似た意味を持つ「必要悪」(読み方:ひつようあく)と「不必要」(読み方:ふひつよう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「必要悪」と「不必要」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
必要悪と不必要の違い
必要悪と不必要の意味の違い
必要悪と不必要の違いを分かりやすく言うと、必要悪とは必要とされている悪いことを表し、不必要とは必要でないことを表すという違いです。
必要悪と不必要の使い方の違い
一つ目の必要悪を使った分かりやすい例としては、「今の状況では人員削減は必要悪だろう」「袖の下はビジネスを円滑にする必要悪です」「談合は必要悪として行われています」「裏金を必要悪と考える人々がいます」などがあります。
二つ目の不必要を使った分かりやすい例としては、「母はいつも不必要な心配ばかりしている」「不必要に個人情報を投稿しないように」「英語の早期教育は不必要だと思います」「不必要な物は買わないようにしています」でなどがあります。
必要悪と不必要の使い分け方
必要悪と不必要という言葉は、なくてはならないことを表す「必要」という共通の熟語を含みますが、意味は全く異なります。
必要悪とは、法的あるいは道徳的に悪いものや行為であっても、世の中や組織にとって仕方なく受け入れられているようなものを意味します。例えば、談合は違法行為ですが、業者間の調整として必要な行為だという考えから必要悪だと言う人もいます。
不必要とは、必要がないこと、なくても差し障りのないことを意味します。上記の例文にある「不必要な物」とは、使わない物や、なくても困らない物を表しています。
つまり、必要悪は必要とされている悪いことであり、不必要は必要がないことです。二つの言葉は、必要性において相反する意味の言葉だと言えるでしょう。
必要悪と不必要の英語表記の違い
必要悪を英語にすると「necessary evil」となり、例えば上記の「人員削減は必要悪だ」を英語にすると「the downsizing is a necessary evil」となります。
一方、不必要を英語にすると「needless」「unnecessarily」「non-necessity」となり、例えば上記の「不必要な心配」を英語にすると「needless worry」となります。
必要悪の意味
必要悪とは
必要悪とは、よくないことではあるが、組織や社会などにとって、やむをえず必要とされることを意味しています。
必要悪の読み方
必要悪の読み方は「ひつようあく」です。誤って「ひつようわる」「ひつようお」などと読まないようにしましょう。
必要悪の使い方
必要悪を使った分かりやすい例としては、「原爆の使用は必要悪であると弁明した」「不正であるが仕方のない必要悪だろう」「中世のイギリスには必要悪の教会がありました」「ディベートのテーマは必要悪は必要か否かです」などがあります。
その他にも、「体罰は必要悪だなんて言い訳だろう」「政治における必要悪を哲学的に議論する」「受験英語は必要悪だと割り切っています」「賄賂は物事を円滑に進めるための必要悪です」などがあります。
必要悪とは、道徳的あるいは法律的には悪いことではあっても、社会生活や組織を営むうえで仕方がなく必要になっているものを指す言葉です。例えば、アジアではビジネスを展開する際に賄賂や袖の下を渡すことによりスムーズに事が運ぶことがあり、このような金品は必要悪として認識されています。
必要悪と言われるものには、タバコ、食品添加物、ヤクザ、戦争などが挙げられます。戦争は、たくさんの人の命が失われてまう残虐行為ですが、自衛のための戦争や平和を脅かすものを排除する目的の戦争は必要悪だと考える人もいます。
必要悪の対義語
必要悪の対義語・反対語としては、どのような立場や観点から判断しても悪であることを意味する「絶対悪」、この上なく悪いことを意味する「極悪」、最も悪い状態であることを意味する「最悪」などがあります。
必要悪の類語
必要悪の類語・類義語としては、いろいろ経験を積んでいて悪賢いことを意味する「老獪」、実社会で苦労した結果として世間の裏に通じて悪賢くなることを意味する「世間擦れ」、さまざまな経験をして悪賢くなることを意味する「すれっからし」などがあります。
不必要の意味
不必要とは
不必要とは、必要がないこと、不用を意味しています。
不必要の使い方
不必要を使った分かりやすい例としては、「業務中に不必要な会話は控えてください」「親は子供に対して不必要に干渉しがちです」「高校生にメイクは不必要だと、ことわざで諭しました」「不必要に不安にならなくて大丈夫です」などがあります。
その他にも、「不必要なものをフリマアプリで売ります」「不必要なアプリケーションの削除をお願いします」「不必要と不要は違いがよく分かりません」「不必要な救急車要請の影響を考えてみよう」「この英語作文には不必要な繰り返しが多い」などがあります。
不必要とは、物事の必要性を否定した言葉であり、ある事物や行為などが必ずしも必要でないことや使わないことを表します。なくても困らないことや、しなくても支障が無いことに対して使われる言葉です。
「不必要善」の意味
不必要を用いた日本語には「不必要善」があります。不必要善とは、一見よさそうなことではあるが、実際は無益であったり不用なものを指す言葉です。例えば、「お節介」は、親切心からの行いですが、相手にとっては迷惑で不必要な行為であり、不必要善と捉えることが出来ます。
不必要の対義語
不必要の対義語・反対語としては、なくてはならないことを意味する「必要」、必ず用いるべきことや欠かせないことを意味する「必須」、あることをするのに必要とすることを意味する「所要」、必要であることや大切なことを意味する「入用」などがあります。
不必要の類語
不必要の類語・類義語としては、必要でないことや必要でないさまを意味する「不要」、いらないことや使い道のないことを意味する「無用」、必要な度を超えて無駄なことを意味する「余計」、入用でないことを意味する「用無し」などがあります。
必要悪の例文
この言葉がよく使われる場面としては、よくないことではあるが世の中にとって必要で、なくすわけにいかないものを表現したい時などが挙げられます。
例文4について、古代ギリシア新喜劇の代表的作家である「メナンドロス」は、「現実を見れば、結婚は悪だ。だが、必要な悪だ」と説きました。
不必要の例文
この言葉がよく使われる場面としては、必要でないこと、不用なこと、なくても差し障りのないことを表現したい時などが挙げられます。
例文3の「月夜に提灯」は、不必要なことや無駄なことのたとえに用いられることわざです。明るい月夜に提灯をともすことが無意味であることから、生まれたことわざです。
必要悪と不必要という言葉は、似ていますが意味は大きく異なります。どちらの言葉を使うか迷った場合、やむをえず必要とされている悪いことを表現したい時は「必要悪」を、必要でないことを表現したい時は「不必要」を使うようにしましょう。