似た意味を持つ「ダイバーシティ」と「インクルージョン」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「ダイバーシティ」と「インクルージョン」という言葉は、「ビジネス戦略の一つ」という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
ダイバーシティとインクルージョンの違い
ダイバーシティとインクルージョンの意味の違い
ダイバーシティとインクルージョンの違いを分かりやすく言うと、ダイバーシティは異なる個性の持ち主が集まっている状態を表現する時に使い、インクルージョンは異なる個性の持ち主が相互に作用して一体化している状態を表現する時に使うという違いです。
ダイバーシティとインクルージョンの使い方の違い
一つ目のダイバーシティを使った分かりやすい例としては、「ダイバーシティマネジメントに関する研修を受けることとなった」「ダイバーシティ推進事例を参考に当社でも案が練られている」「ダイバーシティは今では人材獲得においては一般的だ」などがあります。
二つ目のインクルージョンを使った分かりやすい例としては、「どの企業もソーシャルインクルージョンを強化している」「インクルージョンの考え方もあって退職を強いられなくなった」「インクルージョンの対象は障がい者だけではない」などがあります。
ダイバーシティとインクルージョンの使い分け方
ダイバーシティとインクルージョンはどちらも、ビジネス戦略の一つですが、示す方向性は異なります。
ダイバーシティは、多様性を表す言葉で、人種、性別、年齢や価値観などにこだわることなく様々な人たちが組織に属する状態を表します。
一方のインクルージョンは、一体性を表す言葉で、誰であろうと社会的に排除されることなく、お互いを認め、作用し合いながら機能している状態を表します。
つまり、ダイバーシティは人々の違いを受け入れる戦略を指し、インクルージョンは人々の違いを受け入れた上で互いに機能し合い高めていく戦略を指すという違いがあります。
そのため、これら二つの語を組み合わせて「ダイバーシティ&インクルージョン」やこれを省略した「D&I」という表現が使われることも多くあります。
ダイバーシティとインクルージョンの英語表記の違い
ダイバーシティを英語にすると「diversity」となり、例えば上記の「ダイバーシティマネジメント」を英語にすると「diversity management」となります。
一方、インクルージョンを英語にすると「inclusion」となり、例えば上記の「ソーシャルインクルージョン」を英語にすると「social inclusion」となります。
ダイバーシティの意味
ダイバーシティとは
ダイバーシティとは、多様性を意味しています。
表現方法は「ダイバーシティを尊重」「ダイバーシティを推進」「ダイバーシティを実現」
「ダイバーシティを尊重」「ダイバーシティを推進」「ダイバーシティを実現」などが、ダイバーシティを使った一般的な言い回しです。
ダイバーシティの使い方
ダイバーシティを使った分かりやすい例としては、「ダイバーシティ経営が重要視されている」「ダイバーシティマネジメントのおかげで様々な環境に身を置く人の意見を聞くことができる」「ダイバーシティ推進に関する会議が行われた」などがあります。
その他にも、「ダイバーシティにも課題はある」「ダイバーシティを実現するためにもインクルージョンを進めるのがいいだろう」「女性が声を上げなければダイバーシティも広まらなかったのだろうか」などがあります。
ダイバーシティは英語で「diversity」と表記され、多様性という意味を持つ言葉です。古期フランス語の「diversite」が語源であり、最初は矛盾や対立といった意味で使われていましたが、多様や相違などの意味も持つようになりました。
多様性という意味は日本でも同じように使われていますが、組織や集団に様々な違いを持った人たちが属する状態、特にビジネスにおける人材の多様化と理解されている場合が多い言葉です。
1960年代、アメリカでは女性や黒人らの権利と平等を求める社会運動が活発になり始めました。後に法律が制定され、施行直後は企業側がすぐ改めたわけではないことから訴訟が起こることもありましたが、徐々に多様性が認められていくことになります。
