似た意味を持つ「事由」(読み方:じゆう)と「理由」(読み方:りゆう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「事由」と「理由」という言葉は、どちらも「事が起きた原因」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
事由と理由の違い
事由と理由の意味の違い
事由と理由の違いを分かりやすく言うと、事由とは事実に対して使われる文語的表現であり、理由とは事実や事情に対して使われる口語的表現という違いです。
事由と理由の使い方の違い
一つ目の事由を使った分かりやすい例としては、「正当な事由無しで賃貸借契約の終了は出来ない」「奨学金申請のために事由書を記入する」「法定離婚事由に当てはまらない」「離職事由証明書が必要です」などがあります。
二つ目の理由を使った分かりやすい例としては、「志望理由書の書き方を教えてもらった」「この学校を志望する理由を挙げてください」「欠勤は正当な解雇理由になる場合がある」「しかるべき理由があって断る」などがあります。
事由と理由の使い分け方
事由と理由という言葉は、どちらも事が起きた原因を意味する言葉ですが、事由は書き言葉で使われ、理由は書き言葉でも話し言葉でも使われる傾向があります。事由という言葉は、特に法律用語やビジネス文書に使われ、日常的に使われることは少ない言葉です。
また、二つの言葉の意味の広さにも違いがあります。事由は事柄の生じた理由や原因を意味し、事実に対して使われます。一方、理由は物事の根拠を意味し、事実だけでなく、物事がある状態に至るまでの事情に対しても使われます。
事由と理由を比較すると、理由の方が広い意味を持ち、幅広いシーンで使われる言葉なのです。
事由と理由の英語表記の違い
事由も理由も英語にすると「reason」「cause」「ground」となり、例えば上記の「正当な事由無しで」を英語にすると「without just cause」となります。
事由の意味
事由とは
事由とは、事柄の生じた理由・原因を意味しています。
その他にも、「法律で、理由または原因となっている事実」の意味も持っています。
事由の使い方
「免許証を失くしてしまい紛失事由書を求められた」「事由書の書き方を教えてもらう」「事由欄に研究を延期することになった原因を書く」「休暇を取得する事由を書く」などの文中で使われている事由は、「事柄の生じた理由・原因」の意味で使われています。
一方、「違法性阻却事由が認められた」「欠格事由に該当するため免許は与えられません」「正当事由なく建物の賃貸借を終了することはできない」などの文中で使われている事由は、「理由または原因となっている事実」の意味で使われています。
事由という言葉は事柄の生じた理由や原因を意味し、文語的表現として使われ、日常生活よりもビジネスシーンで使われる言葉です。また、法律用語にも使われており、この場合は理由や原因となる事実を意味します。
「事由書」の意味
事由という言葉を用いた日本語には「事由書」があり、物事が起きた理由や原因を記載する書類を意味します。上記の例の「紛失事由書」とは、物品を失くしてしまった理由を記載する文書のことです。紛失したものが何であるかと併せて、紛失した場所や状況などを詳細に書くことが一般的です。
「免責事由」の意味
事由を用いた法令用語には「免責事由」があり、保険会社が保険金や給付金を支払わなければならない責任から免れる場合の根拠を意味します。例えば、自動車保険の場合、故意に起こした事故の損害に対しては保険金の支払いはないなど、免責事由が約款で規定されています。
表現方法は「解雇事由」「当該事由」「事由発生日」
「解雇事由」「当該事由」「事由発生日」などが、事由を使った一般的な言い回しです。
事由の類語
事由の類語・類義語としては、物事が起こった理由を意味する「由」、物事が起こったわけを意味する「いわれ」、物事ができあがる原因を意味する「成因」などがあります。
事由の事の字を使った別の言葉としては、物事がある状態に至るまでの理由や状態を意味する「事情」、実際に起こった事柄を意味する「事実」、物事の内容や様子などを意味する「事柄」などがあります。
理由の意味
理由とは
理由とは、物事がそうなった、また物事をそのように判断した根拠を意味しています。
その他にも、「いいわけ、口実」や「哲学で、論理的関係においては結論に対する前提、実在的関係においては結果に対する原因」の意味も持っています。
表現方法は「理由としては」「理由がなく」「理由付け」
「理由としては」「理由がなく」「理由付け」などが、理由を使った一般的な言い回しです。
理由の使い方
「体調不良を理由に挙げる」「手続きが遅れた理由を述べる」「ふと理由なく落ち込むことがある」「遅延理由書のテンプレートを使って書く」などの文中で使われている理由は、「物事がそうなった根拠、そう判断した根拠」の意味で使われています。
一方、「なにかしらの理由をつける」「多忙を理由に欠席する」「彼氏を理由に断る」などの文中で使われている理由は「いいわけ、口実」の意味で、「ライプニッツは充足理由律と矛盾律を唱えた」などの文中で使われている理由は、「哲学における前提、原因」の意味で使われています。
理由という言葉は、上記の例文にあるように複数の意味を持つ言葉ですが、一般的には「物事がそうなった根拠、そう判断した根拠」または「いいわけ、口実」の意味で使われています。なぜ、どうしてという疑問に呼応する根拠であり、日常生活からビジネスシーンまで様々な場面で使われています。
「できない理由を探すな」の意味
理由という言葉を用いた名言に「できない理由を探すな」があります。言い逃れや言いがかりの材料ばかりを見つけて、積極的に物事に取り組まない姿勢を戒める言葉です。ここでの理由は「いいわけ、口実」を意味しています。
「充足理由律」の意味
理由を用いた哲学用語には「充足理由律」があります。これはドイツの哲学者ライプニッツが提唱した原理であり、十分な理由なくしてはいかなる事実も成立せず、いかなる判断も真ではないことを表します。
理由の対義語
理由の対義語・反対語としては、ある事柄を原因としてそこから結果として出てくる事態を意味する「帰結」などがあります。
理由の類語
理由の類語・類義語としては、事情やいきさつを意味する「訳」、理由や訳を意味する「所以」、物事が存在するための理由となるものを意味する「根拠」などがあります。
理由の理の字を使った別の言葉としては、変わることのない正しい物事の筋道を意味する「真理」、人として守り行うべき道を意味する「倫理」、そうあってほしいと思う最高の状態を意味する「理想」などがあります。
事由の例文
この言葉がよく使われる場面としては、事柄の生じた理由や原因、法律において理由や原因となる事実を表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「保険金支払事由発生日」とは、保険者(保険会社)が保険金を支払う出来事が発生した日を表します。交通事故に支払われる自動車保険であれば、交通事故が発生した日のことです。
理由の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事がそうなった根拠や判断した根拠、いいわけや口実、哲学における前提や原因を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「志望理由書」とは、大学のAO入試や推薦入試で提出を求められるもので、志望動機などをまとめた文書のことです。
例文3にあるように就労ビザを申請する場合、雇用側の会社が記入する「雇用理由書」と、外国人自身が記入し、就労する国や会社に自分が有益であることを訴える「理由書」などが必要になります。
事由と理由という言葉のどちらを使うか迷った場合、事実に対しての根拠を表現したい時は「事由」を、事実や事情に対しての根拠を表現したい時は「理由」を使うようにしましょう。また、話し言葉では「理由」を使う方が自然であることを覚えておきましょう。