【宰相】と【丞相】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「宰相」(読み方:さいしょう)と「丞相」(読み方:じょうしょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「宰相」と「丞相」という言葉は、どちらも「古代中国の最高官位」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




宰相と丞相の違い

宰相と丞相の意味の違い

宰相と丞相の違いを分かりやすく言うと、宰相とは中国王朝で君主を補佐した最高官位の総称、丞相とは中国王朝の最高官位の呼称の一つという違いです。

宰相と丞相の使い方の違い

一つ目の宰相を使った分かりやすい例としては、「賢明な宰相に政治を任せる」「ビスマルクはなぜ鉄血宰相と呼ばれたのだろう」「中国史上の名宰相といえば誰ですか」「好色の宰相中将は姫と密通していた」などがあります。

二つ目の丞相を使った分かりやすい例としては、「三国志の丞相たちから人材戦略を学ぶ」「諸葛孔明は丞相となり蜀国を治めました」「周国の有名な丞相といえば太公望でしょう」「相国は丞相の別名です」などがあります。

宰相と丞相の使い分け方

宰相と丞相という言葉は、どちらも古代中国の王朝で天子を助けて政治を行なった官を意味しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。

古く中国王朝において天子を補佐する最高の大臣を「宰相」と言いますが、それぞれの時代で名称は異なりました。秦や漢および六朝の時代に宰相を指す言葉は「丞相」でしたが、漢代における宰相は「相国」(読み方:しょうこく)という名称でした。

つまり、宰相は中国における最高官位の総称であり、丞相は宰相に含まれる呼称の一つです。二つの言葉を比べると、丞相よりも宰相の方が広い意味を持ち、汎用性のある言葉だと言えるでしょう。

宰相と丞相の英語表記の違い

宰相も丞相も英語にすると「prime minister」「premier」「chancellor」となり、例えば上記の「賢明な宰相」を英語にすると「a wise prime minister」となります。

宰相の意味

宰相とは

宰相とは、総理大臣、首相を意味しています。

その他にも、「古く中国で天子を補佐して政治を行った官、丞相」「参議の唐名」 の意味も持っています。

宰相の読み方

宰相の読み方は「さいしょう」です。誤って「さいそう」などと読まないようにしましょう。

宰相の使い方

「宰相の地位にまで上り詰めた実力者です」「平民宰相は政党政治の確立に身を捧げた」「宰相の英語通訳を務めました」などの文中で使われている宰相は、「総理大臣、首相」の意味で使われています。

一方、「李斯は始皇帝の右腕として活躍した宰相です」「宰相府で働いております」などの文中で使われている宰相は「古く中国で政治を行った官」の意味で、「帝の計らいで宰相中将に就く」「宰相殿の空弁当に呆れる」などの文中で使われている宰相は「参議の唐名」の意味で使われています。

「宰」は訓読みで「つかさどる」と読み、仕事をとり仕切ることを表し、「相」はそばに付き添い助けることを表します。宰相とは、もともと古く中国において天子を補佐して政治を行った官を意味する言葉です。現代では、内閣総理大臣や、内閣の諸大臣の意味で使用されています。

「宰相殿の空弁当」の意味

上記の例文にある「宰相殿の空弁当」とは、1600年の関ヶ原の戦いにおける毛利氏の去就にまつわる故事です。略して「空弁」(読み方:からべん)ともいい、大事の場面で妙な口実を言って動かないことを意味します。

「伴食宰相」の意味

宰相を用いた日本語には「伴食宰相」(読み方:ばんしょくさいしょう)があります。伴食宰相とは、地位に比して実力が伴わない大臣のことを意味する故事成語です。要職にありながら、実力の伴わない者をあざけっていう表現です。

宰相の対義語

宰相の対義語・反対語としては、官位のない普通の人民を意味する「平民」などがあります。

宰相の類語

宰相の類語・類義語としては、内閣の首長である国務大臣を意味する「内閣総理大臣」、内閣総理大臣の通称を意味する「首相」、共和制国家の元首を意味する「大統領」、世襲により国家を治める最高位の人を意味する「君主」などがあります。

丞相の意味

丞相とは

丞相とは、古代中国で天子をたすけて国務を執った大臣、宰相を意味しています。

その他にも、「大臣の唐名」の意味も持っています。

丞相の読み方

丞相の読み方は二通りあり、「じょうしょう」の他に「しょうじょう」とも読みますが、「じょうしょう」と読まれることが一般的です。

丞相の使い方

「三国志の丞相で誰が一番好きですか」「歴史漫画キングダムで丞相について学びました」「男性しか丞相になれなかった」「丞相府の人事について調べています」「丞相何亡の現代語訳を教えてください」などの文中で使われている丞相は、「古代中国で国務を執った大臣」の意味で使われています。

