葉がよく使われる場面としては、世界や人生などの根本原理を追求する学問、各人の経験に基づく人生観や世界観を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある哲学は、世界や人生などの根本原理を追求する学問の意味で用いられています。例文5の哲学は、経験に基づく人生観や世界観の意味で用いられています。例文4にある「哲学的」とは、哲学の立場に立って思いにふけるさまを表しています。
形而上学と哲学という言葉は、どちらも「事物の本質を探究する学問」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、絶対的な存在を探究しようとする学問を表現したい時は「形而上学」を、根本原理を追求する学問や経験に基づく人生観や世界観を表現したい時は「哲学」を使うようにしましょう。