似た意味を持つ「亢進」(読み方:こうしん)と「促進」(読み方:そくしん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「亢進」と「促進」という言葉は、どちらも「物事が進むこと」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
亢進と促進の違い
亢進と促進の意味の違い
亢進と促進の違いを分かりやすく言うと、亢進とは物事の程度が高いところまで進むことを表し、促進とは物事が進むように働きかけることを表すという違いです。
亢進と促進の使い方の違い
一つ目の亢進を使った分かりやすい例としては、「動悸と共に心悸亢進を感じるようになりました」「甲状腺機能亢進症の治療を受けています」「病気が亢進すると免疫機能が低下してしまう」「今後インフレは亢進するだろうか」などがあります。
二つ目の促進を使った分かりやすい例としては、「販売促進のための施策を立案する」「環境に配慮した消費行動を促進する」「賃上げ促進税制について解説します」「耐震化の促進を図るための施策を実施する」などがあります。
亢進と促進の使い分け方
亢進と促進という言葉は、どちらも物事の進行を表し、医療の現場やビジネスシーンで使用されていますが、意味や使い方には違いがあります。
亢進とは、高ぶり進むこと、程度が高まることを意味します。主に医療用語として用いられる言葉であり、「病気が亢進する」のような使い方で、病状が高いレベルまで進むことや過剰なことを表します。また、「インフレは亢進する」のように、物事の度合いが高まることも表現する言葉です。
促進とは、物事がはやく進むように促すこと、物事がはかどるように働きかけることを意味します。上記例文の「促進を図る」とは、物事がはやくはかどるように働きかけることです。主にビジネスシーンで使用され、ある事業の進み方がはかどるようにすることを表現することが多い言葉です。
つまり、亢進とは物事の程度が高いところまで進む様子を表す言葉であり、促進とは物事がはやく進むように働きかけることを意味します。二つの言葉はとてもよく似ていますが、意味は異なるので区別して使い分けるようにしましょう。
亢進と促進の英語表記の違い
亢進を英語にすると「rising」「acceleration」「accentuation」となり、例えば上記の「心悸亢進」を英語にすると「accelerated heart palpitations」となります。
一方、促進を英語にすると「promotion」「quickening」「hastening」となり、例えば上記の「販売促進」を英語にすると「sales promotion」となります。
亢進の意味
亢進とは
亢進とは、気持ちや病勢などが、高ぶり進むことを意味しています。
その他にも、「物事の度合いが高まること」の意味も持っています。
亢進の漢字表記
亢進は「昂進」「高進」とも書きますが、一般的には「亢進」と表記されています。
亢進の読み方は「こうしん」です。同じ読み方をする熟語に「更新」や「行進」がありますが、意味が異なるので書き間違いに注意しましょう。
表現方法は「分泌亢進」「機能亢進」「運動亢進」
「分泌亢進」「機能亢進」「運動亢進」などが、亢進を使った一般的な言い回しです。
亢進の使い方
「副交感神経は胃腸の動きを亢進させる」「頭蓋内圧亢進症患者の看護計画を立てる」「門脈圧亢進症の手術を行える医療機関をご紹介します」「炎症反応が亢進している」などの文中で使われている亢進は、「高ぶり進むこと」の意味で使われています。
一方、「日本は少子高齢社会化の亢進という課題を抱えている」「インフレの累積的亢進が起こっている」「生徒たちの英語嫌いはさらに亢進した」などの文中で使われている亢進は、「物事の度合いが高まること」の意味で使われています。
亢進の「亢」は訓読みで「たかぶる」「きわめる」と読み、感情などが高まることや、この上もない程度までそうなることを表します。前にすすむことを表す「進」と結びつき、亢進とは、次第に高ぶることや、物事の度合が激しくなることを意味します。
「甲状腺機能亢進症」「門脈圧亢進症」は亢進を用いた病名
亢進という言葉は、医療用語として使われることが多くあります。亢進を用いた病名には、「甲状腺機能亢進症」(読み方:こうじょうせんきのうこうしんしょう)、「門脈圧亢進症」(読み方:もんみゃくあつこうしんしょう)などがあります。
亢進の対義語
亢進の対義語・反対語としては、落ち着いていて静かになることを意味する「鎮静」などがあります。
亢進の類語
亢進の類語・類義語としては、物事や特に病状などが悪化することを意味する「進行」、速度を加えることを意味する「加速」、物の数量がふえることを意味する「増加」、重ね加えることを意味する「累加」などがあります。
促進の意味
促進とは
促進とは、物事がはやくはかどるように促すことを意味しています。
表現方法は「利用促進を図る」「理解促進」「促進に努める」
「利用促進を図る」「理解促進」「促進に努める」などが、促進を使った一般的な言い回しです。
促進の使い方
促進を使った分かりやすい例としては、「子どもの英語学習を促進するコンテンツを開発する」「受動輸送には単純拡散と促進拡散があります」「陣痛促進剤の費用はどれぐらいですか」「肌のターンオーバーを促進させる美容液です」などがあります。
その他にも、「販売促進課と営業推進課の役割は違います」「脱炭素化を促進する施策を推進する」「雇用促進税制の制度内容を確認する」「社内コミュニケーションの促進を図る取組みを紹介します」などがあります。
促進の「促」は訓読みで「うながす」と読み、物事の進行をすみやかにさせることを表し、「進」は物事がはかどることを表します。促進とは、関係するものをうながして物事がはやく運ぶようにすることを意味する言葉です。
「販売促進」の意味
促進を用いた日本語には「販売促進」があります。販売促進とは、売り手が買い手の購買意欲を刺激し、商品を購入させるために行う組織的な活動のことです。「セールスプロモーション」とも言います。
「促進を促す」「促進を進める」は誤用
促進を用いた誤った表現には「促進を促す」「促進を進める」があります。「促進を促す」「促進を進める」は、「頭痛が痛い」のような同じ意味の言葉を繰り返し使った二重表現となり、誤用とされています。
促進の対義語
促進の対義語・反対語としては、抑えとどめることを意味する「抑制」などがあります。
促進の類語
促進の類語・類義語としては、物事を前へおし進めることを意味する「推進」、物事の勢いなどを激しくすること意味する「増進」、ある事柄をするように人に強く勧めることを意味する「奨励」などがあります。
亢進の例文
この言葉がよく使われる場面としては、気持ちや病勢などが高い度合いまで進むこと、物事の度合いが高まることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、亢進という言葉は医療に関して用いられることがほとんどですが、例文5のように、物事が高い度合いまで進むことの意味で使用されることがあります。
促進の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事の進もうとする力に更に力を加えること、進捗をうながし進めることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、促進という言葉はビジネスシーンで使用されることが多くあります。例文5の「陣痛促進剤」とは、陣痛を促して分娩を開始させたり、弱い陣痛を促進させたりするために用いる薬剤のことです。
亢進と促進という言葉は、どちらも「物事が進むこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、物事が高い度合いに進むことを表現したい時は「亢進」を、物事が進むように働きかけることを表現したい時は「促進」を使うようにしましょう。