似た意味を持つ「郷愁」(読み方:きょうしゅう)と「哀愁」(読み方:あいしゅう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「郷愁」と「哀愁」という言葉は、どちらも感情を表す言葉という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
郷愁と哀愁の違い
郷愁と哀愁の意味の違い
郷愁と哀愁の違いを分かりやすく言うと、郷愁とは懐かしい気持ち、哀愁とはもの悲しい気持ちという違いです。
郷愁と哀愁の使い方の違い
一つ目の郷愁を使った分かりやすい例としては、「ふるさとの写真を見ながら郷愁を感じた」「街角の食堂で郷愁感を覚えるラーメンを食べました」「どこか郷愁を感じさせる映画であった」「古き良き昭和時代の郷愁を感じました」などがあります。
二つ目の哀愁を使った分かりやすい例としては、「秋は哀愁を感じる季節だと思いませんか」「父の背中には哀愁が漂っていた」「どこか哀愁を帯びた作品である」「せつない曲を聴きながら哀愁に浸る」などがあります。
郷愁と哀愁の使い分け方
郷愁と哀愁という言葉は、どちらも何かを見たり聞いたり触れたりすることによって、心にこみあげてくる感情を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
郷愁とは、故郷や昔を懐かしむ気持ちを意味します。上記の「ふるさとの写真を見て郷愁を感じる」は、 自分の生まれ育った故郷を懐かしむ様子を表現しています。一方、「昭和時代の郷愁を感じる」は、過ぎ去った昔を懐かしむさまを表現しています。
哀愁とは、もの悲しい気持ち、うら悲しい感じを意味します。はっきりとした理由があって悲しむことではなく、なんとなく寂しさを感じて悲しくなっている様子や、心を痛めているニュアンスがあります。
つまり、郷愁は懐かしむ気持ちであり、哀愁はもの悲しい気持ちを表現します。二つの言葉はよく似ていますが、指し示す感情は異なるので区別して使い分けるようにしましょう。
郷愁と哀愁の英語表記の違い
郷愁を英語にすると「nostalgia」「homesickness」となり、例えば上記の「郷愁を感じる」を英語にすると「feel nostalgic」となります。一方、哀愁を英語にすると「sorrow」「sadness」「pathos」となり、例えば上記の「哀愁を感じる」を英語にすると「feel sad」となります。
郷愁の意味
郷愁とは
郷愁とは、他郷にあって故郷を懐かしく思う気持ち、ノスタルジアを意味しています。
その他にも、「過去のものや遠い昔などにひかれる気持ち」の意味も持っています。
郷愁の読み方
郷愁の読み方は「きょうしゅう」です。誤って「きょしゅう」「ごうしゅう」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「郷愁漂う」「郷愁を感じる」「郷愁にふける」
「郷愁漂う」「郷愁を感じる」「郷愁にふける」などが、郷愁を使った一般的な言い回しです。
郷愁の使い方
「郷愁を誘う風景が広がっていました」「誰しも郷愁に駆られる料理があるでしょう」「都会では味わえない郷愁感に浸る」「東京で暮らしながら地元への郷愁の念を抱いている」などの文中で使われている郷愁は、「故郷を懐かしく思う気持ち」の意味で使われています。
一方、「郷愁に駆られる昭和の雰囲気漂う居酒屋です」「郷愁の念を込めて歌いました」「郷愁的な夢を見てばかりいる」「郷愁を誘う音色に聴き入る」などの文中で使われている郷愁は、「遠い昔などにひかれる気持ち」の意味で使われています。
郷愁の「郷」は訓読みで「さと」と読み、ふるさとや生まれたところを表します。「愁」は訓読みで「うれい」と読み、なげき悲しむことや思い悩むことを表す漢字です。郷愁とは、異郷にある寂しさから故郷に寄せる思いや、昔のことを懐かしく思う気持ちを意味する言葉です。
「郷愁に駆られる」の意味
上記の例文にある「郷愁に駆られる」とは、故郷を懐かしく思う気持ちや、昔のことを懐かしむ気持ちが強くなることを意味する言い回しです。「駆られる」は、ある激しい感情に動かされることを表します。
郷愁の類語
郷愁の類語・類義語としては、実家を恋しく思う心を意味する「里心」、故郷を懐かしく思いやることを意味する「望郷」、昔のことを懐かしく思うことを意味する「懐古」、故郷を懐かしむ気持ちを意味する「ノスタルジー」、家庭を異常に恋しがる気持ちを意味する「ホームシック」などがあります。
哀愁の意味
哀愁とは
哀愁とは、寂しくもの悲しい気持ち、もの悲しさを意味しています。
表現方法は「哀愁を感じる」「哀愁に浸る」「哀愁を帯びた」
「哀愁を感じる」「哀愁に浸る」「哀愁を帯びた」などが、哀愁を使った一般的な言い回しです。
哀愁の使い方
哀愁を使った分かりやすい例としては、「彼女は哀愁漂う表情を浮かべていた」「哀愁を帯びた風景画が印象に残りました」「彼女の哀愁を込めた話し方が気になった」「哀愁を漂わせる大人の女性に色気を感じます」などがあります。
その他にも、「彼はどこか寂しげで哀愁漂う人です」「クラリネットの哀愁を帯びた音色が好きです」「田舎の単線で走る列車に哀愁を感じる」「映画のラストシーンは哀愁を誘うものであった」「昔のことを思い出し哀愁に浸る」などがあります。
哀愁の「哀」は訓読みで「あわれ」「かなしい」と読み、せつなくて胸がつまることや、かわいそうに思うことを表します。なげき悲しむことを表す「愁」と組み合わさり、哀愁とは、なんとなくうら悲しい気持ちが感じられるさまを意味する言葉です。
「哀愁漂う」の意味
哀愁を用いた言い回しには「哀愁漂う」(読み方:あいしゅうただよう)があります。「哀愁漂う」とは、もの悲しい雰囲気があたりに満ちていること、もの悲しさが感じられる様子を意味します。「漂う」は、ある雰囲気や気配がそのあたりに何となく感じられることを表します。
哀愁の対義語
哀愁の対義語・反対語としては、非常に喜ぶことを意味する「歓喜」などがあります。
哀愁の類語
哀愁の類語・類義語としては、悲しくあわれなことを意味する「悲哀」、悲しみや哀れを誘う感じを意味する「哀感」、帰らないものを悲しみ惜しむことを意味する「哀惜」、悲しみ哀れむことや不憫に思うことを意味する「哀憐」、もの悲しい情緒を意味する「ペーソス」などがあります。
郷愁の例文
この言葉がよく使われる場面としては、故郷を懐かしく思う気持ち、懐郷の想い、昔のことを懐かしく思ったり惹かれたりする気持ちを表現したい時などが挙げられます。
例文1と例文2にある郷愁は、故郷を懐かしく思う気持ちの意味で用いられています。例文3から例文5の郷愁は、昔のことを懐かしく思う気持ちの意味で使用されています。
哀愁の例文
この言葉がよく使われる場面としては、なんとなく心に入り込んでくるうら悲しい感じを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、哀愁の慣用的な表現には「哀愁漂う」「哀愁を帯びる」「哀愁を誘う」などがあります。
郷愁と哀愁という言葉は、どちらも「こみあげてくる感情」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、懐かしい気持ちを表現したい時は「郷愁」を、うら悲しい気持ちを表現したい時は「哀愁」を使うようにしましょう。