似た意味を持つ「背水の陣」(読み方:はいすいのじん)と「火事場の馬鹿力」(読み方:かじばのばかぢから)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「背水の陣」と「火事場の馬鹿力」という言葉は、どちらも普段想像できないような力を出すことを意味しているという通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「背水の陣」と「火事場の馬鹿力」の違い
「背水の陣」と「火事場の馬鹿力」の意味の違い
「背水の陣」と「火事場の馬鹿力」の違いを分かりやすく言うと、「背水の陣」とは自主的に退路を断った場合に使う、「火事場の馬鹿力」とは受身的に退路を断たれてしまった場合に使うという違いです。
「背水の陣」と「火事場の馬鹿力」の使い方の違い
一つ目の「背水の陣」を使った分かりやすい例としては、「背水の陣で挑んだ1戦で見事勝利することができました」「目標を達成するために背水の陣を敷くことにしました」「私たちは背水の陣を敷いて会社の再建を図った」などがあります。
二つ目の「火事場の馬鹿力」を使った分かりやすい例としては、「これだけ重いのものを運べたのは多分火事場の馬鹿力だろう」「火事場の馬鹿力を発揮し期限内に作品を完成させることができました」「父親は火事場の馬鹿力を発揮しました」などがあります。
「背水の陣」と「火事場の馬鹿力」の使い分け方
「背水の陣」と「火事場の馬鹿力」はどちらも普段想像できないような力を出すことを意味する言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。
「背水の陣」はわざと川を背にして陣を取って、味方に退却できないという決死の覚悟をさせたことが由来の言葉なので、自主的に退路を断った場合に使う言葉になります。
一方、「火事場の馬鹿力」は火事の時に、自分にはあると思えない大きな力を出して重い物を持ち出したりすることが由来の言葉なので、受身的に退路を断たれてしまった場合に使う言葉というのが違いです。
「背水の陣」と「火事場の馬鹿力」の英語表記の違い
「背水の陣」を英語にすると「out of option」「staked everything」「last stand」となり、例えば上記の「私たちは背水の陣を敷いて会社の再建を図った」を英語にすると「We staked everything on the reconstruction of our company」となります。
一方、「火事場の馬鹿力」を英語にすると「fight-or-flight response」「adrenaline rush」「super human strength」となり、例えば上記の「父親は火事場の馬鹿力を発揮しました」を英語にすると「The father showed super human strength」となります。
「背水の陣」の意味
「背水の陣」とは
「背水の陣」とは、一歩も引けないような絶体絶命の状況の中で全力を尽くすことを意味しています。
「背水の陣」の読み方
「背水の陣」の読み方は「はいすいのじん」です。誤って「せみずのじん」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「背水の陣を敷く」「背水の陣で臨む」「背水の陣で挑む」
「背水の陣を敷く」「背水の陣で臨む」「背水の陣で挑む」などが、「背水の陣」を使った一般的な言い回しになります。 また、「背水の陣を引く」という言い回しは誤用なので、使用しないように気を付けましょう。
「背水の陣」の使い方
「背水の陣」を使った分かりやすい例としては、「今回の出馬は背水の陣となるだろう」「これが最後と決めて背水の陣で試験に臨みました」「負けたら引退と決めて背水の陣で試合に臨む」「勝負事は背水の陣の気持ちで取り組むことが大切です」などがあります。
「背水の陣」の由来
「背水の陣」の由来は『史記』の淮陰侯伝です。漢の名将である韓信が趙の軍と戦った時に、わざと川を背にして陣をとり、味方に退却できないという決死の覚悟をさせました。その結果普段では出ないような力を発揮し、敵を破ったのです。
このことが転じて、一歩も引けないような絶体絶命の状況の中で全力を尽くすことを「背水の陣」と言うようになりました。
また、上記の由来からも分かるように、「背水の陣」は追い込まれてやった行為ではなく、勝つために最前の方法を考えた結果、自ら退路を断つという結論の至ったのです。したがって、「背水の陣」は自主的に退路を断った場合に使う言葉と覚えておきましょう。
「背水の陣」の類語
「背水の陣」の類語・類義語としては、追いつめられ窮地にある立場や状態のことを意味する「絶体絶命」、どの方面にも差し障りがあって手の打ちようがないことを意味する「八方塞がり」、強敵に対して非常に苦しい戦いをすることを意味する「悪戦苦闘」などがあります。
「火事場の馬鹿力」の意味
「火事場の馬鹿力」とは
「火事場の馬鹿力」とは、切迫した状況に置かれると普段には想像できないような力を無意識に出すことを意味しています。
「火事場の馬鹿力」の読み方
「火事場の馬鹿力」の読み方は「かじばのばかぢから」です。誤って「かじばのばかちから」などと読まないようにしましょう。
「火事場の馬鹿力」の使い方
「火事場の馬鹿力」を使った分かりやすい例としては、「火事場の馬鹿力を発揮して昇進試験に合格することができました」「火事場の馬鹿力で何とか締め切りに間に合わせたいです」「火事場の馬鹿力のおかげで脱出することができました」などがあります。
「火事場の馬鹿力」は火事が起こった時の話が由来です。火事が起こった時に、自分にはあると思えない大きな力を出して重い物を持ち出して避難したという話がありました。
これが転じて、切迫した状況に置かれると普段には想像できないような力を無意識に出すことを「火事場の馬鹿力」というようになったのです。あくまでも火事というのは例えなので、切迫した状況で普段以上の力を発揮した場合に使える言葉と覚えておきましょう。
また、「火事場の馬鹿力」は火事の際に重い物を持ち出すのよに肉体的に力を発揮するだけはなく、仕事などで危機的状況を乗り越えるために力を発揮した場合などにも使うことができます。
「火事場の馬鹿力」の類語
「火事場の馬鹿力」の類語・類義語としては、困難な状況にあっても超越した境地にあれば苦しくないことを意味する「心頭滅却」(読み方:しんとうめっきゃく)、一つの目的に向かい血気にはやって向こう見ずになることを意味する「がむしゃら」などがあります。
「背水の陣」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、一歩も引けないような絶体絶命の状況の中で全力を尽くすことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「背水の陣」はもう後がない状況で決死の覚悟で行動する場合に使う言葉です。
「火事場の馬鹿力」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、切迫した状況に置かれると普段には想像できないような力を無意識に出すことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「火事場の馬鹿力」は土壇場で力を発揮した場合に使う言葉です。
「背水の陣」と「火事場の馬鹿力」はどちらも普段想像できないような力を出すことを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、自主的に退路を断つのが「背水の陣」、受身的に退路を断たれてしまっているのが「火事場の馬鹿力」と覚えておきましょう。