同じ「きそん」という読み方の「毀損」と「棄損」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「毀損」と「棄損」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。
毀損と棄損の違い
毀損と棄損の意味の違い
毀損と棄損の違いを分かりやすく言うと、毀損と棄損は意味や使い方の違いはなく、どちらを使っても同じです。
毀損と棄損の使い方の違い
一つ目の毀損を使った分かりやすい例としては、「名誉毀損について弁護士に相談する」「信用毀損罪の時効は3年です」「リース物件に修繕不能な毀損が生じた」「再交付申請書に毀損した被保険者証を添付する」などがあります。
二つ目の棄損を使った分かりやすい例としては、「会社の名誉や信用を棄損する書き込みがあった」「株主利益を棄損させるような議案に反対する」「災害によって国宝が棄損しないよう対策する」などがあります。
毀損と棄損の使い分け方
毀損と棄損という言葉は、どちらも「きそん」と読み、「物を壊すこと」「利益や体面などを損なうこと」を意味します。文化財などの貴重な有形物や、名誉などの評価すべき無形のものに対して使用される言葉です。
二つの言葉は同音同義語であるため、毀損と棄損は互いに置き換えて使うことができます。上記例文にある「名誉毀損」は「名誉棄損」に、「国宝を棄損する」は「国宝を毀損する」に書き換えることができます。
もともとは「毀損」が正しい表記でしたが、常用漢字表に「毀」という漢字が載っていない時代があり、「棄」が代用字として使用されるようになりました。現在は「毀」は常用漢字となっており、「毀損」「棄損」の二つの書き方が存在しています。
ただし、法律用語としては「毀損」という漢字が使用されています。「名誉毀損罪」「信用毀損罪」など、法律の名称として用いる際は「毀損」を使うようにしましょう。
毀損と棄損の英語表記の違い
毀損も棄損も英語にすると「damage」「assassination」「injury」となり、例えば上記の「名誉毀損」を英語にすると「defamation of character」となります。
毀損の意味
毀損とは
毀損とは、物を壊すこと、物が壊れることを意味しています。
その他にも、「利益や体面などを損なうこと」の意味も持っています。
毀損の読み方
毀損の読み方は「きそん」です。同じ読み方をする熟語に「既存」がありますが、意味が異なるので書き間違いに注意しましょう。
表現方法は「毀損する」「毀損行為」「毀損額」
「毀損する」「毀損行為」「毀損額」などが、毀損を使った一般的な言い回しです。
毀損の使い方
「ドローンによって文化財の建造物が毀損を受けた」「貴重な芸術作品を毀損してしまった」「10日以内に毀損届を提出してください」などの文中で使われている毀損は、「物を壊すこと、物が壊れること」の意味で使われています。
一方、「名誉を毀損するような誹謗中傷である」「名誉毀損罪の構成要件は三つあります」「作品のイメージを毀損させるような使い方を禁じる」「情報漏洩は利益毀損を招く行為です」しなどの文中で使われている毀損は、「利益や体面などを損なうこと」の意味で使われています。
毀損の「毀」は訓読みで「こわす」「そしる」と読み、砕いたり破ったりして使用できないようにするこを表します。減らしたり傷つけたりすることを表す「損」と結び付き、毀損とは、物を壊すことを意味します。転じて、利益を損なうことや体面などが傷つくことの意味でも使用されている言葉です。
「名誉毀損」の意味
毀損を用いた日本語には「名誉毀損」があります。名誉毀損とは、公然と事実を示して人の社会的評価を傷つけることやを意味します。広く、人の社会的評価をおとしめる行為も表します。刑法では名誉毀損罪を規定しており、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処せられます。
毀損の対義語
毀損の対義語・反対語としては、建造物などの傷んだ箇所を直して元のようにすることを意味する「修復」、壊れたり傷んだりした部分に手を加えて再び使用できるようにすることを意味する「修理」などがあります。
毀損の類語
毀損の類語・類義語としては、建造物・器物・秩序・組織などを壊すことを意味する「破壊」、人や物などが損なわれ傷つくことを意味する「損傷」、すっかりだめになってしまうことや組織などが総崩れになるこを意味する「壊滅」などがあります。
棄損の意味
棄損とは
棄損とは、物を壊すこと、物が壊れることを意味しています。
その他にも、「利益や体面などを損なうこと」の意味も持っています。
棄損の読み方
棄損の読み方は「きそん」です。誤って「すそん」「きぞん」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「棄損する」「棄損行為」「棄損額」
「棄損する」「棄損行為」「棄損額」などが、棄損を使った一般的な言い回しです。
棄損の使い方
「近年、文化財の棄損事故が目立って発生しています」「棄損事故の原因を究明する」「家宝の器が棄損によって価値が下がった」などの文中で使われている棄損は、「物を壊すこと、物が壊れること」の意味で使われています。
一方、「ネット上での信用棄損や業務妨害が増えています」「名誉棄損で訴えられてしまった」「価格を下げれば売上棄損の懸念が生じる」などの文中で使われている棄損は、「利益や体面などを損なうこと」の意味で使われています。
棄損とは、前述した毀損という言葉の同音同義語です。「毀」という漢字が表外字であった時代に、新聞などでは代用漢字として「棄」が使用されていました。その後、2010年の改定で「毀」が常用漢字に追加されましたが、「棄損」という書き方が現在でも残っています。
「信用棄損及び業務妨害罪」の意味
棄損を用いた日本語には「信用棄損及び業務妨害罪」があります。信用棄損及び業務妨害罪とは、風説の流布や偽計により、他人の信用を失わせる罪です。この場合の業務とは、職業として行う経済活動だけでなく、広く、人々の社会活動一般を指します。
棄損の対義語
棄損の対義語・反対語としては、破綻をきたした関係を元通りに戻すことを意味する「修覆」、壊れたり悪くなったりしたところを繕い直すことを意味する「修繕」などがあります。
棄損の類語
棄損の類語・類義語としては、壊したり傷つけたりすることを意味する「破損」、壊れることや壊すことを意味する「損壊」、人や物などが損なわれ傷つくことを意味する「汚損」などがあります。
毀損の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物を壊すこと、名誉や利益などを損なうことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文の「毀損」は、「棄損」に置き換えても問題ありません。
例文3にある「信用毀損行為」とは、営業上の信用を、競争関係にあるものが虚偽の事実をあげて直接的に攻撃するものです。信用毀損行為は、不正競争防止法2条で禁じられています。
棄損の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物を壊すこと、名誉や利益などを損なうことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にある「棄損」は、「棄損」に置き換えることができます。
例文1の棄損は、物を壊すことの意味で用いられています。例文2から例文5の棄損は、名誉や利益などを損なうことの意味で用いられています。
毀損と棄損という言葉は、どちらも「きそん」と読む同音同義語です。意味や使い方に違いはないので、どちらを使っても構いません。ただし、法律用語として使用する際は「毀損」を使うようにしましょう。