1990年にはダイバーシティの考え方を受け入れることで、商品やサービスにも大きな影響を与え、より良いものを多くの消費者のもとへ届けることができ、企業の発展に繋がると考えられるようになりました。
日本では、1985年に男女雇用機会均等法が制定され、徐々に雇用における平等が目指され始め、ダイバーシティの考えが広まっていくようになります。少子高齢化社会ということもあり、高齢者、女性はもちろん、外国人労働者などの人材の採用なども行われています。
また、東京都には「ダイバーシティ東京」という施設がありますが、このダイバーシティも上記のように多様性を意味する一方で、所在地である「台場」と街を意味する「シティ」を組み合わせた造語でもあります。
ダイバーシティの類語
ダイバーシティの類語・類義語としては、多種多様や多様性を意味する「バラエティー」、基本の形から変化したものを意味する「バリエーション」があります。
インクルージョンの意味
インクルージョンとは
インクルージョンとは、包括や包含、一体性を意味しています。
表現方法は「インクルージョンを高める」「インクルージョンの推進」「インクルージョンの実現」
「インクルージョンを高める」「インクルージョンの推進」「インクルージョンの実現」などが、インクルージョンを使った一般的な言い回しです。
インクルージョンの使い方
インクルージョンを使った分かりやすい例としては、「インクルージョンを推し進めていくことで更なる利益を生むことができると思う」「インクルージョンはダイバーシティの踏み込んだ考え方と言える」などがあります。
その他にも、「ソーシャルインクルージョンが実現されればどんな人も平等に扱われる」「障がいではなく個性として捉えることはインクルージョンの考え方と言えるだろう」「インクルージョンを軸とした教育にもデメリットはある」などがあります。
インクルージョンは英語で「inclusion」と表記され、包含や包括を意味する言葉として使われています。日本でも同じ意味で使われていますが、特に教育分野やビジネスシーンで用いられています。
1970年代、フランスには様々な理由で社会的に排除された人たちがいました。この問題を「ソーシャルエクスクルージョン」と呼んだことがきっかけで、「エクスクルージョン」の対である「インクルージョン」という言葉が使われるようになります。
1980年代には、障がいの有無で子どもを認識した上で同じ教室で教育を行う「統合教育」ではなく、障がいの有無は関係なしにそれぞれの生徒に合うような教育を行う「インクルージョン」がアメリカの障がい児教育において注目を浴びるようになりました。
後に、社会に全員が参加できる「ソーシャルインクルージョン」が目指されるようになり、ビジネスにおいても全員がそれぞれの能力を発揮できる状態を表す言葉として使われるようになります。
インクルージョンの対義語
インクルージョンの対義語・反対語としては、除外や排除を意味する「エクスクルージョン」があります。
インクルージョンの類語
インクルージョンの類語・類義語としては、互いに働きかけて影響を与えあうことを意味する「相互作用」、高齢者などが社会生活を送るうえで支障となるものを取り除いたものや状態を意味する「バリアフリー」があります。
ダイバーシティの例文
この言葉がよく使われる場面としては、多様性を意味する時などが挙げられます。
例文5のように「ダイバーシティ&インクルージョン」という表現がされることもあります。
インクルージョンの例文
この言葉がよく使われる場面としては、一体性を意味する時などが挙げられます。
例文4や例文5のように、教育分野や福祉業界などでも使われています。インクルージョンの考えを用いた教育は「インクルーシブ教育」とも呼ばれています。
また、例文5の「ノーマライゼーション」は、障がいを持つ人も当たり前に暮らすことのできる社会を目指すのに対して、インクルージョンは障がい者に限定されることなく、社会的に排除されている人たち全てが対象であるという違いがあります。
ダイバーシティとインクルージョンは、どちらも「ビジネス戦略の一つ」です。
どちらを使うか迷った場合は、個性の持ち主が集まっている状態を表す場合は「ダイバーシティ」を、異なる個性の持ち主が相互に作用して一体化している状態を表す場合は「インクルージョン」を使うと覚えておけば間違いありません。