似た意味を持つ「渉外」(読み方:しょうがい)と「営業」(読み方:えいぎょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「渉外」と「営業」という言葉は、どちらも「顧客を訪問する仕事」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
渉外と営業の違い
渉外と営業の意味の違い
渉外と営業の違いを分かりやすく言うと、渉外とは顧客との関係を築くことを表し、営業とは顧客に商品を売り込むことを表すという違いです。
渉外と営業の使い方の違い
一つ目の渉外を使った分かりやすい例としては、「渉外係としてお客様のサポートに努めています」「渉外活動を通して関係を構築する」「金融機関の法人渉外業務を担当しています」「渉外費と交際費の違いをご存じですか」などがあります。
二つ目の営業を使った分かりやすい例としては、「この春から営業部に配属になりました」「営業キャッシュフローがマイナスになる」「営業利益と経常利益は違います」「営業事務の仕事内容を確認する」などがあります。
渉外と営業の使い分け方
渉外と営業という言葉は、どちらも顧客を訪問する仕事を表し、「渉外担当」「営業担当」などと表現しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
渉外とは、外部と連絡や交渉をすることを意味する言葉です。渉外担当の仕事は、顧客の要望を聞いてニーズを把握することが中心です。銀行員が顧客を訪問して資産運用をサポートしたり、百貨店スタッフがお得意様へ出向いて商品を提案するなどの仕事を、「渉外」と言うことが多くあります。
営業とは、利益を得るために事業を行うことを意味します。企業の営業担当者は、顧客に対して提案を行ったり、ニーズをヒアリングしたりしながら、最適な商品を見極めて販売します。また、新規の顧客を開拓することも「営業」と言います。
渉外担当と営業担当の定義は企業によって異なりますが、基本的に、渉外担当は顧客との関係を築く仕事であり、営業担当は顧客に商品やサービスを売り込む仕事を表しています。
渉外と営業の英語表記の違い
渉外を英語にすると「public relations」「client liaison」となり、例えば上記の「渉外係」を英語にすると「a liaison officer」となります。
一方、営業を英語にすると「trade」「business」「sales」となり、例えば上記の「営業部」を英語にすると「the sales division」となります。
渉外の意味
渉外とは
渉外とは、外部と連絡や交渉をすることを意味しています。
その他にも、「ある法律事項が、国内だけでなく外国にも関係すること」の意味も持っています。
渉外の読み方
渉外の読み方は「しょうがい」です。誤って「ほがい」「しょうげ」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「渉外業務」「渉外社員」「渉外担当」
「渉外業務」「渉外社員」「渉外担当」などが、渉外を使った一般的な言い回しです。
渉外の使い方
「渉外係として顧客ニーズを掘り起こす」「英語を活かした渉外担当の仕事にやりがいを感じます」「渉外部の役割は何ですか」「自治会における渉外費の使い方をチェックする」などの文中で使われている渉外は、「外部と連絡・交渉すること」の意味で使われています。
一方、「渉外弁護士の年収はとても高いです」「大手の渉外法律事務所を探しています」「渉外法務を扱う弁護士を紹介してもらう」「渉外事件の訴訟に携わる」などの文中で使われている渉外は、「法律事項が外国にも関係すること」の意味で使われています。
渉外の「渉」は訓読みで「わたる」「かかわる」と読み、広く見聞することや関係をもつことを表します。ある範囲の外側を表す「外」と組み合わさり、渉外とは、外部と連絡を取り交渉や折衝を行うことを意味します。また、ある法律事項が国内だけでなく外国にも関係することも意味する言葉です。
「渉外費」の意味
上記の例文にある「渉外費」とは、ある企業や団体の渉外活動に関わる経費のことを指します。交際費などを初めとした対外的な渉外に関係した費用のことですが、組織団体によって内訳は異なります。
「渉外私法」の意味
