似た意味を持つ「言葉のあや」(読み方:ことばのあや)と「論点のすり替え」(読み方:ろんてんのすりかえ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「言葉のあや」と「論点のすり替え」という言葉は、どちらも言葉を使って巧みに言い表すことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「言葉のあや」と「論点のすり替え」の違い
「言葉のあや」と「論点のすり替え」の意味の違い
「言葉のあや」と「論点のすり替え」の違いを分かりやすく言うと、「言葉のあや」とは味方が言葉を使って巧みに表した時に使う、「論点のすり替え」とは敵が言葉を使って巧みに表した時に使うという違いです。
「言葉のあや」と「論点のすり替え」の使い方の違い
一つ目の「言葉のあや」を使った分かりやすい例としては、「言葉のあやでそう言っただけです」「言葉のあやで言ったつもりだったが相手を怒らせてしまいました」「言葉の綾で言ったのに炎上してしまった」「それは単なる言葉のあやだよ」などがあります。
二つ目の「論点のすり替え」を使った分かりやすい例としては、「論点をすり替えるのは辞めてください」「彼は論点のすり替えを無意識で行なっている」「論点のすり替えをする彼氏にうんざりです」などがあります。
「言葉のあや」と「論点のすり替え」の使い分け方
「言葉のあや」と「論点のすり替え」はどちらも言葉を使って巧みに言い表すことを意味する言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。
「言葉のあや」は味方が言葉を使って巧みに表した時に使う表現で、味方とは自分自身や身内のことを指しています。一方、「論点のすり替え」は敵が言葉を使って巧みに表した時に使う表現で、敵とは他人や討論している相手を指しているというのが違いです。
「言葉のあや」と「論点のすり替え」の英語表記の違い
「言葉のあや」を英語にすると「figure of speech」となり、例えば上記の「それは単なる言葉のあやだよ」を英語にすると「It is just a figure of speech」となります。
一方、「論点のすり替え」を英語にすると「Ignoratio elenchi」「mix different issues」「set up a straw man」となります。
「言葉のあや」の意味
「言葉のあや」とは
「言葉のあや」とは、言葉を使って巧みに言い表すことを意味しています。
「言葉のあや」の漢字表記
「言葉のあや」を漢字にすると、「言葉の綾」と表記することができますが、あまり一般的ではありません。余程の理由がない限り、ひらがなの「言葉のあや」を使うようにしましょう。
「言葉のあや」の使い方
「言葉のあや」を使った分かりやすい例としては、「さっき言ったのは言葉のあやだから誤解しないでね」「言葉のあやだと言って誤魔化す人は苦手です」「あれは言い訳ではなく言葉のあやだよ」「言葉のあやで言ったものの相手を傷つけてしまった」などがあります。
「言葉のあや」の語源は綾織です。綾織とは布を織るときに用いられる技法の1つのことで、巧みな技術が必要とされていました。この綾織が省略され「あや」となり、巧みな技術が必要になること転じて、言葉を使って巧みに言い表すことを「言葉のあや」と言うようになりました。
しかし、現代では言葉を使って巧みに言い表すことの意味ではなく、自分の発言を弁解するための言い訳として使われることが多くなっているのが現実です。
本来の「言葉のあや」は相手にストレートに伝えづらい時などに巧みな表現として使う言葉と覚えておきましょう。
「言葉のあや」の類語
「言葉のあや」の類語・類義語としては、ある物事を類似または関係する他の物事を借りて表現することを意味する「比喩」、まるですじの通らない理屈のことを意味する「屁理屈」、道理に合わないことを強引に正当化しようとする弁論のことを意味する「詭弁」
「論点のすり替え」の意味
「論点のすり替え」とは
「論点のすり替え」とは、それ自体は妥当な論証だけど本来の問題への答えにはなっていない論証のことを意味しています。
「論点のすり変え」は誤り
「論点のすり替え」を「論点のすり変え」と表記するのは間違いなので、注意するようにしましょう。
「論点のすり替え」の使い方
「論点のすり替え」を使った分かりやすい例としては、「ナンセンスな論点のすり替えは辞めてください」「論点のすり替えをする女性が苦手です」「彼は都合が悪くなるとすぐ論点をすり替える」「なぜ論点のすり替えるをするのか私には理解できません」などがあります。
「論点のすり替え」は、議論の中心となる問題点のことを意味する「論点」に、人に気づかれないようにこっそりと別のものに取り替えることを意味する「すり替え」が合わさり、それ自体は妥当な論証だけど本来の問題への答えにはなっていない論証のことを意味する言葉です。
したがって、「論点のすり替え」は基本的にマイナスなイメージで使われている言葉になります。
分かりやすい例を挙げると、贈収賄事件を起こした政治家がその犯行について言及されたものの、「私は賄賂を渡したとされている人物と会ったことはない(実際には秘書が会っていた)」があります。
このように、妥当な解答はしているものの、贈収賄事件についての本来の答えにはなってはいないので、「論点のすり替え」に当たるのです。
「論点のすり替え」の類語
「論点のすり替え」の類語・類義語としては、関係のない物事を無理に理由をつけ関係づけることを意味する「こじつけ」、首尾一貫しないことを意味する「でたらめ」、でまかせを言って真実を隠すことを意味する「ごまかし」などがあります。
「言葉のあや」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、言葉を使って巧みに言い表すことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「言葉のあや」はマイナスなイメージで使われている言葉です。
「論点のすり替え」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、それ自体は妥当な論証だけど本来の問題への答えにはなっていないことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「論点のすり替え」はマイナスなイメージで使われている言葉です。
「言葉のあや」と「論点のすり替え」はどちらも言葉を使って巧みに言い表すことを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、味方が言葉を使って巧みに言い表した場合は「言葉のあや」、敵が言葉を使って巧みに言い表した場合は「論点のすり替え」になると覚えておきましょう。