似た意味を持つ「培う」(読み方:つちかう)と「養う」(読み方:やしなう)と「育む」(読み方:はぐくむ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「培う」と「養う」と「育む」という言葉は、大切に育てるという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「培う」と「養う」と「育む」の違い
「培う」と「養う」と「育む」の意味の違い
「培う」と「養う」と「育む」の違いを分かりやすく言うと、「培う」は時間を掛けて育てることを表現する時に使い、「養う」は生活の世話をすることを表現する時に使い、「育む」は発展させることを表現する時に使うという違いです。
「培う」と「養う」と「育む」の使い方の違い
「培う」という言葉は、「培ってきた関係が崩れるのは一瞬の出来事だった」「幼少期に培われた英語力は使わないうちに失われ始めた」などの使い方で、力や性質などを養い育てることを意味します。
「養う」という言葉は、「妻子を養うのに身を粉にしている」「読解力を養うために本を読む」などの使い方で、家族などの生活を自分の収入で面倒を見ることを意味します。
「育む」という言葉は、「男女の間に友情が育まれることは多い」「得た知識や自身を取り巻く環境が将来の夢を育む」などの使い方で、大切に守りながら養い育てることを意味します。
「培う」と「養う」と「育む」の使い分け方
「培う」と「養う」はどちらも、大切に育てることを意味する言葉ですが、前者は時間を掛けて自身の能力などを向上させる場合に使うのに対し、後者は自身の努力や他者からの支援などによって少しずつ育つ場合に使います。
そのため、「培う」は植物、文化や歴史などのように目に見えなくとも向上しているものに対して使い、「養う」は知識小さな成長でも目に見えて分かるものに対して使います。
一方の「育む」も大切に守り育てることを意味する言葉ですが、人間や動植物よりも、夢や愛など概念的なものを発展させることを意味する言葉として多く使われています。
これが、「培う」、「養う」、「育む」の明確な違いです。
「培う」の意味
「培う」とは
「培う」とは、力や性質などを養い育てることを意味しています。
植物の根元に土を掛けて植物を育てることを意味する言葉ですが、これが転じて大切に養い育てることを意味するようになります。特に、一朝一夕に成長するものではなく、緩く成長していくような体力、精神力などを育てる場合に使います。
表現方法は「能力を培う」「スキルを培う」「技能を培う」
「培う」を使った表現として、「能力を培う」「スキルを培う」「技能を培う」「自信を培う」「愛を培う」「目を培う」などがあります。「培う」と共に使われているどの言葉も、その日何かをして次の日に変化が目に見えてわかるようなものではありません。
知識なども徐々に蓄えていくものですが「知識を培う」という表現はしません。知識や情報は自身の中で育てられるものではなく、一つ一つは外部から与えられることなどで獲得するため「知識を得る」などの表現の方が適切と言えます。
「培う」の類語
「培う」の類語・類義語としては、植物を植えて育てることを意味する「栽培」、生活に必要な物資などを作り出すことを意味する「生産」、物事の根本を養い育てることを意味する「培養」、魚など人工的に飼育および繁殖させることを意味する「養殖」があります。
「養う」の意味
「養う」とは
「養う」とは、家族などの生活を自分の収入で面倒を見ることを意味しています。
表現方法は「家族を養う」「力を養う」「実践力を養う」
「家族を養う」「力を養う」「実践力を養う」などが、「養う」を使った一般的な言い回しです。
「養う」を使った言葉として、「頤を養う」「老いを養う」があります。
「頤を養う」の意味
一つ目の「頤を養う」(読み方:おとがいをやしなう)とは、生計を立てることや他者の生活の面倒を見ることを意味する表現です。頤とはあごを指す言葉で、頤という漢字自体もあごと読むことができます。
顎は食べ物を噛むのに使う器官であることから、食の面倒を見ることを意味する表現となった言葉です。
「老いを養う」の意味
二つ目の「老いを養う」とは、年老いた身体を労わり、元気を保つことに努めることを意味する表現です。また、年老いた人を丁寧に扱うことも表します。
「養う」の類語
「養う」の類語・類義語としては、生活できるよう世話をすることを意味する「扶養」、生活に留意してより健康な状態になることを意味する「養生」、動物などを飼い育てることを意味する「飼育」、物事の状態を保ち続けることを意味する「維持」などがあります。
「育む」の意味
「育む」とは
「育む」とは、大切に守りながら養い育てることを意味しています。
表現方法は「愛を育む」「心を育む」「自立心を育む」
「愛を育む」「心を育む」「自立心を育む」などが、「育む」を使った一般的な言い回しです。
「育む」の由来
「育む」は「はごくむ」という読み方がなされることもありますが、元は「はくくむ」という読み方をする「羽包む」という言葉が由来しており、親鳥が雛を羽で包むことを意味していました。
そのため、「育む」には雛を包んで育てるという意味があり、優しく大切に育てることを表す言葉として使われるようになりました。
さらに、その意味が転じて、大事に守って発展させることも意味するようになり、生物だけでなく「未来を育む」や「心を育む」などのように目に見えない概念などにも使われるようになりました。
「育む」の類語
「育む」の類語・類義語としては、育てて立派にすることを意味する「育成」、徳の力で人を感化して教育をすること「薫陶」、育て上げることを意味する「育成」、元の状態などを徐々につくり出すことを意味する「醸成」などがあります。
「培う」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、力や性質などを養い育てることを意味する時などが挙げられます。
どの例文の「培う」という言葉も、長い期間を経て成長してきたものに対して使われるため、「養う」という言葉に置き換えて使うことはできません。
「養う」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、家族などの生活を自分の収入で面倒を見ることを意味する時などが挙げられます。
例文3の「心を養う」とは、傷ついた心を癒すことを意味する表現です。
「育む」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、大切に守りながら養い育てることを意味する時などが挙げられます。
どの例文の「育む」も、目に見えない概念的なものに対して使われているため、「養う」という言葉に置き換えて使うことはできません。
「培う」と「養う」と「育む」どれを使うか迷った場合は、時間を掛けて育てることを表す場合は「培う」を、生活の世話をすることを表す場合は「養う」を、発展させることを表す場合は「育む」を使うと覚えておけば間違いありません。