似た意味を持つ「幽霊」(読み方:ゆうれい)と「妖怪」(読み方:ようかい)と「お化け」(読み方:おばけ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「幽霊」と「妖怪」と「お化け」という言葉は、どれも人知を超えた存在を意味しているという共通点がありますが、本来の意味は少し違います。
「幽霊」と「妖怪」と「お化け」の違い
「幽霊」と「妖怪」と「お化け」の使い分け方
幽霊と妖怪とお化けの違いを分かりやすく言うと、幽霊とは死後もさまよっている魂のこと、妖怪とは人の世の理を超えた存在で時には神様でもあるもの、お化けとは元々の姿や形から変化して不気味な存在を意味しているという違いです。
「幽霊」は「この世をさまよっている死者の魂」
一つ目の「幽霊」とは「この世をさまよっている死者の魂」のことです。死後、魂は本来であれば「幽世」(読み方:かくりよ)へと向かうものですが、未練があるためにこの世に留まり続けている存在が、幽霊と呼ばれます。
人間の幽霊がイメージされることが最も多く、ペットの動物の幽霊などは例外的なものと考えられています。日本では「死装束で足がない、特に女性の幽霊」がイメージされることが多く、西洋の足のある幽霊と対比されることもあります。
実は「死装束の足のない幽霊」というイメージが出来たのは比較的最近のことです。幽霊は古くは生前の姿で現れるものでしたが、江戸時代の中期ごろまでに、死装束で足のない幽霊というイメージが徐々に形成されていきました。
ただしこうしたイメージは幕末の時代でも完全に定着しきっていたとは言えず、足のある幽霊もいれば、ない幽霊もいると考えられていました。
「妖怪」は「人知を超えた存在」
二つ目の「妖怪」とは「人知を超えた存在」です。例えば鬼や天狗、河童や人魚や大蛇、そしてツチノコなどが含まれます。幽霊は死後の魂ですが、妖怪は自然の摂理を象徴するものであり、アニミズムと関わりがあると考えられています。
アニミズムとは、簡単にいうと万物に霊魂が宿ると考える思想のことで、「八百万の神」(読み方:やおよろずのかみ)もその一種です。例えば、天気が悪いのはお天道様の虫の居所が悪いからだと考えるのも、アニミズム的な発想だと言えます。
自然の摂理を象徴するという点で、妖怪と神様は同じような存在です。好かれているもの、敬われているもの、恵みをもたらしてくれるものが神様であるのに対して、不吉なものとして理解された神が妖怪という、表裏一体の関係にあるのが妖怪と神です。
例えば、神であったものが妖怪に転落したものとして、ヤマタノオロチがいます。ヤマタノオロチは元々は土地の守り神として祀られていましたが、スサノオノミコトに退治されて妖怪に転落しました。
また、神社やお寺などに祀られている妖怪もいます。このように、妖怪の中には神と同じものであるものも数多く存在しています。
「お化け」は「元々の姿や形から逸脱した存在」
三つ目の「お化け」とは「元々の姿や形から逸脱した存在、変身した存在」です。幽霊も妖怪もお化けに含まれることが多いです。
本来は霊魂であるはずの幽霊が、例えば死装束の姿で現れることを「化けて出る」と言います。単なる霊魂が変化して、目に見える姿になるので、幽霊は時としてお化けとも言われるのです。
また、妖怪もお化けに含まれます。例えばヤマタノオロチは、八つの尾を持つ巨大なヘビの姿をしていますが、この姿は元々のヘビの姿から甚だしく逸脱しています。
ヤマタノオロチの例から分かるように、「お化け」には「普通よりも巨大で異形のもの」という意味があります。例えばハロウィンでジャック・オー・ランタンを作るために使う大きなカボチャは「お化けカボチャ」と呼ばれることがあります。
「幽霊」の意味
「幽霊」とは
幽霊とは、死後もこの世をさまよい続けている死者の霊魂を意味しています。
死んだ後の魂が、あの世つまり「幽世」(読み方:かくりよ)へ向かうことなく、現世つまり「現世」(読み方:うつしよ)を人知れずさまよっている場合、この霊魂は幽霊と呼ばれます。
幽霊は足がなく死装束で現れる
日本の幽霊は足がなく死装束で現れるのに対して、西洋の幽霊は足があり生前と変わらない姿で現れるというイメージが一般的です。ただし、足がなく死装束というイメージは江戸時代の前期に出始めた、比較的新しいものでした。
幽霊は恨みや未練を残しているというイメージ
江戸時代には、幽霊の捉え方が大きく変わりました。死装束で足がない姿をしていること以外にも、恨みや未練を残しているというイメージも江戸時代に確立したものです。
それ以前の日本の幽霊は、足を持ち、生前と変わらない格好をして、怨恨や復讐よりも、生きている人に何か大切なことを伝えたりするものでした。凄惨なもの、恐ろしいものとしてイメージされるものではなかったのです。
四谷怪談や番町皿屋敷など、幽霊を主題に据えた怪談が1720年前後に作られたことによって、こうしたイメージが広がったと考えられています。
「地縛霊」「浮遊霊」「背後霊」「守護霊」は幽霊の種類
幽霊の中には、いくつか種類が考えられていて、特に特定の場所と結びつき、そこにしか現れない「地縛霊」(読み方:じばくれい)と、色々な場所に出没する「浮遊霊」(読み方:ふゆうれい)に大別されます。
その他にも、特定の人に取りついている「背後霊」(読み方:はいごれい)、守るためにその人についている「守護霊」(読み方:しゅごれい)などがあります。
