似た意味を持つ「冒涜」(読み方:ぼうとく)と「侮辱」(読み方:ぶじょく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「冒涜」と「侮辱」という言葉は、どちらも「尊厳を傷つけること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
冒涜と侮辱の違い
冒涜と侮辱の意味の違い
冒涜と侮辱の違いを分かりやすく言うと、冒涜とは神仏など神聖なものに対して使用され、侮辱とは一般の人に対して使用されるという違いです。
冒涜と侮辱の使い方の違い
一つ目の冒涜を使った分かりやすい例としては、「演説の中で神を冒涜する内容の発言をした」「冒涜的行為は見過ごせません」「イスラム教に対する冒涜行為にあたる」「あなたの発言は神への冒涜です」などがあります。
二つ目の侮辱を使った分かりやすい例としては、「ネット上で耐え難い侮辱を受ける」「侮辱罪で訴えるには証拠が必要だろう」「あなたの言動は侮辱行為です」「SNSで赤の他人から侮辱されました」などがあります。
冒涜と侮辱の使い分け方
冒涜と侮辱という言葉は、どちらも相手の尊厳を傷つけること、対象を否定して貶めることを意味しますが、意味や使い方には違いがあります。
冒涜とは、神聖なものや尊厳なもの、あるいは清らかなものをおかし汚すことを意味します。おかし汚す対象は、神や仏などの神聖なものに限られます。神仏以外にも、国家や宗教あるいは権利など崇拝に値するものに使用されることもあります。
侮辱とは、侮ったり馬鹿にしたり、相手を見下して名誉や尊厳を傷つけることを意味します。侮辱行為とは、「バカ」「ブサイク」などの悪口を言ったりSNSに書き込んだり、相手を見下すような行動をとることです。侮辱行為と認められると、侮辱罪が成立する可能性があります。
つまり、二つの言葉の違いは使用する対象にあります。冒涜は神や仏などの聖なるものを対象とし、侮辱は一般の人を対象とする言葉なのです。
冒涜と侮辱の英語表記の違い
冒涜を英語にすると「blasphemy」「sacrilege」「profanation」となり、例えば上記の「神を冒涜する」を英語にすると「blaspheme God」となります。
一方、侮辱を英語にすると「contempt」「insult」「abuse」となり、例えば上記の「侮辱を受ける」を英語にすると「be insulted」となります。
冒涜の意味
冒涜とは
冒涜とは、神聖なもの、清浄なものをおかし、汚すことを意味しています。
冒涜の読み方
冒涜の読み方は「ぼうとく」です。誤って「もうとく」「ぼうばい」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「神への冒涜」「冒涜行為」「冒涜する」
「神への冒涜」「冒涜行為」「冒涜する」などが、冒涜を使った一般的な言い回しです。
冒涜の使い方
冒涜を使った分かりやすい例としては、「神を冒涜することは信者を敵にまわすことだ」「イスラム教への冒涜罪に問われる」「宗教への冒涜行為は許されない」「意図的に冒涜的な言葉を発する」などがあります。
その他にも、「まさに民主主義に対する冒涜だ」「国旗への落書きは冒涜行為です」「預言者ムハンマドを冒涜する風刺画が掲載された」「あの英語教師は時おり冒涜的な発言をする」「死者を冒涜しかねない発言だ」などがあります。
冒涜の「冒」は訓読みで「おかす」と読み、聖域や尊厳などを汚し傷つけることを表し、「涜」は訓読みで「けがす」と読み、恥ずべき行為などをして名誉や誇りを傷つけることを表します。冒涜とは、神聖なものを汚すことを意味し、神や職といったものを汚したときにいう言葉です。
「神聖冒涜」の意味
冒涜を用いた四字熟語には「神聖冒涜」(読み方:しんせいぼうとく)があります。神聖冒涜とは、神聖さを失わせるような言動をすること、神聖とされているものに対して、むやみに接触したり、けがしたりすることを意味します。「涜聖」とも言います。
冒涜の対義語
冒涜の対義語・反対語としては、尊びあがめることを意味する「尊崇」、心から傾倒して敬い尊ぶことを意味する「崇拝」などがあります。
冒涜の類語
冒涜の類語・類義語としては、特に公務員が私利私欲のために職責をけがすことを意味する「涜職」(読み方:とくしょく)、神をけがすことを意味する「涜神」(読み方:とくしん)などがあります。
侮辱の意味
侮辱とは
侮辱とは、相手を軽んじ辱めること、見下して名誉などを傷つけることを意味しています。
侮辱の読み方
侮辱の読み方は「ぶじょく」です。誤って「くつじょく」「げじょく」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「侮辱行為」「侮辱する」「侮辱的な発言」
「侮辱行為」「侮辱する」「侮辱的な発言」などが、侮辱を使った一般的な言い回しです。
侮辱の使い方
侮辱を使った分かりやすい例としては、「インターネットに侮辱的な発言を書き込む」「英語ができないクラスメイトを侮辱する」「正当な批判であれば侮辱に当たらないだろう」「侮辱罪と名誉棄損の違いを教えてください」などがあります。
その他にも、「不特定多数の前で相手を侮辱する」「SNS上の侮辱的な発言に腹を立てる」「事実を示さずに相手を侮辱する」「アメリカや英語圏の国々には侮辱罪がありますか」「侮辱罪の厳罰化により何が変わりますか」などがあります。
侮辱とは、見下して恥をかかせること、相手を馬鹿にして辱めることを意味します。侮辱の「侮」は訓読みで「あなどる」読み、相手を蔑んで軽んじることを表し、「辱」は訓読みで「はずかしめる」と読み、体面を傷つけ挫けた気持ちにさせることを表す漢字です。
「侮辱罪」の意味
侮辱を用いた日本語には「侮辱罪」があります。侮辱罪とは、具体的な事柄を挙げずに公然と人を侮辱する罪です。刑法第231条が禁じており、拘留または科料に処せられます。ちなみに、具体的な事柄を挙げて、相手の社会的評価を下げる行為は「名誉毀損罪」に当たります。
侮辱の対義語
侮辱の対義語・反対語としては、その人の人格を尊いものと認めて敬うことを意味する「尊敬」、尊敬する気持ちを意味する「敬意」などがあります。
侮辱の類語
侮辱の類語・類義語としては、地位や名誉などをけがされることによる辱めを意味する「汚辱」(読み方:おじょく)、相手を傷つけるような言動をして恥をかかせることを意味する「凌辱」(読み方:りょうじょく)、体面や名誉などを傷つけることを意味する「恥辱」などがあります。
冒涜の例文
この言葉がよく使われる場面としては、言葉や行為によって神に侮辱を与えること、尊厳なものや清らかなものをおかし汚すことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、冒涜という言葉は神聖な存在に対して使用されますが、神や宗教以外の死者や人権にも用いることができます。例文1にある「冒涜的」とは、神聖なものをけがすさまを意味します。
侮辱の例文
この言葉がよく使われる場面としては、馬鹿にして辱めることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、侮辱の慣用的な言い回し、慣用的な表現には「侮辱する」「侮辱行為」「侮辱的な発言」などがあります。「侮辱する」とは、言動によって、相手をはずかしめたり、名誉を傷つけたりすることを意味します。
冒涜と侮辱という言葉は、どちらも「相手の尊厳を傷つけること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、神仏など神聖なものに対して使用する時は「冒涜」を、一般の人に対して使用する時は「侮辱」を使うようにしましょう。