一方、「丞相は2名置かれました」「秦国の軍司令と右丞相を兼ねる立場でした」「左丞相は最高幹部の一人でした」「武王が左丞相と右丞相を設置しました」などの文中で使われている丞相は、「大臣の唐名」の意味で使われています。

丞相とは、古代中国における最高位の官名であり、天子を補佐し政務をとる高官のことです。春秋・戦国時代から設けられましたが、制度として成立したのは秦の時代です。この官職名は、君主の専制権力が確立する隋や唐の時代には置かれず、南宋時代に一時的に復活ました。

「左丞相」と「右丞相」の意味

丞相は大臣の唐名を指す言葉でもあり、上記の例文にある「左丞相」(読み方:さしょうじょう、さじょうしょう)は左大臣の唐名、「右丞相」(読み方:うしょうじょう、うじょうしょう)は右大臣の唐名を意味します。

「菅丞相」の意味

丞相を用いた日本語には「菅丞相」があります。菅丞相とは、宇多天皇に重用された菅原道真の異称です。「菅丞相」は、歌舞伎や浄瑠璃の外題にもなっています。

丞相の対義語

丞相の対義語・反対語としては、特別な地位や財産などのない普通の人々を意味する「庶民」などがあります。

丞相の類語

丞相の類語・類義語としては、内閣の首班としての国務大臣を意味する「総理大臣」、内閣総理大臣の略を意味する「総理」、国の首長を意味する「元首」、国や組織を率いる指導者のうち最高位の者を意味する「最高指導者」などがあります。

宰相の例文

1.中国史を語るのに欠かせない名君と宰相の生涯を、興味深いストーリーを交えて紹介します。
2.鉄血宰相と呼ばれたビスマルクは、いかにしてヨーロッパの国際関係を操ったのかご存知でしょうか。
3.世界史で習った宰相のなかでも、宰相リシュリューは性格が悪そうだ。
4.皇帝は力を持ちすぎた大宰相を処刑しましたが、そのことを生涯後悔していたと言われています。
5.原敬は、日本の憲政史上初めて爵位を持たない平民宰相として、総理大臣の地位に就きました。
6.ビスマルクが鉄血宰相と呼ばれるのは、彼がドイツを鉄と血で統一した功績によるものです。
7.中国史上最も著名な宰相と言えば、魏の曹操や明の王安石などが挙げられます。
8.原敬は、日本の憲政史上初めて爵位を持たない平民宰相として、総理大臣の地位に就きました。
9.世界史で習った宰相のなかでも、リシュリューは性格が悪そうだが、パーマストンはそれを上回る人物に見える。
10.彼は外交の名手であり、宰相としても期待されたが、実際そうなることは無かった。

この言葉がよく使われる場面としては、中国で天子を補佐し国務を総理する者の呼称、内閣総理大臣、首相を表現したい時などが挙げられます。

例文2の「鉄血宰相」とは、ドイツの政治家ビスマルクの異名です。小国が分立していた当時のドイツを統一することを目指し、「話し合いではなく鉄と血によってのみ解決される」と演説したことに由来します。

丞相の例文

1.三国志に登場する丞相の中で、曹操が最も賢く立派な丞相だと思います。
2.この夏休みは、三国時代の丞相だった諸葛孔明の生涯をたどるツアーに参加します。
3.秦の始皇帝に仕えた法家の李斯は、のちに丞相に就き秦帝国の成立に貢献しました。
4.丞相という位は漢時代には相国と言われるようになったが、その役割には違いがあるのだろうか。
5.秦の時代、右丞相と左丞相ではどちらの方が身分が高かったのでしょうか。
6.古代中国の丞相たちが天子を補佐し国政を執る一方で、その裏で政争が繰り広げられていたことはよく知られています。
7.丞相となった彼は厳格な政治を行ったが、それがかえって周りの反発を招いてしまった。
8.古代中国の丞相は、天子の命によって任命され、その国家への忠誠心と責任感を厳しく問われました。
9.丞相たちの人材選定には、その人物の能力や忠誠心だけでなく、家柄や出自も重要な要素とされていました。
10.太宗皇帝の丞相をしているのは、魏徴という男で、『貞観政要』にも登場している。

この言葉がよく使われる場面としては、古く中国で、天子を助けて国政をつかさどった最高の官、大臣の唐名を表現したい時などが挙げられます。

例文1から例文4の丞相は、古代中国で天子を助けて国政をつかさどった最高の官の意味で用いられています。例文5の丞相は、大臣の唐名の意味で用いられています。

宰相と丞相という言葉は、どちらも「古代中国の最高官位」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、古代中国の最高官位の総称を表現したい時は「宰相」、古代中国の最高官位の呼称を表現したい時は「宰相」を使うようにしましょう。

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