「幽霊部員」「幽霊会社」などの使い方もある
「幽霊」という言葉には異界の存在を意味する使い方以外に、「書面の上では存在するけれども、実際には存在しないもの」という意味があります。例えば「幽霊部員」「幽霊会社」などの幽霊は、この用法です。
「幽霊」の類語
幽霊の類語・類義語としては、死者の魂を意味する「亡霊」、化物や妖怪を意味する「怪異」などがあります。
幽霊の幽の字を使った別の言葉としては、肉体とは離れて存在する精神を意味する「心霊」、暗くてかすかな状況を意味する「幽暗」、言葉に表すことの出来ないほのかな奥深さを意味する「幽玄」などがあります。
幽の字には「かすか、ほのか」という意味があることを知っていると、幽霊という言葉の意味が分かりやすくなります。
「妖怪」の意味
「妖怪」とは
妖怪とは、人知を超えた非科学的な存在を意味しています。
「妖怪」の使い方
例えば天狗や大蛇、猫又などが妖怪に含まれます。
妖怪は、自然の摂理を象徴する存在であり、アニミズムや八百万の神の考え方に根ざしています。アニミズムや八百万の神とは、あらゆる物に霊魂や神が宿っているとする考え方です。
そのため、妖怪の中には器物の姿をしているものもいます。例えば提灯お化けはその典型例です。
妖怪は神の一種と考えることが出来る側面を持っています。神様が人間に対して友好的なもの、幸運をもたらしてくれるものであるのに対して、不吉で不気味なものが妖怪とされています。
例えば天狗は、平安時代や鎌倉時代には仏僧の修行を妨げ、権力者に歯向かう妖怪と考えられていて、昭和の始め頃までは人をさらうものだと考えられ、恐れられていました。
他方、大きな火事が続発した江戸時代には、天狗は羽団扇で火を自由自在に操ることが出来ると考えられ、火事を防ぐ神として祀られることも多くありました。
「妖怪」の類語
妖怪の類語・類義語としては、「妖」(読み方:あやかし)、「物の怪」(読み方:もののけ)などがあります。指し示すものは妖怪と全く同じです。
「お化け」の意味
「お化け」とは
お化けとは、本来の姿から変身した姿、元々の姿を逸脱した存在を意味しています。
「お化け」の使い方
幽霊や妖怪の中には、お化けと呼ばれるものも多くいます。
幽霊は霊魂なので、本来は人に目に見えないはずです。しかし足のない恨みを抱いた表情で現れる場合、それはお化けでもあります。目に見えない霊魂という本来の姿ではなく、あたかも肉体を持つかのように現れるからです。
また妖怪でお化けと呼ばれるものとしては、ヤマタノオロチ、がしゃどくろ等がいます。ヤマタノオロチは八つの尾を持つ大蛇で、がしゃどくろは死者の骨が集まって出来た巨大なガイコツです。
それぞれ普通のヘビ、普通のガイコツから著しく逸脱した姿をしているので、お化けと呼ばれます。
これらの例から分かるように、「お化け」には「普通よりも巨大で異形のもの」という意味があります。例えば突然変異で巨大に成長したメダカをお化けメダカと呼ぶことがあります。
「幽霊」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、霊魂の姿になって現れるものを表現したい時などが挙げられます。幽霊は怨恨や未練などからあの世へ行くことが出来ず、現世をさまよっている死者の魂です。
幽霊は直接姿を見せなくとも、様々な仕方で人間に関与してくると考えられています。例文2の「心霊写真」はその典型例ですが、その他、例えば物がひとりでに動き出すポルターガイストは幽霊の仕業とされることもあります。
そうした幽霊の痕跡が見られるものは、基本的には忌み嫌われています。心霊写真は不吉で気味が悪いですし、心霊現象が起こる物件は家賃が極端に安くなったりします。
「妖怪」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人の理を超えた、非日常的、非現実的な存在を表現したい時などが挙げられます。妖怪は恐ろしいものとイメージされる傾向がありますが、それだけではなく、神と表裏一体の存在です。
良いものとして捉えられると神として祀られ、悪いものとして畏怖されると妖怪になるものが、数多くいます。
例えばヤマタノオロチは元々は神様でしたが、妖怪としてスサノオノミコトに退治されますし、天狗は人を恐怖に陥れる存在でもあれば、火事を防止する神として各地で祀られてもいます。
「神様でもある」という点は、妖怪を幽霊から分けるポイントにもなるので、ぜひ覚えておいてください。
今日、妖怪を元にしたアニメや漫画のキャラクターが数多くいますが、例文2のように、本来は畏怖すべき妖怪を児童向けにキャラクター化し、親しみが持てるようにすることは江戸時代の後期には既に始まっていました。
「お化け」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、不気味な姿をした物、特に幽霊や妖怪を表現したい時などが挙げられます。お化けという言葉は、幽霊と妖怪を含むものです。幽霊と出会った時「化けて出やがった」と言われるように、お化けは幽霊の言い換えでもあります。
「お化け」という言葉には超常現象以外の使い方もあります。「お化けカボチャ」「お化けメダカ」など、「通常よりも甚だしく大きいもの」を指すために使われる用法です。この使い方も是非とも覚えておきましょう。