渉外を用いた日本語には「渉外私法」があります。渉外私法とは、二国以上にまたがる私法関係の準拠法を定める法律のことであり、「国際私法」と言い換えることができます。
渉外の対義語
渉外の対義語・反対語としては、勤め先の内部で仕事をすることを意味する「内勤」、事務職を意味する「デスクワーク」などがあります。
渉外の類語
渉外の類語・類義語としては、交際や接触によって生じる関係を意味する「交渉」、決着をつけるために相手方と話し合うことを意味する「談判」、問題を解決するためにかけひきをすることを意味する「折衝」、外国との交渉や交際を意味する「外交」などがあります。
営業の意味
営業とは
営業とは、利益を得る目的で継続的に事業を営むこと、特に企業の販売活動を意味しています。
その他にも、「得意先を回って顔つなぎをし商品の紹介や売り込みをすること、新しい得意先を開拓すること」「法律で、継続的に同種の営利行為を行うこと、その活動のために供される土地や建物などの財産」の意味も持っています。
表現方法は「営業マン」「営業のコツ」「営業をかける」
「営業マン」「営業のコツ」「営業をかける」などが、営業を使った一般的な言い回しです。
営業の使い方
「営業時間は午前10時から午後7時です」「営業利益の計算方法がわかりません」「営業利益率は10パーセント以上を目指しましょう」「エクセルで営業日を計算する」などの文中で使われている営業は、「利益を得る目的で継続的に事業を営むこと」の意味で使われています。
一方、「女性営業職だからこその強みがあります」「彼女は営業事務に向いていない」の文中で使われている営業は「得意先を回って売り込みをすること」の意味で、「古物営業法の一部が改正されました」の文中で使われている営業は、「法律で継続的営利行為を行うこと」の意味で使われています。
営業とは、広義では企業などが利益を得るために事業を行うことであり、「営業日」「営業目的」などという使い方をします。狭義では、販売活動や販促活動を中心とした顧客を対象とする業務を指す言葉です。また、法律用語として、継続的に同種の営利行為を行うことを意味します。
「営業事務」の意味
上記の例文にある「営業事務」とは、営業部門や営業担当者のサポートやバックアップをする仕事です。具体的な仕事内容は、営業担当と連携しながら見積書や請求書の作成や、受発注データの入力、顧客からの問い合わせ対応などがあります。
「営業キャッシュフロー」の意味
営業を用いた日本語には「営業キャッシュフロー」があります。営業キャッシュフローとは、企業本来の営業活動により発生した現金収支のことであり、合計額がプラスの会社は順調に成長していると判断できます。
営業の対義語
営業の対義語・反対語としては、営業や業務などを休むことを意味する「休業」、無償の奉仕活動を意味する「ボランティア」などがあります。
営業の類語
営業の類語・類義語としては、事業目的を達成するために事業を管理・遂行することを意味する「経営」、利益を得ることを目的とする事業を意味する「商業」、売場ではなく客に直接販売することを意味する「外商」、利益の追求のみを目的として進める仕事を意味する「ビジネス」などがあります。
渉外の例文
この言葉がよく使われる場面としては、外部と連絡や交渉すること、ある事柄を規律する法律関係が自国だけでなく他国の法規にも関係をもつことを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4にある渉外は、外部と連絡や交渉することの意味で用いられています。例文5の渉外は、自国だけでなく他国の法規にも関係をもつことの意味で用いられています。
営業の例文
この言葉がよく使われる場面としては、継続的に利益を追求する活動、得意先を回って売り込みをすること、法律で継続的に営利行為を行うことやそのために供される財産を表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「飛び込み営業」とは、事前にアポイントメントをとらず企業や個人宅を訪問し、自社の商品やサービスを売り込む営業方法のことです。
渉外と営業という言葉は、どちらも「顧客を訪問する仕事」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、顧客との関係を築く仕事を表現したい時は「渉外」を、売り込みをする仕事を表現したい時は「営業」を使うようにしましょう。