似た意味を持つ「断末魔」(読み方:だんまつま)と「臨終」(読み方:りんじゅう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「断末魔」と「臨終」という言葉は、どちらも「死の間際」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
断末魔と臨終の違い
断末魔と臨終の意味の違い
断末魔と臨終の違いを分かりやすく言うと、断末魔とは苦しむような死の間際を表し、臨終とは一般的な死の間際を表すという違いです。
断末魔と臨終の使い方の違い
一つ目の断末魔を使った分かりやすい例としては、「断末魔の苦しみにのたうち回る」「断末魔の叫び声が耳に焼き付いている」「遠くから断末魔のような悲鳴が聞こえてきた」「子供が断末魔のような叫び声をあげる」などがあります。
二つ目の臨終を使った分かりやすい例としては、「父の臨終に立ち会うことができなかった」「患者に臨終を知らせる兆候が見られた」「往生要集に記された臨終行儀を行おうとした」「15時21分ご臨終ですと医師が告げた」などがあります。
断末魔と臨終の使い分け方
断末魔と臨終という言葉は、どちらも死を迎える間際や、命が絶えることを意味しますが、意味や使い方には違いがあります。
断末魔とは、死に際を意味する言葉ですが、肉体的な苦痛や精神的な苦しみを伴うような場面で使われることが多くあります。上記の「断末魔の叫び」とは、苦しみもがく叫び声を表しています。また、「政権の断末魔」のように、物事の終焉や終わりの局面を表す比喩表現としても用いられています。
臨終とは、死を迎える直前の時期や、人が死ぬことを意味する言葉です。断末魔のように苦痛のニュアンスはなく、一般的な死を迎える場面で使われています。「御臨終」とは臨終の尊敬語であり、「ご臨終です」は医師が死亡宣告する際に故人を敬って用いられるフレーズです。
断末魔と臨終の英語表記の違い
断末魔を英語にすると「last gasp」「hour of death」「mortal」となり、例えば上記の「断末魔の苦しみ」を英語にすると「mortal agony」となります。
一方、臨終を英語にすると「last moment」「death bed」となり、例えば上記の「臨終に立ち会う」を英語にすると「be present at the deathbed」となります。
断末魔の意味
断末魔とは
断末魔とは、息を引き取る間際、臨終を意味しています。
断末魔は断末摩とも表記可能
断末魔は「断末摩」とも書きますが、一般的には「断末魔」と表記されています。
表現方法は「断末魔の叫び」「断末魔の苦しみ」「断末魔が聞こえる」
「断末魔の叫び」「断末魔の苦しみ」「断末魔が聞こえる」などが、断末魔を使った一般的な言い回しです。
断末魔の使い方
断末魔を使った分かりやすい例としては、「外から断末魔の叫びが聞こえてきた」「英語の断末魔を聞いたことがありますか」「断末魔の叫びをあげていた野良猫が忘れられない」「悪役の断末魔が長いので黙って早く死んでほしい」などがあります。
その他にも、「夜中に断末魔のような声が聞こえる」「断末魔の苦しみにあえぐ」「アニメでみたヒーローの断末魔が印象に残っている」「水を求める断末魔の声が耳を離れません」「自民党政権は断末魔であると批判する」などがあります。
断末魔とは、いよいよ死ぬという間際、臨終を意味します。単なる人生の幕引きを表すというよりは、人や動物が苦しんで死ぬようなニュアンスを持つ言葉です。「断末魔の叫び」とは実際の死に際の叫びだけでなく、非常に辛く苦しんで叫ぶ様子も表し、断末魔は比喩表現としても用いられています。
断末魔の由来
断末魔の語源は、仏教用語の「末魔」に由来します。末魔は、サンスクリット語のマルマンmarmanの音写で「致命的な部分、急所」のことです。末魔を断てば死に至ると考えられ、息を引き取る間際の苦しみを「断末魔の苦しみ」と言います。
「断末魔をあげる」は誤用
断末魔の誤った使い方には「断末魔をあげる」があります。断末魔には「死ぬ間際の叫び声」という意味はないため、「断末魔をあげる」は誤用であり、正しい表現は「断末魔の叫び声をあげる」「断末魔の叫びをあげる」です。
断末魔の対義語
断末魔の対義語・反対語としては、人が生まれることを意味する「誕生」、赤ん坊が生まれたとき最初にあげる泣き声を意味する「産声」などがあります。
断末魔の類語
断末魔の類語・類義語としては、命の終わるときや末期を意味する「最期」、死に際や臨終を意味する「死に目」、死に際を意味する「往生際」などがあります。
臨終の意味
臨終とは
臨終とは、人が死のうとする間際、死にぎわ、死ぬことを意味しています。
臨終の読み方
臨終の読み方は「りんじゅう」です。誤って「りんしゅう」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「御臨終」「臨終を迎える」「臨終に立ち会う」
「御臨終」「臨終を迎える」「臨終に立ち会う」などが、臨終を使った一般的な言い回しです。
臨終の使い方
臨終を使った分かりやすい例としては、「御臨終とは人生の終焉を尊敬していう言葉です」「臨終期の身体の様子に関する記述を探しています」「臨終が近いことを知らせる表情があるという」などがあります。
その他にも、「その時がきたら私は臨終正念ができるだろうか」「臨終勤行は浄土真宗の儀式です」「北条政子は頼家を臨終出家させた」「患者の臨終の床に立ち会う」「臨終婚に関する判例を集める」などがあります。
臨終は臨命終時の省略語
臨終とは、「臨命終時」の略であり、文字通り「死に臨むこと」を意味します。命が絶える間際や死ぬことを表しますが、一般には医師が患者の死に立ち会い、死の判定を下した時点を言います。上記の例文にある「臨終期」とは、人が死ぬ直前から亡くなるまでの期間のことです。
「臨終出家」の意味
臨終を用いた日本語には「臨終出家」があります。これは中世の貴族の間で行われた風習で、死ぬ直前に頭を剃って僧侶となることです。「僧になっていた方が浄土へ行ける」という考え方より始められました。
臨終の対義語
臨終の対義語・反対語としては、人が生まれることや誕生を意味する「生誕」、聖人や帝王などがこの世に生まれることを意味する「降誕」などがあります。
臨終の類語
臨終の類語・類義語としては、人の死のうとする時を意味する「末期」(読み方:まつご)、もうこれ限りという時や死にぎわを意味する「今際」(読み方:いまわ)、生命が終わることや死を迎えることを意味する「終焉」などがあります。
断末魔の例文
この言葉がよく使われる場面としては、苦しんで死ぬこと、死に際や臨終を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある「断末魔」は、死に際や臨終を表していています。例文4や例文5の「断末魔」は比喩表現であり、疲れ切っている様子や物事の終わりの意味で用いられています。
臨終の例文
この言葉がよく使われる場面としては、死に臨むこと、死を迎える間際、今わの際を表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「臨終正念」(読み方:りんじゅうしょうねん)とは、臨終に際して一心に仏を念ずること、特に阿弥陀仏を念じて極楽往生を願うことを意味します。
断末魔と臨終という言葉は、どちらも「死を迎える間際」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、苦しむような死の間際を表現したい時は「断末魔」を、一般的な死の間際を表現したい時は「臨終」を使うようにしましょう。